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ソフトバンクG、医療+AIのテンパスと合弁 孫会長「AIは悲しみを減らす」

ソフトバンクグループ(SBG)は、AIと精密医療の米Tempus AIとの合弁契約を締結し、ジョイントベンチャー「SB TEMPUS(エスビーテンパス)株式会社」を設立する。SBGとTempusは、それぞれ150億円を出資し、Tempusが米国で蓄積した知見や技術を応用し、個別化医療を支援するサービスを日本で提供する。

2015年に設立されたTempusは、ヘルスケア領域において、AIを応用した個別化医療を推進している。特にがん治療に強みを持ち、Tempusは米国の約50%の腫瘍医と連携し、業界最大規模の非識別化された分子、臨床、画像データのライブラリを保有しているという。

TempusのAI対応プラットフォームでは、診断をよりインテリジェントにし、医療提供者がデータに基づいた意思決定を行なう。さらに、製薬会社がより効果的な治療法を開発することを支援する。収益化は主に製薬会社へのデータ提供を軸にしている。こうした仕組みを日本でも展開するため、SB TEMPUSを設立し、日本に展開する。

日本におけるがん治療は、外科治療や放射線治療、薬物療法などの科学的な根拠に基づいた「標準治療」から開始されている。一方、分子、臨床、病理、医療画像など、現在の医療現場で分断されているデータを収集・解析することで、臨床研究や創薬研究の進展につながり、患者一人ひとりに適した治療方針の提案ができるようになるとソフトバンクグループでは説明。副作用の軽減や薬剤の有効性向上など、「個別化医療」が行なえるようになるとする。

SB TEMPUSは、Tempusが米国での事業を通じて蓄積した知見や技術を患者識別データにはアクセスせずに応用し、遺伝子検査、医療データの収集・解析、AIによる治療提案といった個別化医療を支援するサービスを日本国内で提供していく。がんゲノム医療の中核を担う拠点病院をはじめ、国内の病院や医療施設、製薬会社、バイオベンチャー、医療機器会社、がん保険会社、検査会社などと協力関係を構築し、より良い診断と治療の提供を支援するという。

Tempusでは770万件のがん患者レコード数と2,000以上の提携病院を持ち、画像、病理、DNA/RANなどの多くのデータセットを持つ。こうしたデータを統合的に管理し、AIを活用して、患者にあわせた治療レコメンドや臨床試験情報の提供、解析ツールによる治療効果や予後予測などのインサイト「Tempus LENS」などの機能を提供する。

米国では、遺伝子検査はがん検査の最も最初のプロセスに位置するが、日本では最後にしか受けられず、日本における遺伝子検査は米国の1/30。SBGの孫正義会長は、米国並みの水準に引き上げるべきと提案した。

発表会中には、がん治療に取り組む多くの医師らが参加し、パネルディスカッションを実施。遺伝子検査数については、非常に積極的な医師もいれば、医療体制や保険制度との兼ね合いで段階的な導入が望ましいとする声も聞かれた。ただし、増やしていくべきという基本的な方向性では概ね一致しているようだった。

SBGの孫正義会長は、TempusとAIの活用について強調。この4年間でAIの進化は1,000倍で、GPT-4は米国の医師国家試験を通過できるとし、「次の4年で1,000倍、次の4年で1,000倍、まあざっくり1万倍の叡智の世界がくる」と宣言。「『AGI(汎用人工知能)やASI(超知能)は本当に役に立つのか?』などと言われるが、少なくとも、がん、心臓病などから命を救い、絶望して亡くなる人、その家族の悲しみを減らすことができる。確実に有益。これは使わなければ損だ」と強調した。