いつモノコト

電力を隅々まで可視化する「Nature Remo E」 めちゃ便利&楽しい

2024年の夏に太陽光発電システムを導入した我が家。新しい“おもちゃ”が手に入ると、ワクワクしていじり倒したくなってしまうのは男の子(47歳)のサガで、今どれくらい発電していて、どれくらい消費し、どれくらい蓄電しているのか、といった稼働状況が常に気になってしまいます。

ってことで、スマホをHEMSモニターにする「Nature Remo E」(39,800円)を導入してみました。

Nature Remo E

なぜNature Remo Eが必要なの?

最初に補足しておくと、太陽光発電システムの稼働状況を確認する方法は標準でも用意されています。筆者宅に導入したシステムの場合は、「マルチ蓄電システム用ゲートウェイ」の小さな画面で発電量や蓄電量などがリアルタイムで分かります。

また、スマホやパソコンなどからアクセスできるWebベースの「遠隔モニタリングサービス」でもステータス確認が可能です。

宅内に設置された「マルチ蓄電システム用ゲートウェイ」
「遠隔モニタリングサービス」でも稼働状況はチェック可能だけれど……

ただ、いずれも細かな稼働状況までは知り得ません。前者のゲートウェイはその取り付け場所まで見にいかなければなりませんし、後者のWebサービスはいつでも手元で見られるものの、表示される現在値はリアルタイムではなく直近30分の平均値となっています。

リアルタイムの詳細な稼働状況を知るためには、専用のHEMSモニターと呼ばれるものを備え付けるのが一般的でしょう。しかし、お値段は標準価格で10万円前後のものが多く、実際にはそれより安価に設置工事ができるとしても、ただ数字を見るだけの用途にはコストが見合わないように思います。また、ゲートウェイと同じで確認のために設置場所までいちいち見に行かなければなりません(スマホアプリと連携できるものもあるようですが)。

リアルタイムのデータをもっと気軽に見たい! そうすることでより有効な節電アクションが取れる可能性もあるのでは? なんて思いに応えてくれるのが、今回紹介するNature Remo Eなのです。

Nature Remo Eでできること

Nature Remo Eは、家庭のスマートメーター(電力メーター)とワイヤレスで通信して宅内全体の電力使用量を監視できるうえ、ソーラーパネルや蓄電池などの稼働状況もスマホで「ほぼリアルタイム」に把握できるようになるIoTデバイスです。同シリーズの簡易版として、電力消費の監視に特化したNature Remo E Liteという製品もあります。

できることのわりにコンパクトなNature Remo Eの本体
左が太陽光発電システムなどに対応する今回のNature Remo E。右が電力消費の監視に特化した簡易版のNature Remo E Lite。見た目の差はほとんどない

Nature Remo Eでは、主にスマートハウス機器で採用されているECHONET Liteと呼ばれる通信プロトコルに対応する設備との通信が可能です。なので、導入にあたっては設置済みのソーラーパネルなどがECHONET Lite対応機器であることをあらかじめ確認しておく必要があります。ただ、最近の太陽光発電関連の設備は多くがECHONET Liteに対応しているようです。

まずはコンセントに差し込む
アプリからNature Remo Eを追加
追加できたら今度は「スマートメーターに接続」
スマートメーターに接続するには、事前に電力会社に申請して「Bルート認証ID」などの取得が必要。その情報を元に登録する
続いて「エコネットライト機器を追加」
しばらく待つとソーラーパネルと蓄電池が候補に現れる
候補が表示されないときはゲートウェイの設定で「HEMS接続」が無効になっている可能性があるので、有効に
これで監視の準備が完了
「エネルギー」を選択するとほぼリアルタイムのステータスがグラフィカルに表示
もちろん蓄電量も分かる
蓄電池の動作設定の変更も可能

ところで「ほぼリアルタイム」と書いたのは、Nature Remo Eが表示する情報が完全なリアルタイムではないからです。おそらくは通信プロトコルの仕様やクラウドを通じて各種データを表示する仕組みの影響で、実際よりも30秒ほど遅れたデータが見える形になります。

それでも、標準のWebサービスで得られる直近30分の平均値よりは断然有用な情報です。筆者宅の場合はソーラーパネルで発電している電力量、そこから家庭内に供給している電力量と、蓄電池に給電している電力量、そして電力会社とやり取りしている買電量と売電量が分かります。V2Hやエネファームも設置していれば、その動作状況も分かるようです。

タブレットに表示させると、まさしくHEMSモニター

それらのデータは蓄積され、過去の推移をグラフで把握したり、一定期間ごとの電気料金の目安をチェックしたり、電力関連のデータをファイル出力して表計算ソフトで分析するのに活用したりもできます。

各種データの推移をグラフで確認
一定期間のデータをダウンロードすることも可能

さらに、Nature Remo Eの開発元は家電をコントロールする赤外線リモコンなどを提供しているメーカーということもあり、家電などとの自動連携にも対応します。たとえば買電・売電量が一定値になったらエアコンをオンまたはオフにする、といったような自動化も可能です。

家電との自動連携も可能。筆者の場合はとりあえず家電連携はせず、売電が開始したら通知だけするように設定
他にも特定の電気料金プラン利用時に電力の有効活用や、売電価格の最大化が可能な自動化機能も用意されている

Nature Remo Eのメリットは?

では、太陽光発電システムの稼働状況がほぼリアルタイムで見られるようになったことで筆者宅ではどんなメリットが得られるようになったのか、いくつか紹介したいと思います。

まず1つ目は「めちゃめちゃ楽しくなる」です。今どれくらい発電しているのか、宅内でも外出時でもスマホから確認できるので、「今日は晴れてるからいい感じで発電してるなー」とか「曇りでもこのぐらい発電するのか、すげー」とか、スマホ画面を眺めてはいつもニヤニヤしています。もちろん「全然発電してない! ヤバイ、節電しないと! 」みたいに焦る日もありますが。

人の力ではどうにもならないお天道様の気分に一喜一憂するなんて無駄じゃない? なんて思われそうですが、機械が頑張って発電しているのを見ること自体楽しいもの。毎朝起きたらチェックして、お昼ご飯を食べながらチェックして、仕事をしながら横目でチェックしています。もはや筆者のなかではSNSを超えるエンタメコンテンツになっています。

毎日スマホで稼働状況をチェック。「ほーん、この曇りでもここまでいけるかー」みたいな確認ができるのが楽しい

2つ目は「家電の消費電力がわかるようになる」こと。Nature Remo Eのアプリに表示される電力量はあくまでも家全体の合計値で、個別の家電製品が消費している電力までは分かりません。ただ、家電を単独でオンオフするとその合計値が変動するので、だいたいの消費電力は把握できます。

たとえばエアコンは最も消費電力の大きい家電の筆頭ですが、常時フル稼働しているわけではなく、ほとんどの時間帯は少ない電力で動いています。それでも、真夏や真冬は1日中つけっぱなしになるわけで、その積み重ねによって、全体から見るとどうしても電気代への影響が大きく感じられます。

他に我が家で消費電力が大きいのは、生ゴミ処理機と食洗機。これらは少なくとも1時間から数時間はフル稼働させることになるので、単位時間あたりの消費電力はなにげに一番多いかもしれません。

蓄電池からの電力供給時は、いわゆる逆潮流を防ぐために必ず100W前後を買電する、というのにも気付ける
1日1回必ず発生するシステムメンテ的な動作で約10分間だけ買電になるなど、細かな挙動まで分かる

意外な事実が分かったのは電子オーブンレンジです。筆者宅にあるものは最大800Wで、600Wや500Wなどにも切り替えて使えるのですが、どれを選んでも1,000W前後消費することがわかりました。一度にせいぜい数分間しか稼働しないとはいえ、その間はずっと1,000W前後のピークを維持し続けるので、インパクトがデカい家電として警戒しています。

最大のメリットはデメリットにもなり得る

ところで、本来なら一番に推したいメリットは「節電意識が高くなる」ことなのですが、これはメリットであると同時にデメリットにもなるなあ、と感じています。

Nature Remo Eによって視覚化された刻一刻と変化する電力の数値を眺めていると、どの家電がどれくらい電気を使うかがなんとなく分かることもあって、余計な電気は使わないようにしたいなあ、という意識が高まってきます。発電量より消費電力量が上回っている(+蓄電池残量が少ない)と買電になるので避けたいですし、発電量が十分であっても、余剰分を蓄電池に回して充電しておき、夜間の買電を防ぎたいと思ってしまいます。

蓄電池に充電している状況になるとなんだか安心

なので、少しでも節電しようと「不要そうな照明はこまめに消さなきゃ」という気持ちになるのは必然。そのうえで、発電量や蓄電量が十分でない時間帯は消費電力の大きい家電を動かさないようにしようとか、冷たい食事を温めるときは電子レンジではなく代わりにガスコンロを使おうとか、食洗機ではなく手で洗おうとか、そんな考え方に至るように……。

実際、生ゴミ処理機は以前は夜中に稼働させていましたが、電力消費がハンパないことが分かってからは、天気予報を見て十分な発電量が得られそうな日(100%蓄電して売電まで行けそうな日)に、タイミングを見計らって日中に処理することもあるほどです。

これはもはや半分デメリットでしょう。電気を使った方がいいときにも、発電量を気にするがゆえに行動が制限されてしまっている、と言えなくもないのです。また、電気代は節約できても、代替手段となるガスや水道の料金にその分が転嫁されている可能性もあります。果たしてどっちがエネルギー効率がいいのだろうか、と、ない頭を無駄に悩ませる日々……。

原稿を書くだけならデスクトップではなくノートパソコンを使った方がいいのでは? とも最近は思い始めている(今さら)

強くおすすめしたいアイテムだけれど、活用はほどほどに?

Nature Remo Eによって節電意識が高まり、毎日データを眺めるという新しい楽しみを見つけられたのはいいことですが、行き過ぎた節電はかえって不便になりますし、きっと健康にも良くありません。冬に入りつつある今、エアコンを暖房にするとものすごい電力を消費することに気が付き、仕事中も電源をオンにするのをなるべく控えていたりします。カタカタいってるのはキーボードのタイプ音なのか、それとも歯の音か……。

そもそも太陽光発電システムを導入したことで、すでに少なからず電気代は節約できているはずですから、効率・快適性重視で大いに電気を使っていくべき、とも思うのですが、やっぱり具体的な数字が見えてしまうと効果を最大化するための行動をとりたくなるもの。スマホで気軽に太陽光発電システムを監視できるツールとしてNature Remo Eはとってもおすすめですが、活用はほどほどに、というのが筆者からのアドバイスです。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。