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富士山五合目までの新交通「富士トラム」 LRT断念 リニアと連携目指す

富士トラム(山梨県提供)

山梨県は18日、レール(鉄軌道)不要のゴムタイヤ式の新交通システム「(仮称)富士トラム」の導入に向け、準備を進めると発表した。「富士トラム」では、富士山の課題である五合目の来訪者コントロールのほか、富士山とリニア新駅「山梨県駅」を直結し、県内観光客誘致や生活向上につなげていく。

山梨県では、これまで次世代型路面電車(LRT)を使った「富士山登山鉄道構想」を提案しており、鉄軌道(レール)を前提としていたが、関連自治体からの反対などで断念。新たな提案としてレールが不要となるゴムタイヤ式の「富士トラム」を提案している。

富士トラム(山梨県提供)
車両はゴムタイヤ式(山梨県提供)

富士トラムでは、富士山 五合目の来訪者コントロールを主な目的としながら、鳴沢村から山中湖村に広がる6市町村の富士北麓エリア、富士山とリニア新駅「山梨県駅」を直結し、リニアの停車本数の増加を目指す。加えて、将来的に県内各地への二次交通網を構築し、地域の活性化などにつなげていく狙い。

さらに、東京まで25分のリニア新駅がハブとなることで、企業誘致や移住定住者の流入などで、「日本における山梨県のプレゼンスの向上」も見込んでいるという。

富士山五合目までの来訪者をコントロール
リニア接続も想定

山梨県では、富士トラムを「電車とバスの両方のメリットを備えたニューモビリティ」と表現。山梨県が推進するグリーン水素を動力源に採用し、環境負荷を軽減し、持続可能な交通網の構築を目指す。レールは存在しないが、磁気マーカーや白線による誘導方式を導入し「軌道」とすることで、軌道法が適用され、富士スバルラインへの一般車両の進入を規制し、来訪者コントロールが可能となる。

ゴムタイヤでレールなし(山梨県提供)
車両前面(山梨県提供)

この方式では、道路に鉄軌道を敷設する大規模な工事が不要となり、メンテナンスが軽微で、大幅なコストダウンを実現できる点も特徴としている。

山梨県では、2021年に、富士山の世界文化遺産としての価値向上を目指し、「富士山登山鉄道構想」を発表。富士スバルラインに鉄軌道を敷設し、LRTを運行させる構想を明かし、関連自治体等との話し合いを続けてきたが、反対も多かった。構想への反対意見としては、鉄軌道の敷設など富士スバルラインの大規模工事が必要、環境破壊が避けられない、建設費や災害復旧費のコスト面が過大といったもの。そのため、県では鉄軌道案を断念し、低コストで環境に配慮した「富士トラム」を提案することとした。

実現時期については、「住民や県民の理解が得られることが大前提。いまの段階でいつからやるとは言えない。様々な作業が残っている」(山梨県 長崎幸太郎知事)とした。今後、新たな富士トラム構想を元に調査を進め、運行主体などの議論に入っていく。