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コラム 瓦版一気読み(10月12日)

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●風化させるな!
  町工場に毛が生えた程度のささやかな施設でも「臨界」を実現できる。昨年9月30日、茨城県東海村の核燃料加工施設で起きた臨界事故は、放射線被曝と、臨界は原子炉以外でも起こるという2つの恐怖を広く世に知らしめた。

  それから1年後、茨城県警はジェー・シー・オー(JCO)の幹部社員ら6人を業務上過失致死の容疑で逮捕。さらに、当局の許可を得ず設備を勝手に変更した原子炉法等規制法違反容疑で、JCO本体や幹部社員を立件する方針という。

  立件まで時間がかかりすぎという印象を受けるが、「逮捕」のお陰であのバカげた事故の恐怖が再び蘇ってきた。事故の教訓を絶対に風化させてはならない。

  このニュース、朝日、読売、産経、東京がトップで報じている。

  ◇個人情報保護基本法を法制化するにあたっての大綱がまとまった。トップニュースとして報じた毎日によれば、マスコミが「焦点」として神経質になっている報道分野などの個人情報の扱いについては、基本原則を適用、監督官庁の関与が直接及ぶ義務既定は適用除外としている。

  「報道の自由」は断固として維持されるべきであり、政府や政治家の関与を許せば、21世紀の日本は真っ暗闇になる。分かったようで分からない大綱の趣旨について、大綱をとりまとめた政府の専門委員会の園部逸夫委員長は「取材活動に関しても個人情報が保護されるべきであることは言うまでもない。行政が事前介入することについては慎重であるべきだ」と補足説明を加えている。

  しかし新聞は、この説明を額面通りに受け取るつもりがない。法案化の段階で関係省庁や政治家によって筆が加えられ、規制の網が被せられる恐れがあるからだ。

  新聞の懸念は至極当然である。が、たっぷりと紙面を割いて「報道の自由」を声高に唱える報道機関にも、この際、考えて欲しいことがある。毎日が社説で論じているように「報道目的について適用除外を求めたからといって、マスメディアの在り方が今のままでいいというわけでは決してない」。個人情報の保護を巡る論議は今だ生煮えだが、報道機関の側にも「自主的な個人情報保護の努力が必要」(朝日)なのだ。

  まず我が身を正す。そうでなければ、報道への信頼は築けない。

  ◇郵政省はインターネットのプロバイダーに対し、ネット上での他人の著作権やプライバシーを侵害した発信者の名前などを一定の条件付きで被害者に教えることを義務付ける方向で検討に入った、と日経が報じている。被害者が損害賠償請求訴訟を起こす上で、提訴する相手を確定できるようにするのが狙い。

  日経によれば、米国では著作権を侵害された企業や個人は、発信者の特定を裁判所に要求できる法制度が整備されており、同様のルールを日本でも導入しようというわけだ。

  【IT】
  ●日中でも「IT」
  中国の朱首相がきょう来日、13日には森喜朗首相との日中首脳会談が予定されている。

 この首脳会談では、2年前に交わした33項目のうちIT分野を一段と重視することを確認、日本側はその具体策として対中ITミッションの派遣や、IT分野の中国人ビジネスマンへの商用ビザ発給手続きを緩和するなどの方針を表明する見通しだ(日経)。

  ITも結構だが、超軍事大国への円借款供与問題を抜きにしてIT、IT、ITとやけに明るい未来だけを語るのはいかがなものか。

  【トピック】
  ●「国民栄誉賞」辞退して!
  政府は、ノーベル化学賞受賞が決まった白川英樹・筑波大名誉教授に文化勲章を、シドニー五輪女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子選手に国民栄誉賞を贈る方針を決めた(各紙)。

  白川氏の文化勲章受章はともかく、高橋選手に国民栄誉賞を贈るのは、落ち目の政権がよくやる人気取り。栄誉賞を贈る以前にQ(キュー)ちゃんは、国民の英雄になっている。選手活動を縛りかねない栄誉賞には絶対反対である。Q(キュー)ちゃんには、世界最高記録の更新という「次の目標」が待っているのだから、呉々も余計なことはしないで欲しい。

  余談だが、白川氏と高橋選手が実は遠縁だったという報道には驚いた。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/

2000/10/12 08:59
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