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地下鉄の窓開け換気、空気は1時間に7~27回入れ替わる。産総研が実車両で検証

産業技術総合研究所は、東京メトロと連携し、地下鉄営業線で実車両を使った、窓開けによる換気効果を計測する実験を行なった。これまでシミュレーションなどによる解析は行なわれていたが、営業線を走行する実車両を使った実験は初。

実際の地下鉄車両を使用し、営業路線を走行しながら窓開け対策時などの換気回数を計測して換気の状態を調査した。これによると換気回数は車速、窓開け面積に比例して増加し、営業線での走行条件での換気回数は1時間当たり7回から27回程度であることが確認された。これはシミュレーションなどで予測されていた数値と近く、実際に一定の換気効果があることが証明されたことになる。

実験では、CO2濃度減衰法によって換気回数を測定した。換気回数とは、車内の空気が一定時間に外気と入れ替わる回数を表す。

CO2濃度減衰法では、地下鉄車内にCO2を噴霧し、ブロワーで濃度を均一化。人間の代わりにマネキンを乗客として、新たにCO2を排出しない環境とした上で、車両内に等間隔に設置した複数のCO2計測器でCO2濃度の時間変化を計測した。計測器の高さは立席と座席を想定し、それぞれ床面から150cmと70cm。得られたCO2濃度に基づき、走行速度、窓の開閉、空調・室内送風機のオン/オフ、乗車人数(マネキン利用)、ドアの開閉を変化させた条件で換気回数を推定している。

これによると、換気回数は、車速や窓開け面積に比例して増加。地上と地下では、地下区間の換気回数の方が多くなった。また、乗客の有無(マネキンの有無)では大きな違いは見られなかったという。

営業線で走行と停車を繰り返した場合(時速40km程度での走行・停車時にドア開閉)、窓開けの換気回数は1時間あたり7回から27回。また、窓開け面積が同程度の場合、対角2カ所でも全12カ所でも換気回数は替わらなかった。

停車時の換気回数(室内送風機オン、マネキン無し)についても、ドア閉鎖時には開けている窓の数にかかわらず、窓開け窓開け面積に比例して増加。停車中ドア開放時には、1時間あたり約40回と、大幅に換気回数が増加する。

停車時における車内CO2濃度の減衰
車速と換気回数の関係

実験により、実環境を使った検証データが得られたことで、地下鉄や公共交通機関での新形コロナ感染リスクや、対策の効果に対する評価への貢献が期待される。

今後は、冬季の暖房条件での車内換気回数の調査、地下鉄などの公共交通機関の車内での新型コロナ感染リスク対策の評価の実施を検討している。