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「まるでこたつソックス」大ヒットのワケ シニア向けからの大転換が鍵に
2025年1月28日 08:40
「まるでこたつソックス」という靴下がヒットしています。独自の発熱素材で足元を温められることが高く評価されており、2015年の販売から6年間で、販売足数はシリーズ累計70万足を突破。現在も数字を伸ばし続け、冷え対策靴下として圧倒的な地位を築いています。
開発を手掛けているのは、奈良県の靴下メーカー・岡本。1948年に設立された老舗メーカーで、自社に研究開発部門を持ち、靴下だけでなく糸や靴下を編む機械の開発まで行なっています。
まるでこたつソックスは、冷えに悩む女性向けに展開したことで売れ筋商品となりましたが、元々はシニア向けの製品。製品名も「三陰交をあたためるソックス」と、今とは異なる名前で展開していました。
それを、2015年に「まるでこたつソックス」と名前を変え、リブランディングしたことで売上は大幅に伸張。三陰交をあたためるソックスの販売を開始した2013年と、まるでこたつソックスにリブランディングした翌年2016年との比較で、売上伸長率(数量ベース)は17倍以上となりました。
現在は女性だけでなく男性向けのカラー展開やサイズも用意し、薬局やコンビニなど身近な場所でも販売されています。なぜ、リブランディングを行なったのか、そしてまるでこたつソックスが今もヒットし続けている理由を、岡本の広報担当者に聞いてみました。
靴下の機能優先から「わかりやすさ」重視に
前身となる「三陰交をあたためるソックス」は、2013年に販売開始。冷えを改善すると言われている足首のツボ「三陰交」を温める機能を持った靴下で、独自の保温・発熱素材を使っています。
岡本渾身の新商品として、ターゲットであるシニア層にわかりやすいパッケージデザインを採用しましたが、思うようなユーザー獲得には至らなかったそうです。当時の担当者は「どうしても靴下の機能を伝えることばかりが先に立ってしまった」と振り返っています。
こうした背景から、ブランドのリブランディングに取り組むこととなり、機能はそのままに、わかりやすい商品コンセプトとパッケージを再検討。2015年に、新ブランド「靴下サプリ」が発足されました。
「三陰交をあたためるソックス」は、ネーミングをわかりやすく「まるでこたつソックス」に変更し、靴下サプリのラインナップとして新登場。新しい名前は当時のブランドチームを中心に案を出しあい、消費者調査を実施したうえで決定したそうです。
パッケージは、サプリメントをイメージした袋入りを採用。靴下業界では商品に触れられない、見えないパッケージというのはマイナーで、業界では珍しいパッケージに挑戦することに不安もあったそうです。
その担当者の不安をよそに、靴下サプリは販売直後からすぐさま売れ筋商品となりました。受け入れられた理由について、「ブランドコンセプトがお客様に伝わりやすかった」と当時の担当者は分析しています。
不安要素だったパッケージについても、靴下売場には白メインの商品があまりなかったため、かえって目立つことができ、功を奏したようです。
「靴下サプリ」では、まるでこたつソックス以外の商品も同時に発売しており、当初は他のアイテムを主力商品としていました。
2015年当時は、むくみ対策として着圧靴下が流行しており、「うずまいて血行を促すソックス」や「ふくらはぎ押し上げサポーター」などの着圧商品がメインで、まるでこたつソックスはサブアイテムという位置づけだったのです。
実際に発売してみると、一番人気となったのはまるでこたつソックス。予定数量をオーバーし、欠品するほどの人気となりました。
発売から10年を迎えますが、まるでこたつソックスの人気は衰えていません。2015年のリブランディングから現在まで、出荷数量は9年連続で伸張を続けています。一過性のヒットに終わらず、なぜ現在も高い支持を得られ続けているのでしょうか。
「2020年の新型コロナウイルスの流行以降、消費者の健康意識が大きく高まりました。また、おうち時間が増えたことで節電・節約志向が高まり、手軽に温められるアイテムへの注目度・需要が広がったことが関係していると思います。
実需に合わせ、TVCMを中心とした本格的なプロモーションも開始しました。『まるでこたつみたいな温かさ』と『ふんわりリラックスしている様子』を訴求したことで、これまで以上に幅広いお客様に届けることができたと感じています。現在はシーズン限定のカラー展開もご用意し、靴下では珍しい袋入りパッケージということもあり、ギフトにも選ばれています」(同社広報)
こだわりが詰まった温熱設計
長く愛される商品になったのは、「温かい」という本来のメリットがあるのももちろん関係しており、温熱設計には同社のこだわりがつまっています、シニア向けとして展開していたときと同じように、部位ごとに異なる編み方を施し、冷え改善のツボといわれる「三陰交」に当たる部分を温熱刺激できる設計を採用しています。
ちなみに三陰交は、内くるぶしから指約4本分上にあるツボで、ここを刺激したり温めたりすることで、血行が良くなり身体が温まると言われているそうです。
まるでこたつソックス実物を見てみると、足首に丸い印があり、ここが三陰交に当たる部分になります。三陰交がある部分は発熱素材を用いており、その他の部分は三陰交への温熱刺激で温まった足を保温できる特殊保温素材を使用しているとのこと。素材を編みかえることで温度差を生み出す設計が、特許取得の温熱刺激設計となっています。
まるでこたつソックスのヒットを機に、新商品も続々と投入されました。男性向けのサイズ展開に始まり、手軽に冷え対策をしたいという声に応えて簡単に着脱できるレッグウォーマータイプ、外出先でもサッと履けるようにした足首ウォーマーなどを販売。
2022年には、「足元が冷えて寝付けない」という悩みに着目し、「まるでこたつ おやすみスイッチ」を、エリア限定でテスト販売しました。靴下でもレッグウォーマーでもない新しい形状で、つま先を解放することで熱や汗がこもりにくく、睡眠時の温かさと快適さを両立しています。
テスト販売の結果、計画以上の販売足数となり、SNSでも話題が広がるなど、注目度が高まったことから、2024年秋に全国発売に至りました。
「新製品の開発には、市場調査を実施し、お客様のお悩みを拾いあげ商品開発に繋げています。調査では、女性の約半数が「足が冷えて眠れない」と深刻なお悩みを感じられていることが判明しました。就寝時に靴下を履くことはタブーと言われる中、足の冷えに悩む人に解決策を提示したいという強い思いで開発に至りました」
まるでこたつソックスに留まらず、老舗靴下メーカーとしてさまざまな悩みに応えた商品を開発し続ける岡本。そのこだわりは、一度履いてみると必ず実感できるでしょう。まだまだ寒い日が続くので、足の冷えが気になる方はぜひチェックしてみてください。