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世界GDPの1%を担うStripe、日本の「分割払い」に対応
2024年7月19日 09:00
ネット決済インフラを展開するStripeは18日、日本において年次カンファレンス「Stripe Tour Tokyo 2024」を開催し、決済システムのオープン化や、「本人確認」、カード分割払い対応などの新機能を発表した。
日本市場向けに発表されたのは、本人確認機能の「Stripe Identity」、「Mastercardネットワークへの直接接続開始」、「クレジットカードの分割払い対応」など。
本人確認「Stripe Identity」を開始
Stripe Identityは、国内外のIDによる本人確認を簡単に実施できる機能で、日本で18日から開始した。オンラインにおける不正対策強化や、年齢制限の実現のための本人確認をStripeのUI上で行なえる。
マーケットプレイスや、EC、ソーシャルメディアなどのオンラインビジネスでは、年齢制限や本人確認(KYC)のためのユーザーの身元確認が重要となる。日本における2023年のクレジットカード不正利用は540億円に拡大しており、ビジネス上の不正対策の点でも本人確認が求められている。
そのため、Stripe上で本人確認を実現可能とするもので、日本の対象書類は、マイナンバーカードと運転免許証、日本のパスポート、在留カードとなる。
写真付き本人確認書類とカメラの自撮りを活用して、ユーザーの身元を確認。AIを活用し、盗まれた身分証明書を使った不正を阻止。日本の公的身分証のほか、海外110カ国以上の国・地域の政府発行書類に対応するため、インバウンドや海外在住顧客の本人確認もスムーズに行なえるという。
Stripe Identityの導入は日本が3カ国目。月額費用なく従量課金で導入可能で、費用は、Stripe導入企業が本人確認する際に300円/回となる。
なお、マイナンバーカードのICチップを使った公的個人認証サービス(JPKI)には対応しない。現在、JPKIが活用されるシーンは、金融・行政サービスなどで犯収法(犯罪収益移転防止法)対応が求められる業種であり、Stripe Identityはそれ以外のECやコミュニティなどのサービスでの活用を想定しているという。不正対策での導入のほか、Discordでのコミュニティ運営などに活用する例が増えており、「イメージとしてはXのチェックマークに近い」(ストライプジャパン ダニエル・ヘフェルナン代表取締役)という。
JPKIには対応予定はないが、写真撮影ではなく、マイナンバーカードをタッチするなどUIの改善は、「利便性の観点で検討していきたい」とする。同様にスマートフォンへのマイナンバーカード機能搭載への対応も検討課題とした。
Stripe Identityのもうひとつのメリットとしては、Stripeを導入している企業で、本人確認書類の情報などを自社で管理する必要がなく、情報漏洩リスクを低減できる点もあるという。
Mastercardネットワークに直接接続
Mastercardを使った決済がより早く安全に実施できるようになり、Mastercardの新機能がグローバルで提供された場合も日本で素早く利用できるようになるという。
直接接続により、オーソリ成功率と不正発生時のチャージバック(不審請求)成功率の大きな向上が見込めるほか、決済体験の向上や「わかりやすい明細表記」が可能になる。'23年12月からVisaネットワーク直接接続に対応したが、大きな成果があったとのこと。同様の効果をMastercardにおいても見込んでいる。
これにより、Visa、American Express、Mastercardの3大ネットワーク対応となるが、日本で3つのネットワークに対応するのはStripeが初という。
日本独自の「分割払い」に対応
支払手段として、新たにクレジットカードの「分割払い」に対応する。
クレジットカードの使われ方は国によって異なっており、日本の「分割払い」は独自に進化している。Strpieでは一般的な分割払いのユースケースをカバーし、「分割払い」、「リボ払い」、「ボーナス払い」の3つの支払い方法に対応する。利用は無料で、大きな導入作業も発生しない。
支払回数を指定できるため、ユーザーは大きな買い物にカードを使えるようになり、高額商品の購入に繋げられる。
ストライプジャパン代表取締役のダニエル・ヘフェルナン氏によれば、現在の「分割払い」は、多くの面で事業者(加盟店)を悩ませる課題があり、特に2回払いとボーナス払いは事業者の悩みとなっているという。2回払いは清算が2回に分けられるため、事業者のキャッシュフローに悪影響がある。ボーナス払いはさらに厳しく、ボーナス月まで清算できず、導入者の負担が高い。
今回、Strpieが導入する分割払いは、通常の一括払いと同じく「4営業日で入金」される。そのためキャッシュフローへの悪影響がなく、導入できるという。この仕組みの詳細は明かしていないが、「ユーザービリティを大事にしての判断」としている。
「リボ払い」は、支払時にリボ払いが選択可能となる。カード会社は、支払い後に「一括」→「リボ」に切り替える「あとリボ」に力をいれているが、これはカード会社側のサービスとなるため、Stripeとは関係しない。
世界のGDPの1%がStripeに
AmazonやGoogle、Slackなどの大手テック企業やOpenAIやAnthropicなどのAI企業も多数導入するなど、ネット決済のインフラとなっているStripe。2023年の決済額は1兆ドルを超え、世界のGDPの1%を占めているという。
今後も決済を軸に、ソフトウェア定義のフィナンシャルサービスとして強化。決済をコアとしながら、事業のグローバル展開や越境、レポート・分析、オペレーション自動化、サブスク、不正利用対策などの周辺ソリューションを強化し、導入企業のDXを支援していくとする。
日本国内では、2023年にStripe上での国内決済額が前年比55%以上増加し、越境決済額も65%以上増加。国内企業の約4社に1社が多国間での取引を開始している。
Stripe Tour Tokyo 2024では、Stripeの新機能を多数発表したほか、決済プラットフォームのオープンエコシステム化を表明した。
Stripeの中核である決済プラットフォームをオープンエコシステムとして利用可能にするもの。Vault & Forward APIにより、ユーザー企業はStripeだけでなく、複数の決済ネットワークや決済代行会社と接続した「マルチプロセッシング」が可能になる。
企業の事情などで、Stripe以外の決済サービスプロバイダーが導入されている場合でも、Stripeによる決済サービスを提供できる。例えば、グローバルで共通のセキュリティ対応の実現や、フラッシュセールのときにはStripeを導入して負荷分散するなどの使い方が可能となるという。
Stripeで禁止されている取引などを一方の決済サービスで処理するといった使い方も可能。将来的にはレポートをまとめて見られるようにするなど、機能開発を進めていく計画。18日時点ではGMOペイメントゲートウェイが対応している。