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スマホ時代の「新聞」を使い倒す(2) 読売新聞オンラインは追加費用ゼロ

新聞各社の有料電子版サービス比較の第2回。2回目となる今回は、この2月にスタートしたばかりの「読売新聞オンライン」をご紹介。最後発のハンデは大きそうだが、武器はなんといっても「紙版を定期購読していれば追加コストなし」。果たして、台風の目となるのか?

第1回:日本経済新聞電子版
第2回:読売新聞オンライン
第3回:朝日新聞デジタル

国内最大の発行部数を誇る読売新聞が、2月にスタートさせた新サービス。同紙ではもともと「読売プレミアム」というサービスを2012年5月から運営しており、いわゆる「紙面ビューアー」の機能も提供中だった。これの統廃合とともに、読売新聞のメインサイト(yomiuri.co.jp)が大幅リニューアルされ、「読売新聞オンライン」が誕生した。

読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/

先行する日経・朝日との大きな違いは、その料金設定。読売新聞オンラインは「デジタル版のみの購読」という設定がそもそもない。紙版を個別宅配で購読している契約しているユーザーだけが、読売新聞オンラインでのサービスをフルに受けられる。

読売新聞の購読料金は、朝刊・夕刊のセット版が月額4,400円。それまでの4,037円から1月1日に値上げされたばかりだった。値上げに至った理由の1つに、新聞配達店の労務環境改善が挙げられているが、値上げのわずか1カ月後に読売新聞オンラインがスタートしている。読者サービスの拡充で、値ごろ感を打ち出したいという思惑もありそうだ。

ただ、月額4,400円で紙版・電子版の両方を読めるという設定は、意外と安い。日経は紙版単体が4,900円、紙版・電子版セットの料金は5,900円。朝日は紙版単体こそ4,037円だが、電子版は1,000円の有料オプション扱いのため、セット料金だと結局5,037円となる。

結果、長年の読売新聞の読者からしてみると「料金そのままで電子版がまるまるプラスされた」ことになる。「読売プレミアム」は月額157円だったので、そちらを元々利用していたユーザーであればさらに値上げ幅が小さく感じるだろう。

電子版だけの契約ができない点を「前時代的だ」と評することはできよう。ただ、紙版・電子版セットの考え方を一歩進め、なおかつ価格戦略面でも一工夫いれてきたのは興味深い。他紙の戦略に多少なりとも影響を与えるのか、注視したい。

それはさておき、読売新聞オンラインのサービスを細かくみていくと、新興サービスである分なのか、やや他紙の電子版と比べて機能的に劣ると感じる部分もある。このあたりを順に解説していこう。

ブラウザー閲覧が基本、専用アプリは今のところ未公開

読売新聞オンラインは、紙版本紙の宅配と明確に結びついたサービス。初期設定に必要なIDとパスワードについても新聞配達店がポストまで届けてくれる。これを「読売ID」に紐付けて、初めて使えるようになる。

筆者宅ではもともと読売新聞をもともと購読していて、2月中旬に、そのID・パスワードが書かれた招待状が届いた。これから新規に読売新聞を契約する世帯であっても、恐らくは配達初日か、それから間をおかずに同様の招待状が届くと思われる。

読売新聞オンラインを利用するための「招待状」は、新聞配達店から届く
招待状の中に、このようなIDとパスワードが記載されている

こうした仕組みのため、すでに読売新聞オンラインを利用中のユーザーが引越し先でも使い続けたい場合は、引越し先の新聞配達店から再び招待状をもらいなおす必要がある。つまり、新規加入にはややハードルが高いサービスとも言える。

さて、実際のサービスだが、閲覧にあたっては必ずブラウザーを使うこととなる。スマホ向けのアプリが(少なくとも現状では)公開されていないためだ。前回ご紹介した日経は、専用アプリを使うことにより、ページフリックで記事をめくれるなど、ブラウザーだけでは実装が難しい機能もフォローしていたが、読売はこの点で方向性がやや異なる。

「読売新聞オンライン」スマホ版のトップページ

また、アプリがないため、緊急速報のプッシュ通知も行なわれていない。iOS版はSafariブラウザー経由の通知が事実上できないが、AndroidのChromeブラウザーで読売新聞オンラインにアクセスしても、プッシュ通知関連の設定はない。一応、速報によるメール機能はある。

ニュースを中心としつつも、エンタメ系充実

読売新聞オンラインのトップページは、ニュースをしっかり前面に出しつつも、生活やエンターテインメントの話題も盛り込んだ「総合ポータルサイト」的な色彩が強い。日経であればページ上段で目立つのは「経済・政治」「ビジネス」「マーケット」などのジャンル名だが、読売は「朝刊紙面」「よみぽランド」「チケット」……といった具合だ。朝イチのタイミングでニュースをひとさらいしたい場合は、1階層下の「ニュース」のページにブックマークを付けておいたほうが良いかもしれない。

トップページ上部のメニューを開いた状態。ニュース以外のコンテンツが数多く並ぶ

「ニュース」ページは、さらにタブを「主要ニュース」「新着」の2つから切り替えられる。また、基本的にどのページからもサイドメニューを開けば、ジャンル別のニュースページに遷移可能。

ニュースのジャンルは「国内」「経済」「社説」などごく一般的なものが並ぶ。「囲碁・将棋」では竜王戦の棋譜が載っていたり、「スポーツ」では3月になっても箱根駅伝の詳報がまとめられていたりと、読売が読売たる部分もきっちりある。

トップページから1階層おりた「ニュース」。主要ニュースと新着、2つのタブを切り替えられる
サイドメニューからはニュースのジャンルなどが選べる

記事保存機能を完備、ただし検索挙動は「?」

気になる記事を保存しておく機能は、有料新聞サイトではポピュラーな機能となっていて、読売新聞オンラインにも「スクラップ」機能と言う名前で用意されている。最大1,000件まで保存でき、フォルダーに分けて整理もできる。メモを付けておくと、記事ページを開いたときにメモ文章が表示される仕様になっている点が、やや独特だ。なお、メモ内容はアカウントに紐付けられているから、デバイスが異なってもきちんと共有されている。

記事を保存しておける「スクラップ」機能。メモを付けられる
添付したメモが、ページ上に表示される
スクラップした記事の一覧画面

検索機能はシンプルで、基本的にキーワード指定のみ。また、アルファベットの半角/全角も厳密に区別される。

例えば「Hulu」「DAZN」で検索すると、ヒット数はゼロ(!)。全角の「Hulu」「DAZN」なら、きちんと検索結果が出る。

なお、検索対象範囲は1年前の記事までとのこと。

「Hulu」で検索するとヒット件数ゼロ。もちろん、そんな訳ない
「Hulu」(全角)なら、これこの通り

「Myニュース」は、最大10個までキーワードを設定しておき、専用ページからまとめ読みするための機能だ。

「Myニュース」では、指定したキーワードの関連記事を一気読みできる

紙面ビューアーで読めるのは朝刊だけ

紙の新聞のレイアウトのまま記事を読める「紙面ビューアー」機能は、やはりブラウザー上から操作する。初回閲覧時に1回だけ、SMSによる電話番号認証を行なう必要がある。

紙面ビューアーで読めるのは「東京」「大阪」「西部」「北海道」の各朝刊。当日分を含め、直近7日分がいつでも読める。それほど頻繁に読むかどうかは別として、30日分を保存している日経と比較すると、明らかに負けている。

紙面ビューアー
基本紙面を4つのうちから1つ選ぶ
バックナンバーは当日分も含めて7日分

ビューアーの挙動自体は、ブラウザーでの閲覧といっても十分安定していて実用的。ピンチイン/ピンチアウトでもたつくような体はない。ただし、記事をダブルタップするとテキスト記事のページへ遷移するといったことはできず、機能面では相当シンプルな造りである。

一方で、充実ぶりが光るのはローカル面だ。地域ごとに通常1~2ページあり、画面下部の別メニューから読める。その数にして、46都道府県(沖縄版はなし)もあり、なかなかに壮観だ。このほか、一部号外も保存されている。

個人的に最も残念なのは、紙面ビューアーで読めるのが基本的に朝刊だけとなっている点。つまり、夕刊や週末の別刷り版については、そもそも公開されていない。夕刊は相対的にページが少ないとは言え、雑誌感覚で楽しめる読み物類が豊富。システム運用的にもそれほど難しいとは思えないので、いずれ公開する体制となってほしいものだ。なお、夕刊掲載記事自体は、読売新聞オンラインでも一部公開されている。

紙面を拡大したところ。写真もクッキリ
地方面は非常に充実している。ただし夕刊は読めない

まとめ:追加コストなしでココまで見られるなら十分。ファミリーに最適

読売新聞オンライン全体の印象だが、冒頭でも少し触れた通り、ニュース一辺倒ではなく、幅広い層の利用を意識したサイトだと感じた。アンケートに答えたりショッピングでポイントが貯まる「よみぽランド」、読売ジャイアンツ戦などのチケットなどが買えるコーナー、クーポンの配布、さらにはパズルゲームの数独が週2問ずつ追加されたりと、とにかくバリエーション豊かだ。

ほかにも人生相談、占い、教育・子育て関連ページ、子供たちが喜びそうな「日刊! ポケモン」まで、まさに全方位戦略といってよいレベルと言える。

「よみぽランド」
クーポンのページもある

そして、これらのオンラインのサービスを使うにあたって、紙版を契約していれば追加料金不要であることも、改めて特筆しておきたい。確かに、アプリがない、紙面ビューアーで夕刊が読めないなど、不満はある。しかし、ブラウザーでは通常のテキスト記事を読めるし、記事数が少ないとも感じない。

日経、朝日はともに紙版購読料にプラス1,000円の料金を払わなければ、電子版の記事をフルには読めない。両紙の定期購読者であっても、電子版を契約していないユーザーは少なからずいるのではないだろうか?

その点、読売新聞オンラインは、料金のハードルがまったくない。もちろん、新聞をこれまで⼀切購読していなかった人にとって、⽉4,400円の購読料はなかなか高額だろう。ただ、読売新聞オンラインは1つのIDで最大2台まで同時にログインできるので、共働き夫婦がそれぞれ電子版を読むのであれば、理論上コストは半分になる。通常1世帯に1部届く新聞本紙を、誰が⾒るか奪い合う機会も減るはずだ。

紙版の本紙を購読しないとデジタル版も使えないという点は、特に新規加入者にとってはハードルが高い。その意味では、既存購読者の利便性や満足度向上が読売新聞オンラインの狙いなのかもしれない。

価格的にもコンテンツ的にも、1世帯あたりの人数が多いファミリー層であれば、読売新聞オンラインはなお楽しめるだろう。もちろん単身生活者であっても、「紙の新聞だけは絶対読みたくない」という方でないかぎり、試してみる価値は十分ある。