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ロボットが食事を運ぶ「無人デリバリーサービス」を見てきた
2020年8月13日 08:30
JR東日本スタートアップは、8月12日から16日まで東京の高輪ゲートウェイ駅前のイベントスペース「Takanawa Gateway Fest」内で実施される「無人デリバリーサービス」の実証実験にあたり、報道陣向けのプレビューを行なった。実証実験の内容は7月中旬に事前予告したものに沿っているが、試行錯誤を交えつつ若干のオペレーション変更などを行なっている。
今回の実証実験では、会場内の2カ所のテーブルに設置されたQRコードをスマートフォン上で読み込むことで、テーブルから直接オーダーを出せる。オーダーが行なわれると店舗での調理が始まると同時に、ZMPの宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」が待機エリアから商品の受け取りに店舗へと自動的に移動する。
調理が終わった商品は店舗横で待機するDeliRoに店員によって詰め込まれ、ロボットの扉を閉めた段階で自動的に注文のあったテーブルの場所へと向かう。目的のテーブル横に到着するとロボットは待機状態となり、扉の解錠用のQRコードを表示させたスマートフォンをDeliRoに見せると商品の取り出しが可能になる。あとは扉を閉めると、DeliRoは再び自動的に待機場所へと戻っていく。
参加している店舗は「高輪SOBA二八」の1店舗で、2種類ある“そば”のいずれかを注文可能。決済の方法だが、事前予告では完全無人をうたっていたが、今回のプレビューの段階ではオーダーが入った段階で待機していた店員が決済用のハンディ端末を持ってテーブルの元へとやってきて、注文者は交通系ICカードをハンディ端末にタッチすることで支払いを行なう有人方式となっている。
期間中は11時から14時の午前の部と、15時から18時までの午後の部に分かれており、その間は休憩時間としてDeliRoの充電時間に充てられる。DeliRoは1時間の充電で連続4時間駆動が可能とのことで、インターバルを挟んで3時間ずつの営業時間を休みなく稼働する。なお、メインで動くのは公開された2色のDeliRoのうち青い方のみで、赤い方は予備として基本的に待機状態となる。
オーダーが入って待機状態にあるDeliRoに商品を搭載し、実際に配達が行なわれるまでの過程を動画に収録してみた。
実証実験ということで、担当者が不慣れであったり、あるいは実際にうまく動作しない場面があったりするが、そういった部分でのフィードバックを得て少しずつ改良を進めていくのも狙いだと、JR東日本スタートアップ代表取締役の柴田裕氏とZMP取締役事業部管掌の西村明浩氏は説明する。
特に、担当者でさえ操作にまごつく注文から配達までのUI/UXまわりの仕様と、炎天下で周囲の光が強いなかでスマートフォン上のQRコードがなかなかロボットに読み込ませられず扉を解錠できないトラブルなど、動画をざっと拝見するだけでも見えてくる問題もある。柴田氏は後者について「事前の実験ではすべて紙に印刷していたQRコードで行なっていたが、すべての作業がスマートフォンで完結した方が手間がかからないという理由で今回の方式に変更したところ、今度は周囲の条件で読み込めない問題が出てきた」と述べている。
いかにロボットの活用範囲を増やしていくか
ZMPは各種の自動運転ロボットのラインナップを持っており、今回のDeliRoは文字通り配送に特化したロボットだ。学園キャンパス内のコンビニ商品の配達や、オフィスビル内でエレベーターでの移動を伴う書類の配達などの用途ですでに活躍しており、今回の実証実験ではJR東日本スタートアップと組んでの食品配達への参入となる。
同社は以前にJR東日本との提携で「PATORO(パトロ)」というロボットを高輪ゲートウェイ駅内に設置し、駅構内の自動消毒の業務にあたらせたことがあり、JR東日本系列との連携はそれに続くものだ。柴田氏は今後のアイデアとして「DeliRoを駅ナカや外部の商業施設での配達業務に活用することは充分に考えられる」と語っており、イベント会場以外での活用に期待を寄せている。
PATOROとDeliRoともに、ZMPのコア技術と呼べるのは3D LiDARと2D LiDARを組み合わせた自動運転技術だ。今回の技術ではあらかじめDeliRoに地図情報を読み込ませ、周囲の景色とマッチングを行ないながら、事前にプログラミングしたルートに沿って時速6kmで移動する。当然、イベント会場などでは人がいたり、突発的な障害物が出現していたりするが、そうしたものを迂回しつつも可能な限り設定ルートに沿ったコースを選択しつつ、衝突しそうな場面や人などの障害物の多い場面では減速して安全を確保する。
実用化されているものと実証実験を含め、現在ZMPのロボットが自動運転を行なっているのは私有地に限られるが、今後は公道での走行も含めた規制緩和が進むことが見えてきていると西村氏は語っており、クローズドな空間ではなく、よりオープンな環境での広域デリバリーサービスに応用することが可能になるかもしれない。