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エリートの退官で通産省に動揺

  民間企業への転出が噂されていた通産省の安延申電子政策課長(44)が、7月31日付で退官した。安延氏は、1978年入省組のトップを走るエリート官僚。「つまらないミスを犯さない限り事務次官レースに最後まで残るスーパーエリート」と言われていただけに、若手官僚を中心に省内に動揺が走っている。

  安延氏が民間に転出するとの噂は春先から流れており、本人も早い時点で退官の意向を人事当局に伝えていた。ただ、沖縄サミットの主要テーマが「IT」ということになり、IT振興策や「IT憲章」のとりまとめなどを電子政策課が担当することになったため、退官の時期をサミット後に先送りしていたものだ。

  同省では、安延氏の後任に79年組のエース級(高鳥昭憲・前官房政策審議室長)を起用。省内の動揺を抑えようと躍起になっているが、若手官僚の間からは「官僚生活に見切りを付けるのは早いほうがいい」との声がしきりに漏れてくる。

  役所の権限が狭められ、ダイナミックな発想で政策を起案しようとしても官僚バッシングに遭う。官僚社会が次第に窮屈になっている」。ある中堅幹部は、安延氏のように将来を約束された人材が民間に流出していく背景について、「官僚の魅力が急速に薄れていることにある」と指摘する。

  このほかにも、国家公務員倫理法で手足を縛られた上に、「事務次官でさえ、天下り先がなかなか見つからない」再就職事情も、エリート官僚たちに早期退職を促す要因となっているようだ。

  安延氏は、9月から日本国内にある米スタンフォード大の関連機関に籍を置き、IT分野の研究活動に取り組んだ上でITビジネスに活躍の場を求めるとしている。通産省関係者によると、安延氏の就職先は既に決まっていて、同省や他省の若手幹部にも「一緒に働かないか」と声をかけているという。


(沖野宗一)
2000/08/01 09:48
3/30(金)
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