中小店舗のキャッシュレス対応
第15回
紀の善「Go To」対応完了。しかし直後にGo To停止……
2021年1月27日 08:20
新型コロナウイルスの感染拡大が進んだことや、一部都府県に緊急事態宣言が出されたことで、運用が停止されているGo ToトラベルとGo To Eat食事券の販売がいつ解禁になるのか見通せない状況となっています。
ただ、東京都でGo To Eat食事券の販売が始まった11月20日に合わせて、筆者の家族が経営する店「紀の善」でもGo Toトラベルの地域共通クーポンとGo To Eat食事券の利用に対応しましたので、今回はそちらについて紹介します。
飲食店でのGo Toトラベル地域共通クーポンの利用はGo To Eatの対応とセット
Go Toトラベルの地域共通クーポンの利用とGo To Eatキャンペーンは、どちらも2020年10月1日より開始となりました。そのため、紀の善でも可能な限り早く、地域共通クーポンとGo To Eatへの対応を行ないたいと思っていましたが、実際には11月20日まで開始できませんでした。
飲食店でGo To トラベル地域共通クーポンを利用するには、「Go To Eatキャンペーンへの登録」が必須となります。地域共通クーポンの利用について、飲食店だけ扱いが異なっているのは釈然としない部分もありますが、そう決まっている以上は仕方のない部分です。
Go To Eatキャンペーンには、特定の予約サイトで予約した場合にポイントを付与する事業と、都道府県単位で販売されるプレミアム付食事券の販売事業という2種類の事業が展開されています。ただ、そもそも予約を取っていない紀の善では、このために新たに予約受付を始める考えはなかったので、ポイント付与事業への登録は行ないませんでした。そのため、10月1日から全国を対象としてスタートしたGo To Eatポイント付与事業に合わせて、地域共通クーポンの利用を開始できなかったのです。
プレミアム付食事券は、予約を取らない店でも使えますので紀の善でも対応する予定でした。ただ、東京都はプレミアム付食事券の対応が他に比べてかなり遅く、事業者の登録開始が10月21日から、食事券自体の販売開始も11月20日でした。紀の善での地域共通クーポンとGo To Eat食事券への対応が遅くなったのは、これが理由でした。
ところで、いずれも登録申請自体は双方ともオンラインの申請サイトが用意されていて、そこから必要な情報を入力するだけでした。手順も簡単で、手間取ることもありませんでした。
飲食店が地域共通クーポンの利用を申請する場合には、Go To Eatへの登録がわかる書類などを提出する必要があります。しかしその書類がなくとも先に登録作業だけ進めておいて、Go To Eatへの登録が完了した段階で改めて書類を提出すればいい形になっていましたので、地域共通クーポンへの登録作業は10月までにすませておきました。また、Go To Eat食事券への登録申請は、申請開始の10月21日に行ないました。
その後、10月末に地域共通クーポンの加盟店キットが、11月14日にはGo To Eatの加盟店キットが送られてきました。そして、Go To Eatの加盟店キットに含まれている登録完了がわかる書類をスキャンして地域共通クーポン登録サイトに転送するとともに、店頭に地域共通クーポンのポスターを貼ってその写真を転送。すると、11月15日に地域共通クーポン利用の登録が完了して、無事準備が整いました。
Airレジでクーポン用のボタンを用意。ステッカーで準備完了
次に、Airレジの設定変更を行ないました。通常紀の善では商品券や食事券などの類は扱っていませんので、決済時の支払い方法として商品券などの項目は用意していませんでした。ただ、地域共通クーポンやプレミアム付食事券は、「受取商品券」として会計処理を行なう必要がありますので、地域共通クーポンやプレミアム付食事券の利用額が明確にわかるように、支払い方法名は「クーポン」、種別は「金券」に設定した新しい支払い方法のボタンを用意しました。
そして、地域共通クーポンやプレミアム付食事券を使った場合には、このボタンを押して金額を入力するようにしました。
新しい決済手段が増えることで、決済時の手間がやや面倒になりますが、会計処理を円滑に行なうためには不可欠ですので、ここはレジ担当の店員には慣れてもらうこととしました。
また、対応開始直後は処理に手間取る可能性も考慮して、当初は地域共通クーポン、Go To Eat食事券ともに紙クーポンのみの対応としました。実際には、地域共通クーポンの電子クーポン、Go To Eatデジタル食事券も対応はすませていました。ただ、東京都のGo To Eat食事券は11月20日に紙の食事券の販売が開始され、デジタル食事券は1週間後の11月27日に開始が開始されることになっていたので、当初はクーポン利用の操作に慣れるために紙クーポンのみの対応といて、デジタル食事券の販売が開始されたら改めて電子クーポンへも対応しようと考えたのです。
以上の準備を行なうとともに、店頭にプレミアム付食事券の利用が可能なことを告知するテッカーを貼って、準備は完了。無事、11月20日より対応を開始したのでした。
地域共通デジタルクーポンとデジタル食事券への対応は当面見送りに
その後の状況ですが、東京都では11月に入って新型コロナウイルスの感染者数が増えていきました。そして、11月21日からGo To Eat食事券の利用に制限がかけられ(5人以上の飲食では使えない)、11月27日からGo To Eat食事券の販売が一時停止となりました。
それにあわせて、本来は11月27日から販売開始予定だったGo To Eatデジタル食事券の販売も行なわれなかったのです。そのため、デジタル食事券は当面使われることがなくなりました。
その関係で、Go Toトラベルの地域共通デジタルクーポンの扱いが宙に浮いてしまいました。実は、お客様に地域共通デジタルクーポンが使えるかどうか聞かれた場合でも対応できるように、決済に必要となるQRコードは用意していました。そして店員には、使えるか聞かれた場合には対応してあげて、と伝えていたのですが、11月27日までにお客様から使えるか尋ねられたことはなかったそうです。
また、地域共通デジタルクーポンを使ったことのある方ならおわかりかも知れませんが、同クーポンを使う場合には、お客様、お店双方とも面倒な作業が要求されます。そのため、地域共通デジタルクーポンへの対応はGo To Eatのデジタル食事券の販売が始まるまで様子を見ることにしたのです。
その後の状況は、みなさんもご存じのとおりです。新型コロナウイルスの感染者数は12月以降もどんどん増えていき、ついには12月28日にGo Toトラベルの運用が停止され、1月8日には東京都を含む11都府県に緊急事態宣言が出されました。
現在のところ、緊急事態宣言がいつ解除となり、Go Toトラベルの再開やGo To Eat食事券の販売再開がいつになるのか、全く見通せない状況です。ただ、再開した際には、同時に地域共通デジタルクーポンへの対応も開始する計画です。
クーポンの換金請求はやや面倒
さて、店で受け取った地域共通クーポンや食事券ですが、それらは各事務局へ換金請求を行なう必要があります。
地域共通クーポンは、はじめに店舗保管用の半券部分を切り取ります。そして、受け取った紙クーポンの数を数えて、専用の用紙に枚数と金額を記入し、その用紙と一緒にクーポンをまとめて輪ゴムで縛ります。それを専用の封筒に入れて、宅配便で事務局に発送します。
空港や駅の土産物店など地域共通クーポンがかなり多く使われるお店では、枚数を数えるだけでもかなり手間がかかるでしょう。
紀の善の場合は、それほど利用枚数が多くありませんので、そこまで手間はかかりません。ただし、地域共通クーポンの換金請求は、クーポンの有効期限末日を含む月の翌月の締め日までに行なう必要があります。締め日は1月あたり2回用意されていますので、有効期限翌月の2回目の締め日までに請求しないと換金できません。
紀の善では、毎月末日に1カ月分のクーポンを集計して換金請求しています。換金分の入金は、締め日から30日以内とされていますので、実際に使われてから入金されるまでには1~2カ月ほどかかる計算です。入金までにやや時間はかかる点は、少々気になる部分ですが、急ごしらえで作られた制度ですし、仕方のない部分もあるでしょう。
それに対し、Go To Eat食事券は、ちょっと面倒です。
東京都で発行されているGo To Eat食事券は、1,000円券と500円券がありますが、いずれもステッカーになっています。そして、受け取った食事券は1,000円券と500円券それぞれ別に用意されている専用台紙に貼り付けて、台紙1枚ごとに合計金額を記入する必要があります。さらに、台紙に貼った食事券は、サインペンで線を引いて使用済みとします。この、食事券を台紙に貼り付ける作業とサインペンで線を引く作業は、思った以上に面倒に感じます。特に、利用枚数が多いお店では、かなり大変だと感じます。できれば、もう少し簡単な方法を採用してもらいたかったように思います。
その後、専用の振込申請書に1,000円券と500円券それぞれの全枚数と金額、さらにトータルの金額などを記入し、振込申請書とまとめて専用の封筒に入れて事務局に郵送します。
Go To Eat食事券はキャンペーン最終日まで利用できますので、換金請求は地域共通クーポンほど制約は多くありません。東京都の場合は、4月7日を最終日として7回の基準日が用意されていて、その基準日までに事務局に届いたものについて順番に精算が行なわれるようになっています。例えば、1回目の基準日は12月4日に設定されていて、それまでに届いたものについて精算され、12月21日に入金が行なわれる、というスケジュールとなっていました。請求から入金までは最長で5週間ほどかかります。
請求のタイミングはお店が自由に選択していいようですが、紀の善では地域共通クーポン同様に1カ月分をまとめて請求するようにしています。
ちなみに、地域共通デジタルクーポンやデジタル食事券は、換金請求を行なうことなく利用実績に応じて入金されます。デジタルクーポンは、使う場面では面倒ですが、換金の面倒がかからないので、その点では便利と言えます。
早期の再開に期待も、感染拡大の終息が先
このように、換金請求は少々面倒ではありますが、お店にとってはクーポンや食事券があるおかげでお店にきていただいたり、余計に商品を購入していただけるきっかけになることは間違いありません。そういった意味で、お客様はもちろん、お店にとってもありがたい制度であることは間違いないでしょう。
ちなみに、11月にかけては紀の善でもかなりお客様が戻ってきていましたが、12月以降はまた厳しい状況が続いています。ですので、店側としては、Go ToトラベルやGo To Eat食事券販売の早期の再開を期待したいところです。
とはいえ、Go ToトラベルやGo To Eatの実施が、現在の新型コロナウイルスの感染拡大の要因のひとつになっている可能性も否定できないでしょう。まずは感染拡大が落ち着き、終息に向かうことが先決です。現時点では先行き不透明ですが、このまま終わらせるのではなく、ある程度感染が抑えられたら実施期間を延長するなどして再開してもらいたいと思います。