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自転車保険の加入義務化が広がる。4月から東京都内も対象に
2020年4月22日 08:30
自転車保険の義務化地域が広がっています。新型コロナウイルスの問題もあって報道があまりされていませんが、4月1日から東京都内が義務化されました。この動きは全国的なもので、もはや自転車に乗るなら自転車保険は必要なものになっています。
広がる義務化地域
2020年4月1日から自転車の保険が義務化となったのは東京都全域のほか、奈良県、愛媛県です。東京都の場合、一部の区で先行して義務化へ向けた動きがありましたが、結局のところ東京都全域が一気に義務化されました。
全国でも広がっており、早い時期から義務化された兵庫県や大阪府をはじめ、主な都市では仙台市、神奈川県、名古屋市、京都府などが義務化、福岡県は現在努力義務ですが10月1日から一歩進んで義務化となることが決まっています。そのほかの地域でも義務化や努力義務などになっている地域は拡大しています。
そして、注意しなければならないのは、義務化地域というのはその場所で自転車を運転する人に対してのもので、住んでいる場所は関係ないということです。現時点で義務化も努力義務もない山梨県に住んでいる人でも、都県境を超えて自転車で東京都に入れば自転車の保険は義務となります。ちなみに山梨県は10月1日から義務化が決まっています。
また、今後のこの動きが広がる可能性は高いです。地域の拡大とともに、現在はない罰則も変わる可能性があります。当面は義務化地域で自転車を運転する以上、自転車の保険は入っておくべきでしょう。
1億円近い賠償金を支払うこともある自転車事故
次に、義務化だから保険に入る、とは考えないでほしいことです。現在、自転車と歩行者の交通事故が増加傾向です。よく例に挙げられる事故は、2013年に小学生が運転する自転車が人にぶつかり後遺症が残って1億円近い賠償責任を裁判所が判断したことです。
万一のこととはいえ、突然、高額の賠償責任を負ってしまった場合でも払えるようにしておきたいですし、被害者側の立場に立てば、起こした事に対してきちんと責任を取ってもらうことは当然で、加害者には十分な補償の保険に入っていてもらいたいものです。
単体以外でも「自転車保険」は豊富、実は入っていた、ということも
そこで、自転車の保険ですが、au損保のように単体で「自転車保険」を募集しているものだけではなく、自転車を運転中の賠償責任を補償する保険であればよいことになっています。例えば、損害保険やクレジットカードのオプション(特約)として「個人賠償責任特約」が自転車の運転中の賠償責任をカバーすれば自転車の保険となります。
義務化の際の説明などで例に挙げられているのは以下のようなものがあります。
- 単体の自転車保険
- 自動車保険の特約
- 火災保険の特約
- 障害保険の特約
- クレジットカードの付帯保険
- 学校やPTAで募集する保険
- 自転車店で貼られるTSマークによる保険
たとえば、最近自転車を購入したり、点検整備に出したりした場合にTSマークが貼られていれば1年間の期限内ならば自転車の保険に加入していることと同じです。
ただし、TSマークの賠償範囲は狭いうえ、赤と青の2種類あり、青いTSマークでは補償金額が1,000万円と低く、重度後遺障害があった場合にカバーしきれない場合があります。また、通常の保険と違って期限切れの案内はないので注意が必要です。
クレジットカードは「個人賠償責任保険」を追加することで自転車保険相当となりますが、一般カードでも月額100~200円代のオプションと非常に安いほか、年会費が高額な上位カードでは自動的に個人賠償責任保険がセットになっていて、すでに自転車保険に入っていた、ということもあります。
手軽なのは自動車保険の個人賠償責任保険の特約です。見積もり時に数種類示されたなかで、“補償が充実”とされている組み合わせには入っていることがあり、意識せずに加入していることがあります。差額も年間1,000~2,000円程度と低額です。
また、そのほかの損害保険にも個人賠償責任保険の特約が付いているか、追加できることもあります。
そして、単体の自転車保険があります。自転車保険を個人で入るほか、会社や学校などで募集して団体加入する保険もあります。団体加入の場合、個人で入るよりもかかる保険料がお得な場合が多いです。
賠償する金額の上限はいくら?
保険料については、単体の自転車保険で月額300円代からですが、各種保険の特約では月あたり100円代からと割安です。では、安いほうがいいかというとそうでもありません。
例えば、単体の自転車保険では、賠償時の保険金額が高くなっているほか、自転車で出かけたとき、事故や故障で乗れなくなった場合のロードサービスが付帯していることもあります。自転車事故に特化していることから、自転車事故の示談代行サービスや、高価な自転車なら自転車へのいたずらや盗難保険など、より自転車の運転に手厚いサービスが付いています。安心して自転車に乗ろうと思うなら手厚いサービスを選ぶのも悪くないでしょう。
一方で賠償額の上限も重要です。現在のところ特約などに付いてくる保険では1億円が上限の保険が多いようですが、今後、複数の人間を巻き込み、重大な後遺症を残すなどした場合に上限を超えてしまうことがないとも限りません。お金で解決するというと聞こえはよくないですが、十分な賠償額を支払うことで被害者側が救われるばかりでなく、加害者側の刑罰が軽くなる可能性もあります。
単体の自転車保険の場合、2億円などと賠償額が多めになっていることもあります。万一の際に払ってもらえる金額の上限は必ず確認し、必要な金額を満たしているか確認しておきたいところです。
また、家族のいる人は補償範囲に注意です。1人だけをカバーするのか家族全員をカバーするかの違いもあります。自動車保険の特約などでは家族全員をカバーすることが多く大家族の人はお得です。
そして、保険の重複も確認が必要です。個人賠償責任特約はさまざまな保険につけられますので、複数につけてしまっては保険料が無駄になります。
自分のケガなど損害も考えておきたい
一方で、自分が自転車運転中に事故にあった場合の補償も忘れずに考えておきたいところです。自転車の事故の8割が自動車との事故となっています。個人賠償責任特約だけでは、相手に責任がある事故で相手に誠意があれば補償はされますが、自分で運転操作を誤ってけがをした場合の補償はないかもしれません。
相手のある事故でも、相手から十分な補償が期待できない場合や、もめて裁判になれば、補償が始まるまで長い時間がかかるような場合の補償も考えておいたほうがいいでしょう。
単体の自転車保険では、どんなところまで補償されるかわかりやすいですが、他の保険のオプションである個人賠償責任特約では自分への補償内容はさまざまです。万一、自転車事故で大けがをすれば生活が崩壊しかねないような立場の人は、すぐに補償が受けられるかなど十分に補償内容を確認したほうがよいでしょう。
また、自分への補償でも注意しなければならないのは保険の重複です。けがの場合、損害保険だけでなく生命保険でもサポートされる部分もあるため、補償範囲や金額を確認し、無駄のないようにしたいところです。
どう加入したらいいか
費用的にも手続き的にも簡単なのがクレジットカードや自動車保険の特約です。クレジットカードの場合はまず、自転車の保険にあてはまるサービスを提供しているかどうかを確認しなければなりませんが、提供している場合はカード会社のWebサイトやコールセンターへの問い合わせで手続きが可能です。
自動車保険をはじめ損害保険の場合も、サービスを提供していれば会員向けWebサイトやコールセンターなどで特約の追加の手続きができ、契約期間の途中でも追加できる場合がほとんどです。
また、単体の自転車保険はさまざまなところが提供していますが、Webサイト上で申し込みが完了するところもあるほか、団体加入では所属している学校や職場などで問い合わせます。
もちろんスマートフォンに対応しているところもあるため、保険代理店などに出向く必要なく加入できるほか、大手コンビニエンスストアでも扱っており、店頭の情報端末や多機能コピー機の操作でも加入できます。
いずれにしても、インターネットで補償内容が確認できるので、よく確認して、万一の際に十分な補償ができるものに加入することが必要です。
自転車の移動が増える今だから
新型コロナウイルスの影響で、公共交通機関を使わないようにすると自転車の利用頻度が増えることがあります。自転車はある程度のスピードを出しているため、他人と近接することは考えにくく、人との接触を避けるという点では有利な乗り物です。大きなかごが付いた自転車ならば食料品の買い出しにも重宝します。
左側通行や夜間のライト点灯など交通ルールを守り、ヘルメットをかぶっていても事故はおきてしまうものです。義務化地域では保険に入らないといけないことは当然としても、義務化以外の地域でも、自分の身を守るためにも自転車の保険に加入することを検討すべきではないでしょうか。