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電車乗車時に地震がきたらどうする? 東京メトロに聞いた

3月11日といえば、11年前(2011年)に東日本大震災が起きた日。私たちが決して忘れてはならない日であり、近年では防災について考える日にもなっています。それを踏まえ、あらためて地震が起きたときのことを考えてみましょう。想定は電車の車内。誰にとっても可能性がある、電車に乗っているときの地震、そのときどうしたらいいのかを東京メトロに聞いてみました。

話を伺ったのは鉄道本部 安全・技術部 防災担当の千葉学さんと玉尾サリームさん。車両や駅構内での非常時の行動について、東京メトロの取り組み全般について解説していただきました。

東京地下鉄(東京メトロ) 鉄道本部 安全技術部 防災担当 千葉学さん(左)と玉尾サリームさん(右)

震度4以上で車両は停止。乗客もじっとしておくのが鉄則

9路線180駅を擁する東京メトロ。路線によっては3分おきに運行しているようなダイヤで、世界一の地下鉄といっても過言ではない規模を誇っています。逆にいえば、常に多数の車両が運行中。大地震が起きたときはどのように対処しているのでしょうか。

「地震発生時には沿線6カ所に設置している地震計から総合指令所に震度情報が送られます。震度4以上を検知した場合は全路線の電車に緊急停止警報が流れ、運転士は電車を停止させます。さらに36カ所に設置しているエリア地震計の表示に応じた点検を行ない、安全が確認できた区間から運転を再開できるようにしています」(玉尾さん)

沿線の地震計・エリア地震計・風速計設置箇所

このとき、車内には地震発生の状況説明が放送されるため、乗客はその放送に耳を傾けて現状を把握します。緊急停車したからといってパニックになることなく、冷静になることが大切です。安全が確認されれば運行が再開されるし、徐行運転で最寄りの駅に向かうので、降車したら駅係員の誘導に従うのが鉄則とのこと。車内案内表示装置を使って、緊急で停車している旨を案内する表示も、東京メトロ所有の車両では行なうそうです。

車内案内表示装置を使った案内も行なう 東京メトロ提供

「乗客の皆さんが多少不安に感じてしまうケースがあるとすれば、震度4を超えて震度5弱が検知されたとき。かなり大きな揺れなので、落壁など線路上の異変を確認するため、保守部門の社員が線路を歩いて点検を行ないます。駅の区間にもよりますが、点検が終了するまで停車していなければなりません」(千葉さん)

震度5弱を超える地震に電車内で遭遇したときは、とにもかくにも安全が確認されるまでじっとしているのが最善策。仮に1時間ぐらい待つことになっても耐えようではありませんか! その間、東京メトロの皆さんが安全を確認してくれているのです。間違っても窓を開けたり非常用ドアコックを使って脱出してはなりません。

東京メトロ提供

「多くの人が普段気にしていないかもしれませんが、車両のドアや窓から線路まではかなりの高さがあります。降りるというより、“落ちる”高さなので危険です。無闇に車外には出ないでいただきたいところです」(玉尾さん)

「また、地下鉄線内は皆さんが思っている以上に暗く、油などにより滑りやすく転びやすい環境である上に、対向列車がくれば轢かれてしまいます。自分が乗車している電車が止まっているからといって、対向列車も停止しているとは限りませんので、絶対に車内から出ないでください」(千葉さん)

地下鉄線内は暗い上に様々な危険が伴うため、指示のない限りは絶対に降りてはいけない 東京メトロ提供

車外に出てしまうと、身の危険があることはもちろん、その人の安全が確認されるまでは発車できないという問題も発生します。つまり、地震の影響による臨時停車が解消されたとしても、線路に降りた人が見つかるまでは危険と判断されて動かせなくなるわけです。

駅構内で避難誘導するまでの電気は確保済み

地震発生時、とにかく車内で冷静にしていることが正しい選択といえるでしょう。では、駅構内の場合はどうでしょう。地下空間という不安感もあり「我先に!」と行動してしまいそう、と思ってしまうのですが……。

「駅構内の場合でもあっても、構内放送や駅員の誘導に従ってください。駅それぞれで各自治体の避難所に誘導する仕組みになっていますのでご安心を。仮に停電したとしても、非常用電源がありますので真っ暗になることはありません」(千葉さん)

ちなみにに非常用電源は約4時間供給可能とのこと。その間に自治体の避難所に誘導する訓練を各駅で行なっているので「我先に」な行動はご法度です。スムーズに多くの人が避難するためにも、やはり冷静な判断が必要のようです。

東京メトロ提供

「駅員は非常時に『地上のどの施設が避難所になる』といった情報を把握していますし、非常時の際はお客さまに先んじて地上のビル倒壊などの危険度を確認します。安全な状況を確保しつつ避難所にご案内できるよう、シミュレーションしています」(玉尾さん)

なお、東京メトロでは東日本大震災で多くの帰宅困難者が発生したことをふまえ、飲料水やアルミ製ブランケット、簡易マットに携帯トイレを約10万人分用意し、非常時に対応できる体制を強化しています。

阪神淡路大震災から耐震補強。2012年に完了済み

地震が起きたとき、地下鉄車内においても、駅構内においても、冷静に乗務員、駅員さんの誘導に則ることが安全を確保することにつながることがわかりました。たしかにそれはわかったのですが……そもそも、トンネル内や駅構内が地震で崩落してしまうなんてことはないのでしょうか。

「ないです!(きっぱり) 東京メトロ全線のトンネルや高架橋、地上部建物の耐震補強工事は2012年に完了しています。しかも国の基準以上の補強をしていますので、ぜひ安心して地下鉄をご利用ください」(玉尾さん)

1995年の阪神淡路大震災の教訓を踏まえて耐震補強工事を開始し、17年の歳月をかけて全線の工事を完了したとのこと。2011年の東日本大震災のときには、すでに大部分が国の基準以上の耐震化がなされていたということです。

「もちろん耐震補強してそれで終わり、というわけではありません。耐震技術も進化するので、毎年再検討し、必要な補強を施しています。震度7の地震がきても、トンネル・駅が崩落することはない基準に達しています」(千葉さん)

ちなみに東日本大震災の最大震度が6強(宮城県、福島県など)。それほどの大地震が発生しても、理論上は東京の地下鉄が崩壊することはないといいます。東京メトロは全力で安全を確保できるよう、日々努力しているのです。

地震は確かに恐ろしいです。しかし千葉さん、玉尾さんは「乗客の皆さんが心配している以上の対策をしています」とはっきりお話してくれました。なので、わたしたち乗客は地震が発生したとしても、パニックにならず、我先に逃げようとせず、逐一現状を教えてくれる乗務員や駅員さんを信頼して避難しましょう。

地下鉄内で大地震が発生したら「あわてずさわがず、メトロにおまかせ」。東京メトロにおんぶにだっこな感じではありますが、それだけの対策をしてくれているのです。

ただし、補強が完了しているとはいえ、駅の案内看板や照明等が落下してくるといった可能性は考えられます。そのような危険から自分の身を守るため、普段からできることも考えてみましょう。例えば、いつも使っている駅の避難経路を確認しておくことや、地震による落下物が発生しそうな場所を確認しておくなど。こういったことを知っておくだけでも、万が一の時の冷静な行動に繋がります。

日ごろから避難経路を確認することも大事

また東京メトロの各駅で、「安全ポケットガイド」が無料配布されています。駅で見つけた際には、ぜひ手に取って参考にしてください。

安全ポケットガイド