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コラム 瓦版一気読み(8月8日)

  情報は時とともに劣化する…

  ●読み手は敏感、各紙はもっと差別化の努力を

  [1面トップ]
  ◇8日朝刊最終版の新聞各紙は各様のネタで、朝日が「植民地支配120人の肉声」と朝鮮総督府高官らの録音テープ発見を持ってきた一方、「自動車保険に県別料率」(日経)、「厚生省が予防接種見直し」(産経)などで競い合っている。

   ただし毎日と読売は「都心のビル、銃撃戦、2人死亡」と7日午後に東京都千代田区で起きた暴力団と政治団体の対立抗争で紙面を作った。

 白昼、都心部で起きた拳銃による事件だけに人目を引くが、7日午後の時点ですでに電波、インターネットなど各種のメディアで詳細に既報済み。半日以上が過ぎた8日朝の時点では完全に「過去」のニュースだ。他紙とは違うネタで差別化を図るのが大手メディアの宿命だが、こんなところに各紙の基本的な体力や姿勢がにじみ出てしまう。読者は情報の送り手が思う以上に、こういった各社の報道態勢を敏感に感じ取っている。

  ◇日経は金融庁の方針として全国都道府県ごとの料金が異なる「自動車保険」が「早ければ2001年度にも登場へ」と打った。1997年9月に解禁となったリスク細分型自動車保険をさらに細かく設定出来るよう、規制を撤廃するといったものだ。

 記事によれば「事故の多い大阪府と逆に少ない島根県などとでは、最大20%程度の料金格差が出る見通し」という。現行区分では全国7ブロックで分けているだけなので、地域を細分化することによって、ユーザーの利便性が向上する仕組み。

 …ん? しかし冷静に考えてみると例えば交通事故死が常にワースト3に入ってしまう北海道は保険金支払率が56%であるのに対し、交通事故死はともかく事故が多いとされる千葉県と東京は57%、奈良県62%、高知県67%などで、設定の基準は分かりづらい。さらに事故の多い地域であろうとなかろうと安全に運転する人は事故を起こさない努力をする。細分化しても利用者によっては不公平感を招かないか? 規制緩和の基本はあまねく多くの人々に公平感をもたらすものだったはずだが、この記事だけではそこらへんが見えづらい。企業側に立った緩和…とは言い過ぎかもしれないが、もう少し突っ込んだ取材も必要ではないか。

  ●やっぱり強いぞNTTグループ(=NTTドコモ)!

  [IT]
  ◇「iモード契約数、1年半で1000万」(朝日)。当初はメカの苦手なおじさんたちに「なんだありゃ。あんなもん流行るわきゃない」などと揶揄(やゆ)されていたNTTドコモの携帯電話が爆発的な勢いで契約数を伸ばしている。この調子だと2000年末までに1500万件をクリアしそうだ、という。これは携帯電話とPHSを合わせた加入台数全体の「ほぼ60%、ドコモ独走」(日経)状態で、7月の増加台数だけに限ってみると「ドコモのシェアは84%を占めるなど独り勝ちの様相」(日経)だ。

 やっぱり強いぞNTTグループ! との声が各方面から聞こえてきそうだが、実にタイミング良く(?)8日未明から早朝にかけて関東地方を中心に、4時間以上もiモードがつながらなくなった。独走態勢を祝してのお騒がせ、といった風情だが、原因はいつも通りサーバー側のトラブル。毎度おなじみのパターンで、過去の問題を詳細に書いた新聞はほぼ皆無。朝日だけは「今後解決すべき課題も少なくない」とやんわり。

 接続トラブルは多発しているのに契約数はどんどん伸びていく…既存のビジネス慣習を完全に打ち破った新時代のサービスといった観点からも特筆すべき数字だ。でもね…NTTドコモさん、そろそろなんとかしないとね。予想を上回る契約数と利用者の伸びにインフラ設備が追いつかない、なんてサービス実施企業が言えるセリフではないぞ、っと。

  ●今度はハエ…弁解できない飲食料品メーカー

  [トピック]
  あらら、またなの?「キリンビバレッジのトマトジュース缶にハエ混入」(読売、毎日など)。ヤモリの次はハエで、次はなに?などと不謹慎なことまで言いたくなるほど相次ぐ飲食料品メーカーの失態。

 キリンビバレッジは7日夜に販売中止と自主回収を決めたが、毎日によれば同缶製品を購入した主婦を「7月31日から8月3日にかけて訪ねて謝罪し、公にしないでほしいなどと持ちかけた」という。これが本当ならつい先日まで日本中を震撼させた雪印事件を教訓にしなかったばかりか、飲食料品メーカーどこも同じ、のレッテルを張られかねない事態になっても弁解は出来まい。

 産業界では昔から「消費者の反応が最も怖いのは口に入る製品と、女性消費者が中心の化粧品」が合言葉だ。そんな言葉は今はもう存在しないのか。ハエが混入していた…ことだけでなく、企業の姿勢そのものが問われることをいまだに理解していない会社がまだまだ多い。

  増山 広朗(メディア批評家)


2000/08/08 09:20
3/30(金)
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