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「抜かずの宝刀」に手をかけた大蔵省~緊迫するゼロ金利解除問題

  日銀は11日の政策委員会・金融政策決定会合にゼロ金利政策の解除を提案する方針を固めた。解除の条件としてきたデフレ懸念の払拭が「展望できる情勢になった」(速水優総裁)上に、委員の多数が解除支持に傾いているためだが、この方針に政府・与党が強く反発。同会合に出席する権利を持っている大蔵省は、「抜かずの宝刀」といわれている「議決延期請求権」を本気で抜こうとしている。

  「その時期ではない」
  「(議決延期請求権を行使するかどうかは)展開次第だ」
  ゼロ金利解除反対の包囲網が敷かれてもなお「月内解除」に固執する速水総裁に不快感を募らす宮沢喜一蔵相は9日夕、早期解除に反対する考えを正式に表明。金融政策で意見の食い違いが生じた場合に日銀当局に無言のプレッシャーをかける”武器”として日銀法に盛り込まれた議決延期請求権の行使に初めて言及した。

  ゼロ金利解除問題を巡る日銀と大蔵省の対立は、この時点で最高潮に達し、ともに引くに引けぬ状況となった。

  日銀幹部の中にはこれまで総裁の前傾姿勢に懸念を示す向きもあったが、関係筋によれば、日銀内の大勢が「解除以外に道はない」との判断に傾いている。今回も解除を見送れば日銀の威信は地に堕ち、中央銀行の独立性が損なわれるとの理由からだ。

  一方、大蔵省は、金融政策決定会合での議決延期請求権の行使は、あくまでも「最後の手段」とし、様々なルートを使って日銀に「解除」の提案を見送るよう働きかけている。実際に請求権を行使した場合、日銀との対立が決定的なものとなり、金融市場などが大混乱を来す恐れがあるためだ。

  同省としては、金融政策決定会合が開かれる直前まで粘り強く説得を続けていく方針だが、自民党の野中広務幹事長が10日午前、「今変えることが適切かどうかは日銀が決めるべきことだ」と述べ、日銀の判断を尊重する姿勢を示すなど、流れは「解除」に傾きつつある。

 

  【日銀法の議決延期請求権】

  日銀の最高意思決定機関である政策委員会・政策決定会合は、議長を務める速水総裁のほか、2人の日銀副総裁と6人の審議委員(学者・学識経験者)の計9人で構成。多数決制を採り、一部委員の保留などによる可否同数の場合は総裁が最終的に決断する。

  98年4月に施行された新しい日銀法のもとでは、政府(蔵相と経企庁長官、またはその代理)に必要に応じて同会合に出席し、金融政策について意見を述べることができる。また、議決権はないが、議案を提出する権利と、議決の延期を請求する権利も与えられている。

  大蔵省は今回の会合でゼロ金利解除が議長提案された場合、議決延期請求権を行使し、9月14日の次回会合まで議決を延期するよう求めることを検討している。なお、この請求権の採否も9人の委員の多数決で決めることになっている。

■URL
・包囲網にめげず「ゼロ金利解除」になお意欲~日銀総裁
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/08/09/doc148.htm
・日銀
http://www.boj.or.jp/

(沖野宗一)
2000/08/10 10:47
3/30(金)
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