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アドビ、電線削除や生成拡張、動画生成 PhotoshopやPremiere新機能

Adobeは14日(米国時間)、「Adobe MAX 2025」を開催し、動画生成に対応したFireflyの「ビデオモデル」を発表したほか、PhotoshopやLightroom、Premiereなど、Creative Cloudの新機能などを多数発表した。全面的にAIを導入し、100以上の新機能を順次追加していく。

動画生成に対応「Adobe Firefly Video Model」

目を引く新機能が「Adobe Firefly Video Model」。14日から、Adobe Firefly webアプリケーションに新しい生成動画(ベータ版)モジュールを導入する。

独自の生成AIのAdobe Fireflyが新たに動画生成に対応し、テキストプロンプトを使用するだけで、新たなビデオクリップを作成したり、タイムライン上のギャップを埋めるためのBロール映像の作成が可能となる。動画によるクリエイティブのイメージを共有したり、既存の動画の足りない部分を“生成”して繋ぐといったことが可能となる。

「カメラコントロール」と呼ぶ新機能で、生成する動画のアスペクト比やフレームレート、アオリ気味に撮るなどの指定も可能。プロンプトだけでなく、こうした動画の特徴を指示するプルダウンメニューからも指示を行なえるため、長大なプロンプトは不要という。なお、現時点では英語のみの対応となる。

また、1枚の画像から動画を生成する機能も搭載。写真に対して、プロンプトの指示を加えると、炭酸水を注ぐ写真から動きを持った動画に変更したり、猫の写真から猫が歩き出す動画にするなど、写真をベースにストーリーや動きなどを指定して、すぐに動画を作り出せる。

2D/3Dのアニメーションや、テキストグラフィック、参照画像から生成するBロールなどの活用が可能としている。なお、Firefly Video Modelで生成した動画には、AIを活用した旨の「コンテンツクレデンシャル」が付与される。

FireflyのWebアプリケーションだけでなく、PremiereやPhotoshopなどのAdobeアプリケーションにも導入される。詳細は別記事で紹介する。

動画生成に対応したPremiere Pro

動画編集の「Adobe Premiere Pro」にも生成AIを統合。新たな生成AIの活用法として「Adobe Firefly Video Model」による「生成拡張」が導入される。

生成拡張は、Adobe Firefly生成AIを使用して、動画クリップの冒頭または末尾に動画フレームをシームレスに追加するもの。動画編集時に、音に合わせてトランジションしたいけれど、映像が1秒足りないといったケースがある。こうした際に、動画のシーンを“生成”してつながりを向上することなどに使える。動画は2秒、オーディオは10秒の拡張が可能で、無駄なカットを入れずに繋ぐ、といった使い方が可能になる。

生成拡張を使用した場合は、コンテンツクレデンシャルが付与され、Premiere ProとMedia Encoderからのエクスポートに含めることができる。

なお、生成拡張はβ版での提供となり、解像度1,920×1,080/1,280×720、8~30fps、8bit/SDR、モノラルもしくはステレオオーディオでの利用に制限される。

Premiere Proにはそのほかプロパティパネルが追加されるほか、ProRes書き出しの高速化、各カメラメーカーフォーマットの対応強化など、多くのアップデートが行なわれる。レビューツールのFrame.ioでは、カスタマイズなどを強化する。

Lightroomは「生成AI削除」に対応

Adobe Lightroomは、選択機能の強化とオブジェクト検出機能を向上。より簡単に、より正確な結果が得られる「生成AI削除」が正式版に搭載される。

新たに「クイックアクション(早期アクセス版)」を搭載。写真に合わせた編集を提案し、あとは細かい調整だけの状態にしてくれるため、ワークフローがスピードアップするという。

Freme.ioにおいては、キヤノン、ニコン、ライカが、Camera to Cloud エコシステムに参加。LightroomとFrame.ioが統合され、撮影から完成までの時間を短縮できるという。

「コンテンツクレデンシャル機能(早期アクセス版)」では、コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)の取り組みの一環として、電子署名とともに作者の名前、SNSのハンドル名、編集履歴情報をファイルに添付できるようになる。加えて、パフォーマンスの向上、HDRの追加サポート、スマートアルバムなど、様々なアップデートが導入される。

電線・人物を削除するPhotoshop新機能

Adobe Photoshopでは、不要なものを検出する機能を強化した。例えば、「削除ツールで不要な箇所を削除」により、旅行写真の背景に写り込んだ観光客や、風景写真の邪魔になる電線などを自動的に選択、削除。さらにコンテンツを自動生成して背景を置き換える。

電線を削除
人物を自動選択・削除

また、Adobe Fireflyによる生成AI機能も強化。最新のAdobe Firefly Image Modelを搭載した「生成塗りつぶし」と「生成拡張」により、照明・構図・カラーのコントロールが詳細に行なえるようになり、よりリアルな画像生成が行なえるほか、新しい「類似を生成」機能により、より多くの生成画像のバリエーションから好きな画像を選べるようになる。

Adobe Photoshop(ベータ)では、「生成ワークスペース」を搭載。テキストプロンプトを使用して画像セットをすばやく生成し、お気に入りを選択したり、テキストプロンプトや画像を検索して再利用、あるいは前のセットの生成中に新しいセットの生成を開始したりすることができる。

そのほか、HDR用32bitワークフローや、早期アクセス版としてACR(Adobe Camera Raw)の「生成拡張」、「Adobe Adaptive」対応などが行なわれる。

また、Adobe Substance 3D Viewer(ベータ)は、Photoshopに統合された環境で3Dファイルの表示と編集を行なえる。3Dファイルをスマートオブジェクトとして追加することで、Photoshopのデザイン上で3Dファイルを簡単に扱える。これらの機能は、Photoshop(ベータ)アプリすぐに利用可能。

Illustratorに新テキストエンジン

Adobe Illustratorでは、より高速でパワフルな機能を提供するため、ベクターデザインのコアワークフローを強化。

新機能の「パス上オブジェクト」は、デザイン上のあらゆる種類のパスに沿ってオブジェクトを隣接させたり、並べ替えたり、移動させたりできる。

強化された「画像トレース」機能では、手書きの画像やピクセル画像を、より正確な画像トレースにより、少ないアンカーポイントで編集がしやすいベクターに変換できる。パスの数が少なくよりメンテナンス性が高く、データ容量の少ない形でトレースが行なえる。

文字組みについては、新しいテキストエンジンを搭載。旧来エンジンは20年間使っていたが、2025年版でアップデートしながら、機能や利用しやすさを向上。一方、旧来エンジンで作成した文字組が崩れる場合もあるため、比較しながら調整できる機能を備えている。Adobe Fireflyも搭載する。

また、「モックアップ」機能が正式リリース。実際に撮影したオブジェクトの写真の上にアートワークを配置し、ブランドやアパレルデザイン用のモックアップを作成できる。オブジェクトの曲線やエッジにフィットするように、Illustratorが自動的にアートワークの形状を調整する

InDesignにまでAI機能

DTPソフトウェアのAdobe InDesignも新しい生成AI機能を搭載。Fireflyによる「生成拡張」や「テキストから画像生成」などの新しい生成AI機能が提供され、レイアウトデザイン内でAI画像編集が行なえるようになる。

また、数式の組版に対応。数式をデザインに追加できるMathMLが導入される。加えて、InDesignドキュメントをAdobe Expressに書き出せるようになるため、全体的なレイアウトデザインを維持しながら、チームメンバーが細かい変更を加えられるようになる。

3Dコンテンツ制作のAdobe Project Neo

Adobe Project Neo (ベータ)もβ版をWebアプリとして提供する。PhotoshopやIllustratorなどの2Dデザインアプリをよく使うデザイナー向けの、ブラウザ上での3Dコンテンツ制作ツールとなる。

使い慣れたインターフェイスとツールを使い、3Dシェイプやアートワークの作成と編集をブラウザだけで完結できる。また、デザインの無限のバリエーションを非破壊で素早く編集および微調整することが可能。Adobe Project Neoで作成したアートワークはベクターとしてAdobe Illustratorで開くことができるため、アートワークの編集を継続し、デザイン構成に追加することも可能。

デザインを共有して共同作業を行ないたい場合は、アートワークへのリンクを共有し、他のチームメンバーを招待してブラウザ上で共同でデザイン作業を行うことができる。さらに、履歴スライダーを使用してアートワークが作成された経過を確認することも可能。

After EffectsやAdobe Expressとのデータ連携も予定している。

画像のアニメーション化や連携強化のAdobe Express

SNS投稿から、動画、チラシまで、さまざまなコンテンツを作成できる「Adobe Express」が強化。InDesignやLightroomのファイル読み込みに対応する。

「すべてをアニメート」は、ワンクリックで、テキストや画像など、デザイン内のすべての要素をアニメーション化。AIがコンテンツ内の見出しやボタンを検出し、アニメーションで強調する。

また、複数ページの文書やパンフレット、チラシなどのテキストボックスを並べ替えたり、複数のテキストボックスを連結する「流し込みテキスト」やPowerPointファイルの編集に対応する。

ブランドのコントロールにも対応。クリックするだけで写真やイラストのカラーを変更して「ブランド」に沿った色味に変更可能。また、変更不可な要素を含むブランドテンプレートを作成し、チームがブランドに沿った制作を確実に実行できるようにする。SNS投稿のカレンダーを共有し、公開前の投稿を社内のチームやクライアントと確認する機能も追加される。