FINANCE Watch
トップページに戻る  
記事検索
G7でも打開策見出せず?~原油高騰に打つ手なし

  「即効性のある手立てはない」(通産省首脳)――。原油価格の高騰に世界が悲鳴を上げている。湾岸危機以来、10年ぶりという原油価格の高値は、沈静の兆しさえ見えてこない。この水準が今後も続けば、消費国の物価が上昇、その結果、企業収益が圧迫されるばかりか、これを引き金に景気そのものも後退局面に陥る最悪のシナリオが待ち受けている。23日からプラハで開かれるG7(7カ国蔵相・中央銀行総裁会議)でも、本来ならば中心議題となる金融・経済問題を脇に置き、原油価格の高騰が最重要テーマとして浮上してきた背景には、この問題の差し迫った深刻さがある。

  ●投機資金が大挙して
  原油価格高騰のそもそもの要因は、大消費国である米国の原油在庫が好況による需要増大で、20数年ぶりの低水準に落ち込んでいることにある。これだけなら、OPEC(石油輸出国機構)が今月10日の総会で日量80万バレルの増産を決めたことで、問題は解消に向かうはずだった。が、そうすんなりと事は運ばなかった。90年のクウェート侵攻を連想させるイラク、クウェート情勢の緊迫化がせっかくのOPEC総会の結論を台無しにしてしまったのである。

  強まる需給逼迫感。これに乗じて「ヘッジファンドなど投機筋の資金が大挙して原油先物取引になだれ込み、原油価格を高止まりさせている」(エコノミスト)のが現在の状況だ。原油とは本来関係のない金融取引のプロの餌食(えじき)となり、原油価格沈静化の絵が全く描けなくなっているわけである。

  米国では、この原油高を受けて業績を下方修正する企業が相次ぎ、株・債券相場はそれに合わせて下落。欧州 やアジア諸国でもその影響は広がりつつある。IT革命の進展に伴う近年の生産性向上がなければ、その影響はもっと早く、そしてもっと大きくなって現れていたのかもしれない。

  ●株式市場に飛び火も
  そんな中、日本への影響は、末端での過当競争に加え、「円高傾向が原油高のデメリットを軽減」(大手石油元売り)していることなどから、今のところ小さい。だが、「原油高が長引き、欧米やアジアの経済に与える影響が顕著になってくれば、日本の株式市場などにも飛び火する」(通産省幹部)。そうなると、ようやく回復軌道に乗った景気動向の腰を折る可能性も出てくる。

  では、注目のプラハG7でこの難問の打開策がまとまるかといえば、その可能性は薄く、「各国の蔵相は聞き慣れない原油問題が議題となり、対応に苦慮するだろう。原油高への懸念を表明するのが精一杯では」(金融筋)との悲観的な見方が多い。苦悩する各国政府の対応をあざ笑うかのように、原油価格の高止まりは当分続くのかもしれない。

■URL
・中平幸典・国際経済研究所副理事長に聞く
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/000913-1.htm

(野崎英二)
2000/09/21 16:13
3/30(金)
[特集] ご愛読に感謝~「FINANCE Watch」高アクセス記事集
[HOT] 契約流出招いた同業他社の誹謗中傷~東京生命破綻の内幕
[産業] NEC、グループのSCMを高度化~専門子会社設立
[ネット] セブン-イレブンがアリバのシステムを導入~グループのコスト削減狙う
[データ] 2000年の国内PCベースWS出荷が10万台突破~IDCジャパン調べ
[産業] コンテンツファンドをトータルプロデュース~C&RとJDC
[ネット] 地域密着ポータル「関西どっとコム」を設立~関西電力、博報堂など
[寄稿] 『瓦版一気読み』の連載を終えて
[連載] コラム 瓦版一気読み~最後の日「別れつらい」・・・
プライバシーについて | 編集部へのご連絡 Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.
本サイトの内容につきましては万全を期しておりますが、提供情報がシステム等に起因する誤りを含んでないこと、すべての事柄を網羅していること、利用者にとって有用であること等を当社及び情報提供者は保証するものではありません。
当社及び情報提供者は利用者等が提供情報に関連して蒙った損害ついて一切の責任を負いません。投資等の判断をされる場合は、他の資料なども参考にしたうえで、ご自身の判断でお願いします。