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新幹線が金属バットに JR東海×ミズノ、再生アルミで共同開発
2023年8月1日 19:15
JR東海、ジェイアール東海商事、ミズノは、東海道新幹線の車両に使用していたアルミをリサイクルした、少年軟式用の金属バットを共同開発し、10月14日に発売する。価格は14,300円。8月1日から予約開始。販売はミズノ直営店、ミズノ公式オンラインショップ。販売数は1,400本予定。
ラインアップは「N700KONG」「Dr.YELLOW KONG」の2種で、カラーはシルバー×ブルー、ホワイト×ブルー、イエローの計3色。それぞれ、新幹線やドクターイエローをイメージしたデザインを採用している。
シルバー×ブルーは、新幹線色(ホワイト)と金属バット色(シルバー)への変化をイメージし、新幹線から生まれ変わったことを表現。ホワイト×ブルーは、白と青の新幹線カラーを忠実に再現し、またバットをそのまま新幹線にしたような三面へのプリントを施している。N700KONGのロゴには、新幹線シルエットが施されている。
Dr.YELLOW KONGは、名称通りドクターイエローをイメージしたデザイン。カラーを忠実に再現するとともに、三面へのプリントを施している。色味についてはミズノが担当しているが、JR東海側と何度もやり取りをしながら承認を得て、実現しているという。
メインのターゲットは小学低学年層で、子どもが使用しやすい長さ、質量とし、初めて使うバットとしても安心感が高い仕上がりとしている。展開サイズは74cm/440g、76cm/450g、78cm/460g。東海道新幹線N700系の再生アルミから製造されたドッグタグ付属。
バットの素材には、東海道新幹線N700系(一部700系)車両をリサイクルした「東海道新幹線再生アルミ」を活用。バットには危険な壊れ方をしないようにするという性能が求められるため、再生材料を使用しながら通常のバット素材と同等の耐久性を実現するのはこれまで難しかったという。今回のバットでは、東海道新幹線再生アルミをバットに適した材料に成分調整することで、通常のバットと同等の耐久性と性能を実現した。
具体的には、従来は付着物の除去技術が煩雑で、手間がかかることが課題となっていた。今回の再生アルミでは、JR東海グループの東京ステーション開発が、新幹線車両に使用されていたアルミから不純物を除去し、高純度のアルミ合金のみを抽出する新たなアルミのリサイクル技術を開発し、特許を取得。ジェイアール東海商事が再生アルミの製造・販売と用途開拓を手掛け、その1つとしてミズノと共同でバットを開発した。
成形の過程は、新幹線車両に使用されていたアルミの破砕および付着物除去を行なう。その後、溶解、精製し、純度の高いアルミ合金のみを抽出。再生アルミ合金ビレット(元素材)に成形し、それを用途に応じて成形する。今回のバットの場合は、バット用素管をミズノに提供し、ミズノがバットを製造する。
東海道新幹線再生アルミの特徴は、アルミを新製する場合に比べて、CO2排出量を97%削減できる点。1トンにつき、9トンのCO2削減効果が見込まれるという。また強度が高く、高品質を保持したアルミの再生素材で、建築基準法に準じた素材であるため、装飾のほか、建築材料や精密機械にも使用できるとしている。
活用事例として、東京駅八重洲北口の「東京ギフトパレット」の装飾や、ザボディショップの什器および装飾材、相鉄・東急新横浜駅「Shin-Yoko Gateway Spot」の装飾材、ネクタイピンやスプーンなどの雑貨がある。また、JR東海飯田線 下地駅の駅舎に使用されることが決まっている。
一方でまだ課題もあり、廃車解体した車両の中から再生できるアルミの部位が屋根の一部に限られている。これは最も付着物がなく使いやすいためだが、今後供給量を増やしていくためには、選別の精度を上げていくことが必要とされる。
JR東海 代表取締役副社長 中村明彦氏によれば、バット共同開発は、再生アルミの用途拡大にあたり、JR東海社内の元野球部の社員と、ジェイアール東海商事のミズノとの取引経験がある社員の2人の、バットを作りたいという思いから始まったという。そういった経緯からJR東海側からミズノへ話を持ち掛け、プロジェクトがスタートした。
ミズノ 執行役員 中田匠氏は、「この商品をきっかけに子どもたちに夢や希望を与え、野球の裾野をさらに広げていきたい」と述べた。
今後両社は、新幹線デザインバットのラインアップや、従来のバットの素材として商品展開の拡大を検討していく。