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沖縄に大テーマパーク「ジャングリア」 やんばるの大自然の上空を飛ぶ
2023年11月27日 20:14
株式会社刀とジャパンエンターテイメントは、沖縄北部テーマパークプロジェクトの名称を「JUNGLIA(ジャングリア)」に決定した。2025年の開業を目指す。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの経営を立て直しを主導し、数々のテーマパークを手掛けてきた森岡毅氏が、刀創業以来取り組んできたプロジェクト。名称のほか、コンセプトを「Power Vacance!!(パワーバカンス)」とすること、およびロゴマークを発表した。
場所は沖縄県北部で、世界自然遺産に登録されている「やんばる」の森があるエリア。JUNGLIAは、ゴルフ場跡地の60haの土地に建設される。そのため、森を切り崩しての建設は行なわれていない。60haという広さは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)よりも一回り大きい規模感だという。
「都会にはない興奮と贅沢のテーマパーク」とし、地域の特徴である大森林、圧倒的な大自然を生かした、鉄とコンクリートの世界ではないアトラクションを計画。本格・本物クオリティの体験、やんばるだからこそ得られる究極の興奮と贅沢を提供するとしている。
刀 代表取締役 CEO 森岡毅氏は、「東京ディズニーランドやUSJ、ハウステンボスと同じようなテーマパークを作っても、わざわざ沖縄まで足を運ぶ必要はない。ジェットコースターに乗りたいのであれば、富士急ハイランドに素晴らしいものがある。JUNGLIAでは、沖縄ならではの、ここでしかできない体験をつくる」と説明した。
具体的には、パークの入口ではやんばるの生命力を象徴する巨大樹が出迎える。そこから、JUNGLIAに足を踏み入れて、ジャングルの中を進んでいく。
パーク内には数十のアトラクションを用意。その1つである気球では、広大なジャングルやエメラルドグリーンの海などの大自然を360度で体感できる遊覧体験を提供する。
大型の装甲車に乗り込んで、本物のジャングルに冒険に出るサファリライドも用意。サファリに出かけて肉食恐竜に遭遇し、必死になって逃げるという体験を、VRの世界ではなく本物の、生身の体験として感じられるとしている。
そのほか、ジャングルの絶景の上の大空を飛ぶアトラクションに仕立てたジップラインも計画している。
アトラクション以外の重要な要素として、都会の喧騒からは全く無縁で、大自然を独り占めするかのような体験を提供。そのうちの1つとして、広大なジャングルを眺めることができるインフィニティスパを用意する。
パークの中にはこういった、贅沢感、優雅な時間を過ごすための数々のリゾート体験を用意。これらを支えているのが本格クオリティであり、「ジャングルの美しさ、エネルギーを体感し、その世界に思いっきり、心ゆくままに浸っていただくための投資を惜しんでいない」(刀 エグゼクティブ・ディレクター マーケティング/ジャパンエンターテイメント CMO 森崎菜穂美氏)という。
この点は建築物についても同じで、例えば展望デッキは、JUNGLIAにある素晴らしい絶景を1番いい形で体験できる設計とアートディレクションに徹底的にこだわっている。
展望デッキは起伏のある地形を生かした設計となっており、パークに到着し、ジャングルの道を歩いていると、気づけば見晴らしのいい場所にたどり着くという体験を得られる。デッキの下には、大絶景をパノラマで楽しみながら食事ができるレストランを用意する。
「今回紹介したのはほんの一部。超興奮の体験に贅沢感が加わることによって、開放感が人間の一番深いところにある本能を貫いて、とっても気持ちいい感情になり、人生最高に心が高ぶる。これこそが、パワーバカンス」(森崎氏)と説明した。
また、JUNGLIAに隣接する場所には同規模の未開拓の敷地を残しており、将来拡張することも計画されている。なお、2月にはJUNGLIAの起工式が執り行なわれた。また、開業は2025年の夏を目指しているが、あくまで理想とする目標であり、決定はしていない。
沖縄にテーマパークをつくる意味
森岡氏はUSJのマーケティング担当として経営再建時に携わっており、USJ時代に沖縄テーマパークの構想を断念した経験もある。森岡氏はこれを諦められず、自身が立ち上げた刀で再び着手して実現するのがJUNGLIAだ。
沖縄にJUNGLIAをつくる目的の1つとして、日本の観光産業の発展がある。森岡氏は、日本がこれからも豊かな社会であり続けるためには食い扶持となる大きな新しい産業構造が必要であり、観光業はその1つであると考えている。
日本には文化、ホスピタリティに優れ、また沖縄北部には世界自然遺産に登録された大森林がある。沖縄のポテンシャルを最大限活用し、多くの観光客を集めることがJUNGLIAの狙いとなる。沖縄の可能性については、計画的、戦略的に投資・開発されて観光の島となったハワイを引き合いに出し、「ハワイと比べても沖縄にはもっと伸びしろがあり、日本人はもっと沖縄に投資しなければならない」と説明した。
ただし、開業時のメインのターゲットはインバウンドではなく日本人観光客。その理由は、外国人観光客が日本に“海外旅行”で訪れた際に、日本に到着してから沖縄行きを決めるケースはほとんどなく、旅行プランの動線の中に沖縄が含まれる必要があるため。海外旅行の行先として日本が選ばれ、さらにその中で沖縄県が選ばれるよう、コミュニケーションを強化する必要がある。
まずは日本全国から沖縄を訪れる人を増やすこと、さらに現在観光が集中している沖縄県南部ではなく北部に行く人を増やすことを目標とし、日本人の集客を図りながらインバウンド動線を構想していく。
刀とともにJUNGLIAの開発に携わるジャパンエンターテイメントは刀が筆頭株主で、2018年6月に設立された会社。「沖縄から日本の“未来”をつくる」をミッションとしている。JUNGLIAについては、世界への多拠点展開を見据えている。
世界への多拠点展開の取り組みの1つとして、「『地域の価値』を『消費者の価値』に変える」があると、ジャパンエンターテイメント 代表取締役 CEO 加藤健史氏は説明。多拠点展開には消費者が訪れたいと思う目的地を作ることが必要不可欠であり、その土地に根差したユニークな価値を消費者の価値に転換する構造、ノウハウを構築する必要がある。JUNGLIAのブランドを使った、地域の魅力を消費者価値に変えるノウハウの構築を目指す。
取り組みの2つ目として「持続可能なビジネスモデルの構築」がある。テーマパークのビジネスモデルの特徴として「経済波及効果が高い」「雇用創出力が高い」「人材育成の拠点となる能力が高い」の3つがあるとしつつ、周辺の交通インフラや地域との連携が重要と説明。JUNGLIAにおいては、沖縄県や名護市、今帰仁村(なきじんそん)と連携協定を締結しているほか、地元投資型の「SCOM沖縄テーマパーク投資ファンド」を組成している。ファンドは、JUNGLIAが生み出す価値を地元の人と共有するため、事業が生み出す利益を分配する仕組みを作った。
人材育成については、名護市にある名桜大学と産学連携に関する包括協定を締結。JUNGLIAを教育、実践、研究の場として活用する取り組みについて議論を進める。また、県内外問わず、大学や専門学校とも連携し、インターンシップやアルバイトを通して学べる、人材育成の場として活用できるテーマパークとなることを目指す。こういった取り組みを通して、観光人材の不足という喫緊の課題の解決にも繋げたいとしている。
なお、JUNGLIAは約700億円の資金調達を実現している。多拠点展開を見据えるうえで、1千億円から数千億円という規模ではない点も重要だと森岡氏は説明。1千億円以上の規模のテーマパークを建設して回収できるエリアは、全世界に数十カ所しかないという。1千億円以下の規模であれば、回収が見込めるエリアも300~400カ所となり、このパークモデルを展開できる可能性が出るとしている。