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コラム 瓦版一気読み(8月18日)

  情報は時とともに劣化する…

  ●景気が良くなってきたぞ~…本当ですかぁ?

  【1面トップ】
  ◇サラリーマンの夏休みもそろそろ終った人が多いのではないか。またあの混雑した通勤電車と残暑が待ち受けている…鬱(うつ)気味にもなりかねない人たちをなんとか励まそうと(?)日本経済新聞(18日朝刊最終版、以下同じ)は「業績予想、上方修正相次ぐ」として、2001年3月期の企業収益にスポットを当てた。

  調査によると、当初予想に比べ上方修正を発表した、もしくは上方修正が確実とする上場企業は前年同期比倍増の39社に達した、という。中でも京セラ、東京エレクトロン、NTT、TDKなどのいわゆるIT企業が絶好調、と盛り上げている。

  記事では「電機業種は今期の全産業合計の純利益予想の約2割を占めるだけに、今後も上方修正が相次げば企業収益全体をけん引する効果も大きい」とするほか、アナリストの意見も「業績回復感が広がっている」や「企業収益拡大の勢いは続く」など…。

  確かに、ね。景気が上向いて困ってしまう人なんて少ないはずだから、この記事はそれなりに意味をもつ。けれど「さあーどうだ、いいぞ、いいぞ、景気が良くなってきたぞ」と持ち上げられても「ホントかよ、おい」って思う人の方がもしかしたら多いのではないか。第一、この記事には好調でない業種・企業はピックアップしていない。

  ま、いいっか。バブル経済の責任の一端は日経にあるといわれる。その穴埋めをする意味でももっともっと早く景気が回復してくれないと困るのだろうし。えっ? なに? そんなに大げさな意味はないって? ああ、そうか、購読部数も広告量もすべては企業収益にかかわってくるもんね。わかるわかる。けれど、一介のサラリーマンがこの記事を読んでどう思うのか、には興味がある。沈滞景気に慣れきってしまった人たちは、ここで景気が良くなっても今以上に余計に働かされるだけでは…の不安も持つ向きも多いであろう。

  ◇朝日、毎日、東京はいずれも奈良・植山古墳に「推古天皇埋葬か」の記事。いかにも夏休みシーズンのネタ。このテのものは真実かそうでないかは表裏一体で、1度記事になると2度と修正が効かないほど一人歩きする危険性もはらんでいる。しかし今回は橿原市の発表ネタ。恐らくは各社、深く考える必要はなにもないってわけね。

  ●「長生きするもんでない」今や日本の「あいちぃ」の顔となった森首相

  【IT】
  ◇「あいちー」でも「あ・いてえ」でもまあどっちでも良いが、今や日本でITといえば森首相である。明日からIT先進国であるインドを訪問するが、「やっぱりその前にあいちぃの勉強せなあかん」と17日、NEC本社を視察した(各紙)。

  こわごわとコンピューターに触れる首相の姿もすでにおなじみとなってしまったが、コメントはやっぱりふるっていて「えらい時代になったもんだ。あんまり長生きしない方がいいな」……こんなことしか言えんのか。でもこの人こそが我々が生きる日本という国のトップなんですね。くら~くなる気持ちも分かります。だからこそ各紙とも扱いは当然ながら小さいんです。

  ●バブル不況の傷深く―しかし目を背けてはいけない

  【トピック】
  ◇昨年1年間の自殺者は過去最悪の33,048人(前年度比0.6%増)で、このうちの30%以上が「生活苦・経済苦」だった。全体の71.1%は男性、中高齢層に集中しているという。警察庁調べ。読売、産経、東京の3紙が1面で扱った。さすがに日経は社会面での扱いだけ。暗いニュースではあるが、バブルの傷跡が今でも根深いものであることを物語っている。対照的な日経のトップ記事。どちらも事実ではあるが、どちらも世の中の断片でしかない。ようは読む人のバランス感覚が試されてもいる。

  増山 広朗(メディア批評家)


2000/08/18 09:06
3/30(金)
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