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コラム 瓦版一気読み(10月3日)

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●記事のインパクトはどこから生まれるのか
  シドニー五輪も終わってしまって意味も無く寂しさを感じてしまう今日の朝刊は、やっぱりみんな通常の日刊紙に戻ってしまった(当たり前なんだけど)。金メダルを獲った高橋尚子選手らの帰国を1面、写真入りで伝えたのは毎日、読売、東京、産経(以上、都内最終版、以下同)の4紙だった。

  どんなに世がオリンピックで盛り上がろうとも“ウチは日経なの!”と経済ネタで1面を埋めてきたその日経のトップは「ソフト期間貸し、高速ネットで展開、企業向け新事業」。新日鉄、日本テレコム、日本ヒューレット・パッカードの3社が提携して「ISDNの10倍以上の速さで通信できるADSL(非対称デジタル加入者線)を使い」、いわゆるアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)事業を行おう、というものだ。

  ふむふむ、わからんでもない。アプリケーションソフトなどをネットを通して一定期間貸し出すというASP事業にはネットのスピードアップが不可欠だし、ISDN程度でこれをやろうなどというのはどう考えても無理があったから。でもね、こういった内容ならすでに実験段階に入っているプロジェクトはいくつか存在している。ようはメディアに露出して派手に扱われればそれで既成事実が出来上がるという仕組み。3社の顔ぶれを見ても「あ~飛びつきそうなネタだなあ」とか思ってしまう。これが名の知れないマイナーな企業であったら日経はどう扱ったか。そっちの方に興味を覚えてしまうアタシって変?

  ◇「順天堂大医学部長が補助金流用、不正経理計2億円」の独自ネタで打ってきたのは朝日。「休眠会社との架空取引」によって「昨年までの5年間で2億円の不正経理」を東京国税局が指摘した、というもの。このテの話は朝日が強いのよね、毎度のことながら。“我らが社会の木鐸(ぼくたく)”ってな雰囲気を紙面そのものから滲み出しているのだから、リークもしやすいのかもしれない。それにしても対象となった順大の医学部長のコメントはしっかり16行も載せているのは異例と言えば異例か。特に後半の弁解がましく「理解してもらいたい」というコメントまで盛り込んだのは、新聞にしては丁寧過ぎるほどの扱いである。

  ◇毎日と東京は参院比例代表選における非拘束名簿式導入を巡っての与野党攻防、読売はオウム真理教・松本被告裁判で東京地裁は「審理迅速化目的に4事件を起訴取り消しへ」、産経は「郵政省、NTTに光ファイバー網の開放義務付け」。読売、産経ともに新味ゼロ。特に産経のネタは日経が何度か報じてきたもの。ま、「義務付け」と明確に打ち出したのはこれが初めて、とかなんとか言えるのだろうけど、この流れは以前の日経報道も含めて「ええっ!そうなのぉ!!」とか驚くような内容では全く無い。でも大手メディア、特に新聞の書き方って「実はこうなんだぞぉ!」的なパターンが多い。なんだか大手メディアたる傲慢さが見え隠れしてしまうんだなあ。“○○新聞が書けばそれはいつも正しいのだ”みたいなさっ。

  【IT】
  ●KDDI、嵐の中で船出
  昨日、正式に発足した“KDDI”が各紙経済面で取り上げられている。KDD、DDI、IDOが合併し、固定から携帯、インターネット、企業向けまでオールジャンルでカバーできる総合通信事業者で「NTTに唯一、対抗できる新勢力」なのだ、という。この3社の合併については構想の当初から話題になることが多かった。官僚的なKDDにベンチャー京セラのDDI、カンバン方式トヨタのIDO。「上手くやっていけるわけが無い」とも言われつづけてきた中での船出である。でも上手くやっていくしかないのよね。この通信戦国時代の中で生き残っていくには、言葉は悪いが多少の犠牲は払ってでも企業として生存しなければならないのが命題とも言えるから。ただなあ~、一点だけ気になるのはこれらのトップはいつでも「NTTへの挑戦で3社は一致している」というセリフが出てきてしまうのよね。挑戦への気概は劣等感の裏返し。NTT、NTTとばかり言っていると全く違う会社に足元をすくわれるぞ、っと。トップのセリフや思考はいつのまにか前線の社員にまで浸透する。NTTを意識し過ぎてNTT以上のことが出来なかったり、NTTとは180度異なる新鮮な発想が生まれなかったら、それはもう本末転倒だと思うんだけどなあ。

  【トピック】
  ●おっさんが心配しちゃうネットパブ
  東京・大手町に「ネットパブ登場」(産経)。パブは有料だがパソコンの貸し出しは無料。ブロードバンドインターネットインフラを敷いて「コンテンツダウンロードが楽しめる」という。へぇ~。写真はジョッキ片手にノートパソコンを操作する若手サラリーマンの図。もはや珍しくも何とも無い新スポットなのだけど「おいおい、ビールがキーボードにかかっちゃったらどーすんのぉ」な~んて心配しちゃう筆者はすでにデジタル時代に生きる資格なし、か。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/

2000/10/03 09:01
3/30(金)
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