トピック

マイナ保険証とはなにか 12月2日からの1本化に備える

マイナちゃん

2024年12月2日以降、健康保険証は「マイナ保険証」に1本化されます。紙やプラスチックカードの健康保険証ではなく、「マイナンバーカード」を保険証として利用します。

といっても、マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)自体は、2021年10月からスタートしています。12月2日以降は、新規の健康保険証発行はされず、原則マイナ保険証に1本化していく、という点が大きな変化といえます。

なぜ「マイナ保険証」が必要なのか

政府では、マイナ保険証への移行をすすめています。

その主な目的は、医療情報の共有化により、「より良い医療を受けられるようにすること」です。加えて、「マイナポータル」でスマホなどから過去の検診結果や薬剤情報、医療費など自分の医療情報を簡単に確認できるようになります。

マイナ保険証では、マイナンバーカードのICチップを「確実な本人確認」として利用します。これにより「オンライン資格確認等システム」で管理される医療情報を、全国の医療機関・薬局に提供できるようにします。患者にとってはよりよい医療につながるほか、病院や薬局等の医療従事者にとっては、最新データを自動取得することによる業務効率化や入力誤り等の削減が図れることがメリットとなります。

また健康保険証は、写真が無いため、本人確認書類としては使いにくくなってきています。不正利用の防止の観点からも、マイナンバーカードへの移行が急がれているのです。

なお、マイナンバーカードの健康保険証としての利用登録は7,627万件(マイナカード保有者の81.2%)と、登録者自体はかなり多くいのですが、9月時点での医療機関・薬局におけるマイナ保険証の利用件数は、約2,715万件。利用率は13.87%にとどまっており、1本化に向けて、環境が整ったとはいい難い数字です。この点は利用者を含めた周知の必要がありそうです。

12月以降の「健康保険証」と新たな「資格確認書」

マイナ保険証への「一本化」ということで気になるのは、現行の健康保険証ですが、2024年12月2日にすぐに健康保険証が使えなくなるわけではありません。12月2日以降も、健康保険証の有効期限の範囲で最長1年間は利用可能です。

ただし、その猶予は1年ですので、なるべくマイナ保険証の利用準備をしておいたほうがよいでしょう。注意したいのは、転職・転居などにより保険資格が変更になった場合です。例えば、2025年4月に転職した場合、保険資格が変更になります。その場合保険証記載の期限が12月まででも、その保険証は4月の転職時点で使えなくなります。

では、マイナンバーカードを「持っていない」「取得予定がない」人はどうすればいいのでしょうか?

その場合は、「資格確認書」が無料で交付され、それを医療機関に提示することで12月2日以降も引き続き医療を受けられます。

資格確認書は、マイナンバーカードを取得していない人や、マイナンバーカードを取得していても健康保険証として利用登録していない人に交付されます。事前に申請を行なわなくても、勤務先や各自治体から、現行保険証の有効期限が切れる前に交付されることとなっています。

なお、資格確認書は、カード型、はがき型(高齢受給者証と同様のサイズ)、A4型の種類があり、医療保険者ごとに異なります。資格確認書の期限も1年間です。

マイナ保険証に必要な「初回登録」

マイナ保険証に切り替えなくても、資格確認書等を使うことで、継続して医療を受けられます。ただし、健康保険証にしても資格確認書にしても期間は最長1年なので、マイナ保険証を選ぶほうが、後々の手間は減ると思われます。

マイナ保険証の利用開始は、難しいものではありません。「初回登録」は必要ですが、それさえ済ませておけば、従来の保険証とさほど変わらず利用できるはずです。

初回登録は、マイナポータルを使っている人であれば、マイナポータルにログインして、「マイナンバーカードを健康保健証として利用する」をチェックし、「登録」を押すだけです。

また医療機関に設置されている「顔認証付きカードリーダー」からも登録が可能です。顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置き、マイナンバーカードを健康保険証として登録するボタンを選択し、画面に沿って手続きを行なえます。また、セブン銀行ATMでも初回登録の手続きが可能です。

そのほか、自治体での相談窓口などが設置されている場合もあるので、こうした機会を活用していきましょう。

マイナ保険証のメリット

従来の健康保険証からマイナ保険証にするメリットはいくつかあります。

まずは、就職や転職、引っ越しをしても、マイナンバーカードを健康保険証として「そのまま使える」ことです。転職などでは保険証の変更に時間がかかるケースがありました。マイナ保険証では、保険証を切り替える必要がなく、マイナンバーカードを保険証としてそのまま使えます(医療保険者が変わる場合は、加入の届出が必要)。

最も重要なのは、処方された薬の情報を医師・薬剤師が確認し、重複投薬や飲み合わせのよくない薬を検知できることです。電子処方せんを導入している医療機関・薬局を、マイナ保険証で受診し、薬剤情報の提供に同意すると、他の医療機関などで処方された薬の情報が医師・薬剤師に共有されます。

そのため、重複する薬や飲み合わせのよくない薬を検知し、防げるようになります。さらに、マイナポータルで、自分の薬剤情報や特定健診情報を確認できる点もメリットです。

また、手続きなしで高額医療の限度額を超える支払が免除されます。従来は、支給を受けるために、窓口で一度全額を支払った後、支給申請書を提出。「限度額適用認定証」が届くまでに1週間ほどかかるため、高額な費用を一時的に支払う必要がありました。こうした手続が無く、窓口での高額な負担を減らせます。

現在は、一部の地域のみで対応していますが、救急搬送時などでも救急活動の迅速化や円滑化も図られます。救急搬送時等に、本人が受診歴や服用している薬などを説明できない場合でも、救急隊員がマイナ保険証を読み取って受診歴、診療情報、薬剤情報などを把握できるようになります。現在は全国67の消防本部で展開していますが、2025年度には全国に展開予定です。

さらに一部医療機関での対応になりますが、医療機関の「診察券」をマイナンバーカードにまとめる取り組みも行なわれています。全国の約2,300の医療機関でマイナンバーカードと診察券が一体化されています。

また、2025年春にはiPhoneへのマイナンバーカード搭載が始まります。現在のマイナ保険証の運用のままでは使えないという課題はありますが、一部の医療機関から、マイナカード搭載スマホで受診可能な医療機関が増えていく予定です。

マイナ保険証 1本化に備える

政府では、従来の保険証を終了し、マイナ保険証に1本化することで、保険証発行コストなど年間100億円前後の削減を見込んでいます。日本の社会保障費の拡大や、労働人口の減少などで働き改革が求められる現場における対策としてのデジタル化などが急務になっています。そのための取り組みのひとつが、マイナ保険証とされています。

マイナ保険証は、利用者、医療機関のそれぞれにメリットが有る仕組みだとは言えます。これまでの仕組みを大きく変えることもあり、開始当初には混乱が生じる可能性もありますが、利用者としては、しっかり備えておくことも必要でしょう。

編集部