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コラム 瓦版一気読み(8月11日)

  情報は時とともに劣化する…

  ●預金利息増えても”雀の涙”

  【1面トップ】
  ◇判断が間違っても責任をほかに転嫁することはできない。金融政策を変更する時、その最高責任者である日銀総裁はどんな心境で決定の会合に臨むのだろうか。

  1983年10月22日。日銀が公定歩合を年5.75%から5.25%に引き下げた日の早朝、駆け出しの経済記者だった筆者は、前川春雄総裁(故人)の自宅を尋ね、心境を問うてみた。取材合戦は前夜で打ち止め。総裁の出勤を待ち受けるライバルもなく、物好きな記者による単独インタビューだった。

  「ふつうの朝だよ」

  一言一句記憶しているわけではないが、淡々とした表情と別れ際の笑顔は、今も脳裏にしっかりと焼き付いている。

  「ゼロ金利」という異常事態の解除を決断する速水優総裁の寝覚めは、はたしてどんなものだったのか。11日朝刊各紙(最終版)の見出しは、<ゼロ金利解除へ>。読売と東京を除く4紙が1面トップを飾った。

  孤立無援。政府・与党の反対包囲網が敷かれている中での決断だが、臆する様子がない。夕方のテレビニュースでは速水氏の笑顔がアップで映し出されることだろう。

  市場との対話や政府との連携が十分でなかったという批判も、自身について囁かれている「ゼロ金利解除花道論」も、今の速水氏には「馬耳東風」である。

  ところで、この「10年ぶりの『金利引き上げ』」(朝日)の影響だが、預貸金金利の引き上げは小幅にとどまり、家計の利子所得も「微増」(日経)の、いわば”雀の涙”。何せ、公定歩合が4年11カ月も史上最低の水準(年0.5%)にとどまってますからね。

  ◇浜の真砂が尽きても、大型公共工事の発注が続く限り談合のタネが尽きることはない。埼玉国体関連施設の工事発注を巡る談合の実態を読売が”スクープ”。産経は、執拗に追い続けてきた国立第2小学校の校長土下座問題で、都教育委員会が教職員13人の処分を決めたと報道。

  ●歓迎!インド人御一行様

  【IT】
  ◇コンピューター・ソフト分野におけるインド人の優秀さは、改めて言うまでもない。インド政府も、自国の優秀な人材が米シリコンバレーなどに流出するのを防ぐためIT産業の育成に取り組み始めており、21世紀のインドはIT先進国に大化けする可能性を秘めている。

  そのインドから大量のIT技術者を迎え入れべく、あれこれと知恵を絞る日本政府。産経によれば、3年間の在留期間内なら何度でも本国と日本を往復できる数次ビザをIT技術者に限って発行する方針という。人材流出に神経質になっているインド政府を懐柔するために、投資拡大を中心としたIT協力の推進を提案するらしい。

  単純作業に従事する労働者の入国は制限するが、IT関連なら大歓迎。身勝手な発想、と言えなくもない。

  ◇ジェトロ(日本貿易振興会)の「2000年貿易白書」によれば、1999年の世界貿易は輸出ベースで2年ぶりに増加に転じた(各紙)。うち、IT関連製品の貿易が輸出入とも2ケタ増となるなど、ITが牽引役となった形だ。

  ●自由化の証

  【トピック】
  ◇電力自由化の試金石として注目を集めていた通産省ビル(本館・別館)の電力入札で、三菱商事系のダイヤモンドパワー(本社東京)が、これまでの東京電力との契約を4%下回る価格で落札した(各紙)。

  東電による地域独占の壁が崩れたことで、新聞各紙は「電力自由化の一定の成果を示した」(朝日)などと肯定的に論評しているが、敗れた東電の本音は「下手に安値受注すれば、大口ユーザーからの値引き要求で大変なことになる」(同社幹部)。これを自由化の証と評するのは時期尚早のようだ。

  ◆週末からお盆の帰省ラッシュが始まる。筆者も山のような土産を携えて北へ。連載再開は17日から。

  増山 広朗(メディア批評家)


2000/08/11 09:12
3/30(金)
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