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NTT、利き手による器用さをスマホで比較できる技術
2024年6月17日 14:12
NTTは、スマートフォンを回転させることで手足の器用さを定量的に測る手法を開発した。成長・加齢・トレーニングに伴う器用さの変化を見える化し、運動能力向上に貢献する。
スマホを手に持つ、もしくは足に装着し、15秒ぐるぐると回すことで、短時間の繰り返し運動の「ばらつき」を定量的に評価し、「器用さ」の度合いを見える化する手法。特殊な器具を使わず、簡単に器用さを見える化でき、スポーツ種別に則したトレーニング効果や、運動リハビリによる回復過程の「見える化」が期待される。
今回開発したのは、スマホを回転させる運動をした際の、加速度軌道のばらつき量を定量化するアルゴリズム。研究によると、右利きの人の両手両足の加速度軌道の一例では、手足ともに左よりも右のほうが軌道のばらつきが少ないように見えるという結果が示された。開発したアルゴリズムで軌道を解析することにより、その「ばらつき度」を定量化できる。
4歳から88歳までの総計608名から得られたデータを解析し、手足の利き側・非利き側の「ばらつき度」を示したグラフからは、手足ともに利き側・非利き側で、ばらつき度は成長とともに減少し、その後一定となり、加齢によって増大することが明らかになった。また、手足ともに利き側のほうが非利き側よりもばらつき度が小さいことがわかった。
また、左利きで右手を使うように矯正された人は、左手と右手両方ともばらつき度が少ないことが判明。右手を使うように矯正トレーニングを受けた場合には、右手のばらつき度が減少するだけでなく、左手のばらつき度は増えていない(器用さが低下しない)ということも明らかになった。
同様に足のばらつき度も、手が右利きの人は、右足の方がばらつき度が少なく、足も右利きなのに対して、手が左利きの人は、左足と右足のばらつき度に差がなかった。さらに、右手を使うように矯正された人は、通常は足を使う運動の矯正はされないが、左足より右足のばらつき度が小さくなっていた。
矯正という利き手を変えるトレーニングは、左手と右手の器用さ度合いの差を変化させるだけでなく、足の器用さ度合いの左右差にまで影響を及ぼすことが今回の実験で明らかなったという。
今後は実験参加者を増やし、より信頼性が高い知見を得ていくとともに、競技等による手足の器用さ度合いの違いなどを明らかにしていく。器用さの向上が容易に可視化できるため、スポーツジム、部活動、リハビリ施設などスポーツ分野や医療介護分野で、個人の器用さのモニタリングや評価などに活用することが期待される。また、運動機能と脳情報処理の関係を探るツールとしての展開も目指す。