情報は時とともに劣化する・・・

　 【1面トップ】
　 ●“虚構”崩れ増える国民負担
　 「絶対に2次破綻しない体制を考えた」（和田繁明顧問）。民事再生法の適用を申請している大手百貨店そごうグループの再生計画案は、9店舗の年内閉鎖やグループ従業員3,100人の削減等を柱とする厳しい内容となった。朝日、毎日がトップで報じている。

　 “虚構”のシナリオと揶揄されていた旧経営陣による再建計画に比べれば、はるかに現実に近づいたと言えるが、それでもなお「3年後にやっと黒字」（同）への道程は険しい。

　 ところで、旧長銀（新生銀行）のそごう向け債権（約2,000億円）を買い取ることになっている国の損失は、総額で1,500億円を超える見通しという。倒産時点で見込まれていた額を500億円以上上回ることになるが、これは当初の予想以上に閉鎖店舗分の損失が増えるためだ。

　 ◇住友銀行（8318）とさくら銀行（8314）の合併（来年4月）でメーンバンクが一緒になる住友化学工業（4005）と三井化学（4183）が、「経営統合に向けて最終調整に入った」と日経が報じている。

　 来秋にも持ち株会社を設立、国内トップ、世界でも6位の化学会社が誕生するという。旧財閥系の枠組みを超えた金融再編が後押しする産業再編の動きに弾みがつくか。

　 ◇読売も、負けじと経済記事で対抗。NTTグループの中核会社で長距離・国際通信部門を手がけるNTTコミュニケーションズが「来年5月にも市内通信に参入する方針を固めた」という。

　 NTTコムの市内通信参入は発足当初から囁かれていた。当然といえば当然の成り行きだが、読売の“スクープ”には絶えず危うさが付きまとう。読売サン、ご免なさいね。

　 ◇米朝会談の結果を受けた日米韓外相会談と日米外相会談が25日、ソウルで行われ、オルブライト米国務長官が日韓の外相に金総書記との会談の内容を説明した。置き去りの懸念を強める日本にすねられたのでは、米朝正常化に必要な資金を日本から引き出せない。

　 オルブライト長官は、日本にとって最大の懸案である「拉致」問題を会談で取り上げ、北朝鮮側に「日本政府と話し合いで解決策を探るよう提起した」ことを明らかにした。が、肝心の金総書記の反応は「問題の所在を十分に知っていると見受けられた」。ホントかね。

　 ◇このニュース、トップに持ってきたのは産経のみ。東京は、日本政府が「拉致」問題の早期解決を促すため、北朝鮮に対し50万トンのコメ支援に続き、総額約90億ドル（約1兆円）の資金援助を検討していることをトップで報じている。

　 記事の中で政府筋が「国交正常化に向けて弾みをつけたい」と語っているが、本当にそう考えているのなら、手の内を明かすべきではない。

　 【IT】
　 ●マザーズ上場企業「元社長」逮捕の衝撃
　 暴力団とのつながりが取り沙汰されていたマザーズ上場第1号のネット音楽配信会社リキッドオーディオジャパン（4740）の元社長、大神田正文容疑者が25日、逮捕監禁などの容疑で逮捕された（25日夕刊）。

　 他の新興市場よりも基準の緩いマザーズについては「経営などに問題がある企業が安易に上場する懸念が以前から指摘されていた」（読売）。リキッドの元社長逮捕でこうした不安が現実のものとなったわけで、同日のマザーズ市場はリキッド株を含め「上場株が軒並み下落する展開となった」（読売）。各紙は「『ベンチャー育成』を大義名分に、上場基準を甘くしたマザーズの問題もクローズアップされそうだ」（毎日）と東証批判を強めているが、当然である。

　 【トピック】
　 ●崖っぷちの官房長官
　 手元に朝日のある方は、1面に掲載されている写真を見ていただきたい。「拉致」発言に集中した25日の党首討論の直前に森喜朗首相が中川秀直官房長官らと言葉を交わすシーンだが、中川長官の笑顔、物書きを生業とする筆者にも表現のしようがない。女性問題などで崖っぷちまで追い詰められているというのにこの余裕。この人、いったいどんな性格をしているのだろう。

　 政界の双生児コンビと呼ばれる森、中川両氏。親分の森首相は昨日の本欄で予想した通り、党首討論を難なく切り抜け、まずはほっと一息というところだが、子分の中川氏の正念場はこれからである。

　 ヤマ場は、中川氏が答弁席に立たされる26日の衆院内閣委員会。今や身内の森派しか援軍のない孤立無援の戦いを強いられている中川氏に談笑などする余裕はないはずだが・・・

　 [メディア批評家　増山広朗]