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年末年始に家族と話したい相続の基本 相続人の範囲・権利・分割方法
2024年12月25日 09:00
相続に直面した時、「自分は相続人?」「どのくらい遺産はもらえる?」「遺産はどうやって分割する?」という疑問は誰もが気になる話題。しっかりとした知識を事前に持ち合わせておくことで、事前に被相続人(財産を遺す人)と遺産の分け方について相談できたり、相続人同士の揉め事を避けられたりすることができるでしょう。さらには、事前の対策により相続税の負担を軽減できることも……。
年末年始は実家への帰省で、両親や子どもと顔を合わせる機会が多いシーズン。この機会に、相続や贈与についてじっくり話し合ってみませんか?
この記事は2024年2月27日発売のインプレス刊『いちからわかる! 相続・贈与 2024年最新版』(五十嵐明彦 監修)の一部を編集・転載しています(編集部)
相続できる人は法律で決まっている
相続では、財産を引き継ぐ人のことを「相続人」、財産を遺す故人のことを「被相続人」と呼びます。
相続できる人や範囲、順位については故人との関係に応じて民法で定められています。このように法で相続権を定められている人のことを「法定相続人」と呼びます。
しかしすべての法定相続人が実際に財産を相続できるわけではありません。配偶者および、優先順位において一番上位の人が相続人になることができます。つまり法定相続人のうち、実際に財産を取得できる人のことを「相続人」と呼ぶわけです。
故人との関係で相続人の優先順位がある
配偶者は別として、もっとも優先順位が高いのが直系卑属である子どもです。例えば父が亡くなった場合、母と子が相続人になります。
第2順位は直系尊属である、故人の親です。故人に子がいない場合にのみ、配偶者とともに相続人になることができます。第3順位は傍系血族の兄弟姉妹です。故人の子、親がいない場合に相続人になることができます。
法定相続分は個人との関係や人数で変わる
相続トラブルになりがちなのが、複数の相続人で遺産をどのように分割するかです。
それぞれの取得分の目安となるのが「法定相続分」です。民法で定められた相続人ごとの相続割合で、順位や組み合わせによって異なります。
例えば相続人が配偶者のみの場合、すべての遺産を配偶者が相続することになります。また配偶者と子の場合は、配偶者と子が2分の1ずつ相続します。子が複数の場合は、2分の1を人数分で等分することになります。
そのほか、配偶者のみで子がいない場合、親が健在であれば親が遺産の3分の1、亡くなっていれば兄弟姉妹が4分の1になります。
なお、被相続人の子が亡くなったり、相続の権利を失っていたりする(相続欠格、相続廃除)場合、相続権はその子、つまり孫に移ります。これを「代襲相続」と言います。代襲相続の場合でも、分割割合は本来の相続人と同じになります。
遺産の分割方法には大きく3つの方法がある
相続財産を相続人で公平に分けられればトラブルになることもありません。しかし、遺産の中には家や土地など分けられないものもあります。
実際、日本では親の遺産が預貯金と自宅のみ、というケースが少なくありません。国税庁のデータでは、相続財産に占める不動産の割合は42%にも上ることがわかっています。つまり家や土地の分割は、遺産分割協議の際の重要なポイント。これを巡って争議も起こりやすいので、対処法を知っておく必要があります。
家や土地のような物理的に分けられない財産を分割する方法は主に3つあります。
財産をそのまま相続するのが「現物分割」。故人の思い出などを残して引き継げますが、不公平になりやすく、相続人が互いに納得するのが難しい場合もあります。
「換価分割」は売却し、お金に換えて分割するやり方。価値がわかりやすく、公平に分配できます。ただし売却に時間がかかるほか、所得税や手数料がかかるため、受け取れる金額が少なくなります。
特定の相続人が財産を引き継ぎ、ほかの相続人には金銭で支払うやり方が「代償分割」です。上記2つの方法のいいとこ取りができますが、財産を引き継ぐ相続人にお金を支払える経済力があることが前提となります。
遺産の「共有」はトラブルの原因になりやすい!
分割せず共有するというやり方もあります。一見公平で、所得税もかからないため、この方法を選ぶ人も多くいます。
しかし共有では後々、問題になることも少なくありません。例えば急にお金が必要になり売却を考えても、共有者の同意がなければ売却することができません。また共有者が亡くなり子や孫に権利が移ると、共有者同士の関係が複雑になるため、よりトラブルを引き起こしやすくなります。
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・監修:五十嵐明彦
・内容
1章 相続の基本
2章 相続の節税対策
3章 相続の手続き
4章 贈与の基本
5章 贈与の節税対策
・監修プロフィール
五十嵐 明彦(いがらし あきひこ)
公認会計士・税理士・社会保険労務士
明治大学商学部3年在学時に公認会計士試験に合格。その後、監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)に勤務し、国内企業の監査に携わる。2001年には、明治大学特別招聘教授に。現在は、税理士法人タックス・アイズの代表社員として相続税などの資産税業務など税務業務を中心に幅広い仕事を行う。著書に『子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。