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電動モビリティのLime、首都高進入を防ぐジオフェンシングを開始
2025年4月11日 16:18
電動モビリティのシェアサービスを展開するLimeは、首都高速道路への誤進入を防ぐジオフェンシング制御の導入を国内で初めて開始したと発表した。あわせて、駐車違反対策としてBluetoothビーコンを東京都内50カ所に設置済みで、6月までに既存全ポートにビーコンを展開する予定。
ジオフェンシング技術は、GPSを用いて進入禁止エリアを仮想的に設定し、走行中の車両が対象エリアに入ると自動的に出力を制御するもの。制御は大きく3パターンに分かれ、「サービスエリア」では通常通りの走行が可能。「走行禁止エリア」では車両の出力が完全に停止し、ユーザーは手押しでしか進めない状態となる。急停止による転倒の危険はなく、モーターの出力を止めることで自然な減速が行なわれる。「減速エリア」では速度制限が自動的に適用され、エリアに応じて、たとえば時速6kmや15kmといった制御が可能となる。
走行禁止エリアでは、モーターの出力停止に加え、アラーム音による警告も行なわれる。ユーザーに視覚だけでなく聴覚的にも通知することで、より確実な注意喚起につなげる。記者会見で行なわれた走行デモでは、曲がり角を走行禁止エリアに指定。車両がエリアに入るとアラームが鳴り、直後に出力が停止。滑らかに減速し、停止する様子が確認できた。
なお、現行の技術では、歩道と車道の境界を数メートル単位で正確に判別することは難しい。そのため、Limeではゾーン単位で制御を行ない、走行禁止エリアでは出力を停止。手押しでの移動のみ可能にすることで、利用者の安全確保を図っている。
首都高の全入口に設置目指す
まずは、首都高速道路への誤進入のリスクが指摘されていた渋谷(上り)、池袋、新宿の料金所3カ所にジオフェンシングを導入。「走行禁止エリア」として指定することで、首都高速道路への進入を物理的に防ぎ、重大事故の未然防止を図る。
導入のきっかけとなったのは、2024年12月に発生した他社モビリティサービスのユーザーによる首都高への誤進入事案。社会的な関心が高まるなか、Limeでは警視庁や首都高速道路株式会社と連携し、2025年2月から渋谷(上り)および池袋の料金所に制御を導入した。その後、3月末にはLimeの利用者が新宿の料金所へ誤って進入する事案が発生。幸いにも時間帯は早朝で、有人料金所であったため、本線への進入前に止められ、事故には至らなかったという。これを受けてLimeは、即日で新宿料金所へのジオフェンシング導入を決定し、対応を完了させた。
同社の日本政府渉外責任者である井上祐輔氏は、「都市部の料金所は一般道や歩道と近接しており、ジオフェンシングの導入にはGPSの精度に起因する技術的課題がある」と説明。例えば、目黒料金所のように、一般道と高速入口が至近距離にあるケースでは、数メートルの誤差でも誤認識が起こりうるとして、慎重な検証が必要との認識を示した。そのうえで「重大事故につながる前に誤進入を未然に防ぐため、制御の精度や現地の構造を見極めながら、首都高の入り口にジオフェンシングを適用していきたい」と述べた。
現在、ジオフェンシング制御を導入しているのは、首都高速道路の渋谷(上り)、新宿、池袋の3カ所のほか、東京エリアは代々木公園、皇居周辺、新宿御苑。沖縄エリアは那覇市パレット久茂地。また、今後は渋谷センター街などについても精度を確認しながら、順次導入予定としている。さらに、「首都高の全ての料金所への展開を目指す。ただし、ビルの影響などでGPSが不安定なエリアでは慎重に検証を行ない、安全性を確認しながら順次対応していく」(井上氏)としている。
違法駐車対策にビーコンを活用
駐車対策としてビーコンも導入する。ビーコンをポートに設置し、ビーコンから3m以内でなければアプリで返却を完了できない仕組みとすることで、歩道や建物周辺への迷惑駐車を防止する。GPSによる位置検知とBluetooth信号の併用で、より高精度な制御を実現している。現在導入済みの50カ所に加え、2025年6月までに既存ポート全てへの展開を完了予定。今後新設されるポートにも順次導入していく。
Limeでは現在、東京都内を中心に1,300台の車両と約350カ所のポートを運用中。年内には2,000カ所まで拡大を目指す。