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相続税の仕組みと生前対策を知ろう 帰省時に家族と話すべき贈与の基本
2024年12月26日 09:00
相続と聞いて「多額の相続税」をまず思い浮かべる人も少なくないでしょう。しかし、遺産の相続税の納税者は全体の1割以下と意外と少ないのです。相続税についての正しい知識は事前に身につけておきたいもの。そして、相続税を知ると「贈与」といった生前から行なう事前対策が重要だとわかります。贈与によって少しずつ財産を渡すことで、遺産額が減り相続税を軽減できるのです!
年末年始の実家への帰省は、家族と相続や贈与について話し合い、早めの対策を考えるうってつけの機会です。
この記事は2024年2月27日発売のインプレス刊『いちからわかる! 相続・贈与 2024年最新版』(五十嵐明彦 監修)の一部を編集・転載しています(編集部)
基礎控除を超えた時、遺産に相続税がかかる
相続税は、現金や土地・建物などすべての遺産総額から「基礎控除」を差し引いた金額に基づいて課税されます。
もし、遺産が基礎控除を上回っている場合、その額が多いほど支払う税金は高くなります。そのため、なるべく基礎控除内に収まるように、節税対策が欠かせません。
節税対策の基本は、相続税の対象となる「財産そのもの」を減らすこと。相続財産を減らす方法として代表的なのが「生前贈与」です。
暦年課税で毎年110万円まで非課税にできる!
相続税対策として活用される2つの代表的な制度があります。「暦年課税」と「相続時精算課税」です。
暦年課税は1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額に応じて課税される方式のことで、年間110万円の基礎控除が設けられています。
これを利用した節税対策が暦年贈与です。毎年110万円を超えた分のみに課税されるので、110万円以下の贈与ならば税金がかからず、申告の必要もありません。
また、暦年贈与で注意したいのは、相続開始前3年以内の贈与は相続財産になるという点です。例えば、過去10年間、毎年100万円ずつ贈与していた場合、贈与者が亡くなると、過去3年分(300万円)が相続財産として持ち戻されて相続税の対象となるのです。
なお、この持ち戻し期間は相続日が2027年以降、徐々に3年から7年へ拡大されているので注意が必要です。
暦年贈与を活用した賢い節税テクニック
暦年贈与を活用すれば、受贈者1人につき、年間110万円まで非課税になります。例えば、年に110万円ずつ、10年間かけて1,100万円を贈与しても、贈与税はかかりません。一括贈与した場合は特例税率で207万円の税金がかかりますから、上手に活用すれば絶大な節税効果があるということになります。
法定相続人以外に贈与した場合でも、暦年贈与は適用されるのも大きなメリットです。また、「相続時精算課税」を除き、ほかの控除や特例との併用ができる点も、節税効果を大きくしています。
さらに、もらう側には年間110万円という制限がありますが、贈与する側には金額の制限はありません。10人の相手に贈与すれば、年間1,100万円分が非課税になるわけです。
相続税対策のポイントは財産をなるべく減らしておくことですから、暦年贈与には非常に大きな節税効果があると言えます。
相続時精算課税なら最大2500万円までが非課税
相続時精算課税は、祖父母や父母(60歳以上)から子や孫(18歳以上)に贈与する場合、累計2,500万円までの生前贈与が非課税になる制度です。2024年からは、年間110万円までの基礎控除が追加されました。
例えば、年500万円の贈与を受けている場合、本来390万円に贈与税がかかります。しかし、相続時精算課税を利用すると、課税部分が累計2,500万円に達するまで非課税になります。ただし、相続が発生すると贈与税が免除されていた部分は、相続財産として持ち戻され相続税がかかることになります。
つまり、税金の納付を相続時まで先送りするような制度です。ただし、暦年贈与と比べると、7年以内の贈与であっても基礎控除110万円は生かされるため、うまく利用すれば節税になるでしょう。
なお、相続時精算課税により贈与した宅地については、「小規模宅地等の特例」が適用できなくなるため、注意が必要です。
相続時精算課税を活用した賢い節税テクニック
相続時精算課税を活用すれば、累計2,500万円までの生前贈与が非課税になります。ただし、贈与財産は相続発生時に相続財産に組み込まれ、相続税の対象になります。では、相続時精算課税を利用するメリットは何でしょうか。
一つは、高い贈与税を回避できる点にあります。例えば、2,500万円を一括贈与した場合、暦年贈与では税率45%、810.5万円の贈与税を支払う必要があります。しかし、相続時精算課税を活用すれば贈与税は0円となり、相続時の課税に先送りできるのです。なお、同じ2,500万円でも相続税なら仮に税率15%の場合、308.5万円となり、課税額も500万円ほど節税することができるのです。
また、相続時精算課税の大きなメリットは、贈与時の財産評価額を適用して相続税を計算できる点です。例えば、将来値上がりが予想される不動産や株式を贈与しておくと、支払う相続税を安く済ますことができ結果的に節税になります。
ムック本では基本から節税対策までわかりやすく解説
この記事では、贈与について基礎情報を掲載しました。ムック本では、他にもお得な節税テクニックを数多く解説。「相続」と「贈与」にテーマを大きく分けて、さらに「基本」と「節税対策」で章分けしているので、各制度に対する漠然とした不安を払拭できる基礎知識から、事前に対策しておきたいお得な節税テクニックまでわかりやすく学べます。「相続の手続き」という章で、実際に相続発生時の対応もバッチリです。
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・サイズ:A4変型判
・監修:五十嵐明彦
・内容
1章 相続の基本
2章 相続の節税対策
3章 相続の手続き
4章 贈与の基本
5章 贈与の節税対策
・監修プロフィール
五十嵐 明彦(いがらし あきひこ)
公認会計士・税理士・社会保険労務士
明治大学商学部3年在学時に公認会計士試験に合格。その後、監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)に勤務し、国内企業の監査に携わる。2001年には、明治大学特別招聘教授に。現在は、税理士法人タックス・アイズの代表社員として相続税などの資産税業務など税務業務を中心に幅広い仕事を行う。著書に『子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。