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サーモスのコーヒーメーカーで在宅勤務のコーヒー事情が改善

サーモスの真空断熱ポットコーヒーメーカー「ECK-1000」

在宅勤務・テレワークが常態化したことで、家で作る・飲むコーヒーの量が増えました。毎日食後にコーヒーを飲みたいのですが、しかし最近はずっとインスタントコーヒーでした。もともとコーヒーは好きですから、いい加減、家でも手軽にドリップコーヒーが飲みたいという熱が最高潮になったところで、サーモスの真空断熱ポットコーヒーメーカー「ECK-1000」を買ってみました。2020年10月に発売されたモデルで、都内の量販店での価格は11,100円(10%ポイント還元)です。ほかでも1万円フラットで販売されているようです。

筆者は、ここ数年はハンドドリップに傾倒し、道具を揃え、(引っ越す前の)近所の喫茶店のマスターにハンドドリップ方法を教わり、お店の自家焙煎の豆を買って、自宅でハンドドリップコーヒーを楽しんでいました。こうした“こだわりすぎ”の弊害は、気軽にコーヒーを淹れられなくなることです(笑)。よーし淹れるぞ、と気合が必要ですし、買っていた豆の価格も高く、毎日飲むには辛いものがあります。休日に、ちょっとおいしい料理を食べた後などに飲むスペシャルな1杯というのが、我が家での現在のハンドドリップコーヒーの位置付けです。

ハンドドリップに傾倒した関係でカット刃の電動コーヒーミルなど道具は揃っています

ドトールのブレンドコーヒーぐらいの、いい具合に普通のドリップコーヒーが、そこそこのコストで毎日家で飲めたら……というのが、今回コーヒーメーカーを買うに至った背景です。

とにかく最高に美味しい1杯を、という場合はハンドドリップで淹れますので、コーヒーメーカーに求めている味のレベルはそれほど高いわけではありません。それよりも、今回は毎日使うということを念頭に、手入れのしやすさや、シンプルで無駄な機能がないといった点を重視しました。

ドリップに工夫

サーモスはこれまでも真空断熱ポットに直接コーヒーを入れるタイプのコーヒーメーカーを発売しており、ECK-1000はその最新モデルです。一方、ドリップの工程では、粉の蒸らしに加えて、ハンドドリップを再現したというお湯をまんべんなく粉にかける「スパイラルドリップ方式」を採用しているのが特徴です。

この新機能がなかなかあなどれない仕組みのようで、筆者的には期待以上の美味しさでした。豆の味の特徴は出ますし、香りもちゃんとしています。後味に少し雑味が残るのは、ドリッパーに入れたお湯を最後まで落とし切る仕組み上、しかたがないところでしょうが、嫌になるようなレベルではありません。

味のレベルをざっくりと捉えると、コンビニのドリップコーヒーより美味しく、コーヒーチェーンのブレンドコーヒーなどと同等か、場合によっては少し上回るレベルといったところでしょうか。コーヒー豆のグレード次第な部分はありますが、少なくとも味を引出す性能の面では、筆者の当初の目的を達成しているレベルといえそうです。

同梱物はシンプル。計量スプーンと試供品のペーパーフィルター5枚が付いてきます
抽出したコーヒーは真空断熱ポットに直接入ります
お湯が出る部分は「スパイラルドリップ方式」でお湯がまんべんなく出る仕組みです

ちなみに抽出している最中にポットを外すと、ストッパーが動いてドリッパーの抽出穴がふさがり、電源も切れてドリップ自体が止まるという安全装置も搭載されています。

サーモスのコーヒーメーカーの現行モデルはいずれもそうですが、ドリッパーに台形のペーパーフィルターを使い、ECK-1000ではメリタなら「1×4」、カリタなら「103」という、一般に4~7人用の大きめのサイズを使います。

個人的な印象ですが、ペーパーフィルターと金属フィルターとでは抽出したコーヒーの味はかなり違い、筆者は漂白された白いペーパーフィルターで淹れる「普通のドリップコーヒー」の味が好きなので、ペーパーフィルターを使う仕組み自体はポジティブに捉えています。メリタは「オリジナル」「グルメ」など特性の違うペーパーフィルターをラインナップしているので、それらで変わる味を楽しむのも一興です。

ペーパーフィルターは「1×4」サイズ

日々にかかるコストに影響する水とコーヒー豆については、毎日飲むこと、負担が少なく続けられることを念頭に、高くないものを選んでいます。水は浄水器を通した水道水です。豆は新たに200gで500円ぐらいの価格帯のものを選んでいます。カルディなら最も安い価格帯の豆で、スーパーや無印良品にも200gで500円前後のものが売られています。

取扱説明書の指示通り、6カップ(筆者が使うマグカップで3杯分)の抽出に豆42gを使うと105円で、1杯分の豆は35円です。ペーパーフィルターはメリタ製(287円で80枚入)を使い1枚3.6円とすると、1杯分は1.2円相当です。1杯あたりの豆・ペーパーフィルターのコストは合計で36.2円になります。

1万円という製品本体の価格はさておき、豆など主要なランニングコストに目を向けると、実はこれまで飲んでいた、お高いインスタントコーヒー(1瓶100gで1,183円、1杯で4gを使い47円)より1杯のコストは安くなることが判明しました(笑)。また同時に、街中で買える、ECK-1000で淹れたものと味は同格と思えるドリップコーヒーより格段に安くすむこともよく分かります。豆やペーパーフィルターはもっと安いものがあるので、味に納得できるなら、さらに低コストにもできます。

シンプルな機能、お手入れもラク

本製品の新しいポイントは上記のスパイラルドリップ方式ぐらいで、操作はドリップ開始ボタンとタイマーがあるだけと、非常にシンプルです。

使用方法も同様で、ペーパーフィルター、淹れたい量のコーヒー粉と水、真空断熱ポットをセットして、タッチ操作のドリップ開始ボタンを押すだけです。蒸らし中や抽出中などはインジケーターで分かり、抽出が終わるとピーピーピーとブザーが鳴って完了です。かかる時間は4カップ分で約7分、6カップ分で約9分、8カップ分で約11分です。

ポットをセットして電源を入れたところ
タイマーボタンを押すと時間を設定。写真は2時間後という設定
抽出中の表示
抽出が完了するとポットのマークが点灯。数字は経過時間(分)です

真空断熱ポットの保温性能は本製品だけの特徴ではないですが、午前中に淹れて夕方までに飲み切る、ぐらいの使い方なら十分に実用的な範囲だと思いました。

筆者は1日に3回飲みますが、1回で2カップ分(220ml)は飲みたいので、6カップ分(660ml)を作れば1日に飲みたい3回分になる計算です。9時頃に作ってまず1杯飲み(残り440ml)、13~14時頃に2回目を飲み(残り220ml)、18時頃に3回目を飲むというペースだと、さすがに残量も減っている3回目は温度が下がっています。ただ、かなり個人的な感覚ですが、3杯目でも「なんとかあたたかい」という塩梅といいましょうか、ゴクゴク飲める、ホットコーヒーとしてギリギリの頃合いという印象で、レンジで温め直すほどでもないかな、という感じです。“許せるボーダーライン”には個人差があると思いますが……。

ちなみにハンドドリップでもそうですが、ECK-1000では淹れたてをすぐにカップに移しても、冷まさずに飲めるぐらいの温度です。口をやけどするような温度から保温がスタートするわけではありません。

保温性能について留意しておきたいのは、ECK-1000のポットは1リットルという、小さくないサイズであることです。真空断熱ポットは中に入っている量が多いほど本来の保温性能を発揮しやすく、少量だとそれより保温性能が劣ることになります。より長時間保温しておきたいならより多く作るのが理想ということになるので、一度に淹れる量が少ない使い方だと、「思ったより冷めてるじゃん」というミスマッチが起こります。取扱説明書では、保温性能に関して4カップ(440ml)以上を作ることがおすすめされているほか、ポット内を少量の熱湯であらかじめ予熱すると効果的と紹介されています。

本体のドリッパーと給水タンクは取り外して洗えますし、サーモスの真骨頂である真空断熱ポットは中せんの分解が簡単で、ポットは開口部が大きく中に手を入れて洗えるなど、全体的にかなり考えられています。ポットの中せんはバラ売りされていて、後から中せんだけ買うこともできます。

筆者は年間を通してアイスコーヒーを飲まないので試していませんが、ポットの開口部が大きくアイスコーヒーを作るための氷も大きいものを入れやすいようです。

ドリッパーで抽出したコーヒーはそのままポットの注ぎ口に落ちるので、本体内部は汚れづらく、毎回の掃除が簡単というのもありがたい点です。タイマー機能に時刻を使わないので時刻設定は不要で、使わない時はコンセントを抜いて仕舞っておけます。本体は少し横幅があってコンパクトではないですが、真空断熱ポットをセットしていなければ軽く、簡単に移動できます。

ドリッパー
給水タンク
真空断熱ポットは開口部が大きく手を入れて洗えます
ポットの中せん。別売りでも買えます
中せんは簡単に分解でき、パッキンも外せます

ECK-1000は真空断熱ポットというサーモスの得意分野を中心に据え、製品全体でシンプルであること、お手入れをしやすいことに配慮されています。その上で、近年再注目されているハンドドリップの淹れ方を機能に落とし込み、豆のポテンシャルをしっかりと出せる、レベルの高い味も実現しています。それらを、数万円するコーヒーメーカーとしてではなく、1万円フラットの価格帯で実現しているのもポイントでしょう。コーヒーメーカーとして中堅モデルの価格帯で、機能はシンプルですが、「毎日飽きずに飲めるコーヒー」として期待以上の味でした。家でたくさんの量を作って、煮詰まらせずに美味しく飲みたいという昨今の在宅勤務事情にもマッチしています。

一般的なインスタントコーヒーと比べれば手間もコストもかかりますが、ハンドドリップのような(こだわりすぎた結果としての)気合は不要で手軽にドリップコーヒーを作れます。何より、食後のコーヒー一杯で幸せな気分に浸れるのは、ついぞインスタントコーヒーではたどり着けなかった領域で、手放し難い魅力があります。在宅勤務のコーヒー事情を改善したい人にはおすすめだと思います。

太田 亮三