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三菱地所、スマートホーム「HOMETACT」。機器メーカーやビックカメラと連携
2021年11月5日 09:00
三菱地所は、スマホアプリやスマートスピーカーを使って住設機器・家電などをまとめて操作・管理できる総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」を開発した。自社物件への導入から開始し、将来的にはデベロッパーや賃貸管理会社といったビジネスユーザーへのシステム提供も視野に入れる。
三菱地所は、メーカーやサービスごとにIoT化が進んでいるものの、国内ではスマートホームがそれほど普及していない点に着目。この原因として「利用するアプリがバラバラでまとめて操作できない」、「ユーザー自身では設置・設定が難しい」、「コールセンターや緊急対応などのアフターケアが充実していない」の3点を挙げる。
これらの課題を解決するため、HOMETACTを開発。特定のブランドやメーカーに依存しないIoT機器・住設機器との連携や、ログインだけですぐに利用開始できる簡便さ、ビックカメラなどとの連携による導入からアフターケアまでの一貫したサポート体制を特徴とする。
居住者は、専用アプリ「HOMETACT」を利用。1つのアプリやスマートスピーカーでエアコンやテレビ、照明、カーテンといった複数メーカーのIoT機器をコントロールできる。対応デバイスは、Google Nest、スマートロック、給湯コントローラー、赤外線コントローラー、スマートスイッチ、ロボット掃除機など。対応機器は順次拡大する。
- Google Nest(スマートスピーカー・スマートディスプレイ)
- ライナフ NinjaLockM(スマートロック)・NinjaEntrance(スマートエントランス)
- リンナイ 給湯コントローラー
- LiveSmart 赤外線コントローラー
- LifeSmart スマートスイッチ
- ソムフィ スマートカーテン
- iRobot ロボット掃除機
- Sonos 音楽スピーカー
- Philips Hue スマート ライト
HOMETACT対応デバイス
アプリのデザインは、直感的に操作できることにこだわったインターフェースを採用。また、スマートロック施解錠操作は誤操作防止のため、スライド方式を採用している。
アプリで“おはよう”、“行ってきます”、“ただいま”といった「シーン」を設定すると、アプリのタップ操作などのワンアクションで複数のIoT機器をまとめて動かせるようになり、シーンで設定した通りに住空間を制御可能。スマートスピーカーと組み合わせれば、声による操作だけでなく、シーンアクションと一緒にお気に入りの音楽を流したり天気予報の確認なども行なえる。
時間や位置情報などをトリガーとして複数のIoT機器をまとめて自動で動かせる「マイルール」も搭載。「家から〇m近づいたら」、「毎週〇曜日〇時になったら」、「鍵を閉めたら/開けたら」などのトリガーのほか、季節によって変わる日の出、日の入りと連動した設定もできる。
そのほか、メーカーのアプリで提供している細かい設定を、HOMETACTでは省いている点も特徴の1つ。例えばスマートカーテンのメーカーアプリでは、どれだけ開けるかという設定もできるが、そういった設定をすべて搭載しても使われる頻度が少なく、煩雑になることでむしろ使われなくなってしまう可能性があるという懸念から、「使われるIoT」とするためにシンプルな設計にしている。
HOMETACTは、ビックカメラなどとの協力による、充実した周辺サービスも特徴とする。サービス利用開始前の設置・設定サポートを行なう「設置・設定サービス」、ユーザー専用「コールセンター」、接続機器の不具合からユーザーの設定フォローまで専門スタッフが対応する「駆けつけサービス」(予定)を提供し、導入からアフターケアまで一貫してサポートする。
管理者用ポータル機能「TACTBASE」も同時に開発。入退去管理からユーザーサポートまで幅広い業務の効率化に向け、物件・顧客・設置機器に関する情報の統合管理や、設置・設定状況、メンテナンス情報、メッセージ機能など多様な機能を備える。
三菱地所ではHOMETACTを、自社賃貸物件の「ザ・パークハビオ 麻布十番」全住戸に導入。対応デバイスのうち、Google Nestやスマートロックなど全住戸に設置・設定されているものと、ロボット掃除機やスピーカーなどユーザーが持ち込んで自身でアカウント設定を行なうものがある。ただし、全106戸のうち14戸は、フルラインアップで貸し出す。
スマートホーム普及を阻むAPI連携という障壁
三菱地所 住宅業務企画部 主事 橘嘉宏氏は、スマートホームサービスはアメリカや中国では拡大しているが、日本では遅れているという。一方でユーザー側は物件選択時のポイントとしてスマートホームを評価する人は多く、また実際に利用している人の70%以上が「暮らしがよくなった」と回答しているアンケート結果を紹介した。
同時に、物件選択の回答数が2,988あるのに対し、利用者の回答は278しかないことが、日本でスマートホームが進んでいないことを象徴しているとも述べた。
また、アメリカや中国で進んでいるのであれば、それらの国の企業が開発をすればよいという考え方もあるが、そこには国内メーカーとの連携で障壁があるという。
スマートホームではAPI連携が重要なポイントとなるが、日本のメーカーはAPIを公開しないケースがあるとし、そこに踏み込んでもらうためには国内企業がまとめる必要があると説明。そこで、デベロッパーとして旗を振り、メーカーとの連携の中でスマートホームを実現させた。
各メーカーには、独自のアプリを作ってもなかなか使われないことから、連携に対するニーズがあることをプロジェクトを通して確認できたという。また、2030年には現在の約10倍の市場規模に成長すると予測されているとし、三菱地所にとっても、単なる住宅提供者ではなく、スマートホームシステムを提供するビジネスへと拡大させるチャンスであると話した。
三菱地所 住宅業務企画部長 細谷惣一郎氏は、HOMETACTの名称の由来について、臨機応変・機転の効くという意味の「Tact」に「Home」を組み合わせていることを紹介。
HOMETACTでは、自社の経験や知見などを活かして、日本の住環境に導入しやすいスマートホームサービスを目指して開発したもので、ホームオートメーション機能だけではない、様々な生活サービスと連携させることで、新しい住宅のハブとしての基盤に成長させていきたいと述べた。
三菱地所では10月より、30分から依頼可能な定期家事代行サービス「30min.(サーティーミニッツ)」を開始している。鍵の遠隔解錠やゲスト招待機能(今後実装予定)を使うことで、こういった「家ナカサービス」を不在時でも活用できるようになるとし、このような取り組みと連携していくことで、ホームオートメーションに留まらない様々な価値の提供を目指す。