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「超知性は10年以内」 孫正義「AIの王道」を語る SoftBank World 2024

ソフトバンクグループ孫正義会長

ソフトバンクグループは3日、法人を中心にしたプライベートイベント「SoftBank World 2024」を開催し、孫正義会長が講演した。孫氏は、AGI(汎用人工知能)は2~3年で実現し、1万倍の超知性(ASI)が10年以内に訪れると訴えた。

超知性は10年以内に実現 AIの「王道」を行く

孫氏は、「超知性は10年以内に実現する。このことについて話をしたい」と切り出し、AIの進化とソフトバンクグループの取り組みについて語った。

人間相当の思考回路をもち、知的作業の理解や学習、実行ができる人工知能「AGI(Artificial general intelligence/汎用人工知能)」については、2~3年で達成を見込む。AGIではレベル2が博士号を複数持つ知性、レベル3ではエージェントとなり、レベル4ではAGI自体が発明を行ない、レベル5ではAIが組織的な活動を開始するとされている。そのレベル5を超える世界として、ASI((Artificial super intelligence/超知性)が10年以内に来るという。

「Superの定義は人それぞれ」としながら、孫氏は「私は1万倍の超知能を超知性と定義した。人間の1万倍の叡智のASIが、10年以内に来る」とした。

孫氏は、人間とAIを比べる中で、「人類のシナプスは100兆個。これは20万年変わっていないし、100年後も1万年後も変わらない。ただ、シナプスに相当する生成AIのパラメーターはすごい勢いで伸びており、大きなモデルでも概ね数兆個になっている」と言及。パラメーター数を増やしていくことは今後も重要だとアピールする。

一方、最近は日本語に特化したLLMや、小規模でエッジ側で動作するモデルなど、AIでも多種多様なアプローチが増えている。孫氏はここに疑問の声を上げる。

「パラメーターの数を減らして、効率的にAIを使う。エネルギーを抑えてAIを使う。そした努力をしている人も多い。ただ、それだけはない。僕には『GPUが無い、電気が無い、予算が足りない』と言っているように聞こえる。『日本の道は狭いから、田んぼの畦道を通れる二輪車を作る。モータリゼーションの時代が来ても日本は大丈夫』と言っているようなもの。私は王道のやりかた、パラメーターを数十兆、数百兆と増やしていくのが、叡智の進化の本道だと思っている」

孫氏は、「強くて、早くて、賢い。企業は競争しており、一番であることに価値がある」とし、パラメーター数を増やしていくアプローチはASIへの近道とする。

AIは速さから「思考」の時代に

また、9月にOpenAIが発表した最新モデル「o1」により、AIの進化が「思考(Reasoning)」に入ってきたという。

ChatGPTなどの「GPT」はプリトレーニング、つまり事前学習して理解する「知識」を軸にしていた。孫氏は、「理解しているが、考えてはいなかった」と振り返り、「これからのメインテーマは『考える』。ここに圧倒的な進化が起きている」と説明。難解問題の正答率やプログラミングにおいて、すでに人間を大きく超える圧倒的な性能を持っていると紹介した。

孫氏は「o1により『速さ』から『深さ』のステージに来た」と言及。「これまでは、速さが重要だった。データセンターを作るにも、人口密集地域でレイテンシーが重要だった。検索やChatGPTでも速さが必要だった。しかし、o1は『深さ』が重要になっている」とする。

孫氏が今朝o1に投げかけた質問は「1,000万円持っている。これを1億円にして返してほしい。その戦略とメカニズムを考える」というもの。その回答に75秒かかり、「止まっているか心配だったが、考えているプロセスも見える。待っているのが楽しくなる」とする。

一方、これが機能し、皆が使い始めれば差別化は難しい。孫氏は「だから早いもの勝ち。本物のゴールドラッシュ。人より早く願望して、先に申し込んで成果を得る。知のゴールドラッシュが来た」と説明。一例として、EVのバッテリーを2倍に伸ばす考え方、などをあげ、AIが企業の“競争”や問題解決に活用できるとした。「嬉しいのは速さではなく深さだ」(孫氏)。

数千のAIエージェントが「思考」する時代には、人間が発明するのではなく、人間がアイデアを出し、「発明」はAIが担うことになる。「適切なお題を出して、AIが考え、その成果を真っ先に使う。それが知のゴールドラッシュ。AIは知る→理解する→考える→発明するに至った」とする。

AtoAとArmの時代 超知性と人類の幸せ

また、人々の暮らしにおいては「パーソナルエージェント」が2~3年で拡大すると予測。例えば子どもが熱を出した場合、人が看病している間にエージェントが症状を調べ、病院を探したり、必要に応じて対応してくれる。普段から情報を持っているため、持病や病歴なども把握し、適切に振る舞えるとする。

こうした事例が、投資や教育、EC、予約など様々な領域に広がるという。

加えて、エージェントがやり取りする「相手」もエージェントになる。BtoB(ビジネスtoビジネス)、BtoC(ビジネスto消費者)ではなく、AtoA(エージェントtoエージェント)となり、寝ている間に週末のランチの日程調整を行なったり、仕事のやり取りを進めたり、予約の受け答えを行なう。人のエージェントだけでなく、冷蔵庫、エアコン、クルマのエージェントも存在。人の帰りにあわせて、お風呂の蛇口のエージェントが動作するといった活用も見込めるとする

孫氏は、「IoTではなく、Agent of Things(AIoT)の世界が来る」とし、「(ソフトバンクグループ傘下の)Armは年間300億個のチップを出荷している。世界人口に対して、平均4個のチップが出荷され、これにエージェントが入っていく。Armの未来はAgent of Thingsになっていく。これを聞くと、Armの株を買おうと思いませんか?(笑)」とソフトバンクグループにおける“意味”も強調した。

パーソナルエージェントでは、ライフログや感情エンジンで、人々の気持ちを把握。長期記憶により人や内容を理解して、アドバイスを行なうようにする。孫氏は、「最終的にはパーソナルエージェントが自己意識を持つ」と説明。「エージェントではなくメンターになるかもしれない」とした。

AIは人工知能で終わらせるのではなく、人口知性、超知性まで進化させると、「思いやりや慈しみ、優しさなど、柔らかい関係性を結べる。人類の幸せを願う超知性は実現できる」と説明する。

孫氏は、「AIの最大のゴールは人々の幸せ。人間の1万倍の人工知能を恐れる必要はない。彼らは我々を慈しんで、調和してくれる。この超知性の世界は10年以内に来る。一緒に人類の幸せのためがんばりましょう」と訴えた。