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コラム 瓦版一気読み(9月12日)

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●すべてはトップ次第・・・そごうに見る爛(ただ)れた企業内部
  休刊日明けのきょう、各紙の1面トップは読売と産経が「教育国民会議中間報告原案」(都内最終版、以下同)でダブったほかは見事に独自ネタが並んだ。「そごう巨額の架空取引」(朝日)、「検察審議決に拘束力」(毎日)、「違法貯金、郵便局を査察」(東京)、「光ファイバー網、NTTに開放義務」(日経)。昨日の大きな出来事といえば「東海地方で大雨被害」(全紙)が共通点だが、さすがにこの記事を1面トップに仕立てることはできなかったということか。紙面づくりが簡単そうで実は最も難しく、しかも各社の実力が如実に表れるのがこういう日だ。

  ◇朝日のそごうネタはいつ、どこが書くかで各社が競い合っていたものだ。同紙によれば「そごうは関連の設備会社に対し億単位の資金が不正に提供されていた」とのこと。「そごうが同社から商品や資材を購入したと装い手形を振り出す形で、こうした手法は数年前まで十数年続いた」とまとめている。

  実はこうしたそごうのネタは今回の架空取引だけでなく、まだまだ埋もれているものが多い…が前線記者の感触として伝わってきている。民事再生法を適用した今年7月以降、同社の話題は“経済部”から“社会部”へ完全に移行した。“政治部”の出番すらあった。話題にこと欠かないといえば、華やかなイメージもあるかもしれないが要は外から見るよりもはるかに爛(ただ)れていた企業内部があからさまになってきたということだろう。今でも同社内部で頑張っているそごうマンが存在する一方で、瀕(ひん)死の身体に振り下ろされるムチは厳しく容赦がない。企業トップの姿がすべてを物語ってしまう怖さは、いかに会社にとっての社長の存在と責任が大きいことを裏付けてもいる。

  【IT】
  ●だから一方的な記事って言うのは・・・
  ◇日経が書いた「光ファイバー網、NTTに開放義務、郵政省」は、「郵政省はNTT東西地域会社に対し、光ファイバー網をほかの通信事業者に開放することを義務づける方針」で、その際のルールとして「年内にも手続きや使用料を決める」とのことだ。

  IT論議真っ盛りの中でも最も話題が集中するのは、日本におけるネットワークインフラと、決して安くない使用料金。「現行のNTT回線では接続料を支払うことで回線を利用できるが、光ファイバーではこうしたルールがなかった」ため、ルール作りを進めて普及を促進させ、新規参入企業による競争で「利用料金も低下するとみられる」のが狙い。郵政省にとっては一石二鳥の相乗効果が図れるってなことなわけね。

  でもさ、毎度のことなんだけど、この記事の中でNTTの考え方やらコメントやらは一切ない。あくまでもお上のご意向でお国ではそういう風にしたいっていうだけのことなんだよね。そりゃあもちろん超高速ネットワークはどんどん普及してほしいし、料金だって安い方がいいに決まってる。しかし政府の思惑だけで今後この件が仮に“ぬか喜びだけ”ということになったら、そりゃあねーぜとか思いたくなるのが一般市民というものでありましょう。

  世論を巧みに後ろに置いて記事を書く・・・大手メディアではよくあるパターンではあるが、これほどまでにストレートだと弁護する気も起こらない。郵政省から「こーんなネタがあるんだけどなあ」って持ち掛けられて、そのまま記事にしちゃったって感じなのかなあ。ついでに言うとこの記事の最後がふるっていて「通信インフラ整備は民間主導という従来方針の変更にはならないとしている」のコメント。これってさ、誰が言ったの?主語がないんだよね~主語があぁ。ま、郵政省なんだろうけどね。「最後にこのコメントだけは忘れないでちゃんと付けてね。それが教える条件かな」って言われたのかな。もひとつおまけに「でもこっちの名前は伏せてね」とでも言われたかな。かくして1面トップ記事は色褪せていく・・・。

  【トピック】
  ●大変なのは紙メディアだけではない
  ◇目前に迫っているのはシドニー五輪だけではない。毎日のめでぃあ&メディア欄には「見る権利大丈夫?」の見出しで、2002年サッカー・ワールドカップのテレビ中継に関する有料放送本格化を手際よくまとめている。

  すでに周知のことが多いものの、1998年の仏W杯はNHKが単独で放映権を獲得し権料は約6億円。ところが「この後放送権料一挙に高騰し」て「2002年と2006年W杯一括で最初に提示された放送権料は約540億円、シドニー五輪の162億円と比べても到底のめる額ではなかった」そうだ。

  結局、通信衛星(CS)デジタル放送のスカイパーフェクTV!が放送権を獲得したのだが、「約10チャンネルのW杯専用チャンネルで全64試合を生中継する」にしても赤字覚悟になるのだろう。記事は「今後は地上波・BS・CSと、3波の“差別化”がさらに進むものとみられる」との結論。どの局にしても存亡をかけての生き残り策に必死だ。紙メディアが電子化の波にさらされている今、映像メディアもまた、うかうかしてなどいられない時代になった。

  メディア批評家 増山広朗


2000/09/12 09:10
3/30(金)
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