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「推し活手帳」がヒット スマホではなく「手書き」する理由

今年で3年目となる「推し活ライフ手帳」

スケジュール管理はスマホアプリという人は多いと思いますが、「手帳」も根強い人気があるのをご存知でしょうか。令和の手帳は、ただ予定を管理するのではなく「ライフログ」としての需要が高いそう。

インプレスでも毎年多数の手帳を発行しており、そのなかでも2022年から発売している「推し活ライフ手帳」が大ヒット。アイドルやキャラクターなど様々な「推し」がいる人のための手帳で、イベントのレポートや感想ログ、チケット管理など豊富なコンテンツを揃えています。第1弾は発売当初から反響があり、オンライン書店では発売後すぐに売り切れたようです。

推し活手帳はどうやって生まれたのか、スマホが普及した時代になぜ「手書き」の手帳が人気なのか、インプレスで手帳制作の編集長を務める和田奈保子氏と、推し活ライフ手帳の担当編集である前田菜々子氏に話を聞きました。

感想を書けるフリーログは66本分、イベントのレポートは28公演分書き込めます

推し活手帳の第1弾は、2022年9月に「推し活ライフ手帳2023」として発売。スケジュールは自分の予定と推しの予定を分けて書けるよう工夫され、推しへの愛を書けるページだけでなく、推し活で使えるお店や宿のメモができるページなど、推し活コンテンツが充実しています。

発売直後から反響を呼び、主なユーザーは20代~40代の女性。SNSでは「自分の推し活手帳の使い方」を紹介する人や、推し活手帳に書き込んだライブレポートなどを写真に撮って公開する人も多いようです。

「手帳制作をするなかで、前々から『オタ活手帳を作ってほしい』と社内で推し活をしている人に言われることはありました。しかし当時はまだ推し活という言葉も浸透する前で、少しマニアックかな? と思い実現には至りませんでした。ですが2021年頃から次第に推し活という言葉が広まり、今推し活手帳を作ったら面白いんじゃないかと編集部で話していたら、スタッフの1人が『私、実は推しがいるんです。ぜひやってみたい』と熱量をもって企画を立ち上げ、2022年に第1弾が実現しました」(和田氏)

2022年に発売した第1弾「推し活ライフ手帳2023」
購入者特典として全10色の「選べる推しカラーカバーPDF」がダウンロードできるのも話題となりました。推しカラーのダウンロードは第3弾でも可能

社会の風潮やトレンドは日々変わりますが、確かに2020年頃までは推し活をしている人はいても、企業から言葉が発せられたり推し活関連商品を発売したりといったことは少なかった印象。

「推し活がブームになった理由はさまざまですが、BTSなどK-POP人気が世間一般にまで広がったことも大きいかなと捉えています。好きなアイドルや俳優、スポーツ選手などを応援する文化自体はもともとありましたが、推し活ブームのようなものはここ数年のことだと思います。その中で第1弾となる推し活手帳を発売でき、推し活をする人の目に留まりやすいタイミングだったことが反響につながったのかなと分析しています」(和田氏)

第1弾の好評を受け、翌年はさらに部数を伸ばして展開。今年で3年目となる、9月発売の「推し活ライフ手帳2025」も好調なスタートを切りました。内容は大きく変えていませんが、2025年版は聖地巡礼や遠征で訪れた場所を記録できる地図ページを新たに用意しています。

9月発売の「推し活ライフ手帳2025」も好調なスタート
2025年版は聖地巡礼や遠征で訪れた場所を記録できる地図ページを新たに用意

“楽しむ”手帳が活況 文具好き女性との親和性

筆者も推しがいるので「推し活」をしている身ですが、手帳は使っておらず、正直なところ「スマホで完結できるのでは?」と最初は思いました。

手帳を使う人の層について和田氏は、「ビジネスの予定管理だけであればスマホでできるということで、手帳を持たない人も多いですが、こうした“楽しむ”手帳は盛り上がっており、市場全体でもヒット商品が登場しています。特に文具が好きな女性との親和性が高く、“手書きで記録したい”という人が根強くいる状況です」と説明。

文具が好きな女性との親和性が高く、“手書きで記録したい”という根強い需要があるそうです

推し活ライフ手帳ではスケジュールを書き込むページ以外に、推しのプロフィール、イベントレポートや感想を書けるフリーログなど、推しに関する事柄を記入できるページが充実しています。

こうしたページを自分なりに書き込み、イラストを描いたりシールなどを貼ったりしてコラージュを楽しむ人が多くいます。絵を描く、持ち物をデコレーションする、ハンドメイドで雑貨を作るといった趣味と同じように、筆記具やシールにこだわって手帳への書き込みを楽しんでいる人が多数存在するのです。

「絵を描いたりコラージュしたりはスマホだけだとできないことなので、手書き派が根強くいるのはそういった面も大きいと思います。もともと自由に書き込めるフリーページの多い手帳は人気ですが、自由すぎると何を書いていいかわからない、と悩む人もいるので、推し活ライフ手帳では『今月のベストシーン』『今年一番の思い出』などテーマを設けて書き込みやすくしています」(和田氏)

推し活に関するページのコンテンツは、第1弾の編集担当(育休中)が制作。「本人が推し活をしていたこともあり、かなり熱心に考えてくれたおかげで充実した内容になりました」と和田氏は振り返ります。

1カ月ごとに振り返れるマンスリーログページ。何を書いていいかわからないという人でも書きやすいようにテーマを設けています
付属のシール以外にも、マスキングテープや筆記具などこだわって自分だけのページを作る人が多いようです
イラストやデザインが苦手な人向けに、なぞるだけでふきだしや柄を描けるテンプレートグッズも人気のようです

こだわりの手書きページはSNSにアップ

人には言いづらい推しへの想いも、紙の推し活手帳なら自分だけが見るので気軽に綴れます。「実際に使っている人からは、SNSには書けないような溢れる推しへの愛も手帳になら書ける、という感想もありました」と前田氏は話します。

自分だけに留めておきたいことを書けるのが手帳の醍醐味ですが、推し活手帳ではこだわって書き込んで完成させたページを、写真に撮ってSNSにアップするという人も多くいるようです。InstagramやTikTokでは「#推し活手帳」というハッシュタグが盛り上がっており、それぞれが作り上げた推し活ページが紹介されています。

InstagramやTikTokでは「#推し活手帳」というハッシュタグが盛り上がっています(画像はインプレスのTikTokアカウント)

推し活に留まらず、こうした記録を手帳に残すのが今のトレンドで、「ライフログ」としての使用が広まっているそうです。

「カフェ巡りや映画鑑賞、美容など、テーマはそれぞれですが趣味の記録として手帳に書き込み、SNSにアップするというのがInstagramでよく見かけられます。テーマ性がなくても、例えば1週間のバーチカルページに自分の日々を記録し、それをSNSにアップするという人もいます」(和田氏)

普通の日常をなぜ? と思われるかもしれないですが、意外と人の日常を見るのが面白かったり、自分で書いたものを後から振り返ると気付きがあったりと、使い方や楽しみ方はさまざま。

1週間のバーチカルページに自分の日々を記録し、SNSにアップするという人もいるようです

ライフログが手帳のトレンドになっていることから、インプレスでは推し活ライフ手帳以外にも、資格勉強などの目標を管理・記録できる「オトナの勉強手帳 Study+Diary」をはじめ、日々の体調や食事、天気などを記録できる「養生手帳」のほか、全10タイトルの個性豊かなタイトルをラインナップ。

「勉強手帳は毎年人気で、認知度がとても高いです。社会人も資格取得などで勉強をする人が増え、目標を達成するために計画的に勉強したいというニーズがあることから高く評価されています。養生手帳は日々の体調や食事、天気や気圧などを記録でき、こういう食事や天気が続くと調子を崩しやすいなど、自分の調子のリズムを掴むのに役立てられます」

日々忙しく過ごしていると数日前のこともすぐに思い出せなかったりしますが、記録することで新たな気付きも見つけられそうです。インプレスの2025年版の手帳はいずれも発売がスタートしているので、興味がある人はぜひ「ライフログ」を始めてみませんか。

インプレスが発行する2025年版の手帳
オトナの勉強手帳 Study+Diary 2025
養生手帳の記録ページ
西村 夢音