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10万円給付、オンラインや郵送を活用。安倍首相会見
2020年4月17日 22:42
緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大したことを受け、安倍総理は17日に記者会見し、一律で1人当たり10万円を給付する施策において、窓口ではなく郵送やオンラインを活用することや、都市から地方への移動抑制・自粛の呼びかけ、医療従事者の処遇改善などを発表した。
安倍総理は、医療従事者や物流や生活必需品の供給のために働く人々への感謝を述べ、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、最低7割、極力8割の接触削減に向け「外出を控えてください」と呼びかけ。ゴールデンウィークにおける都市から地方への移動も全国的な蔓延のきっかけとなるとして、移動を控えるよう要請。全国に緊急事態宣言の範囲を広げ、「5月6日まで。あと20日間、日本全体が一丸となってウイルスとの戦いを戦い抜いていく」とした。
また、国民に一律で1人あたり10万円を給付することを決定。14兆円規模となり補正予算をやり直し、さらに一週間程度の時間を要するが、国会成立に向けて協力を要請。安倍総理は、当初予定していた対象を限定した30万円給付から方針転換したことについて謝罪した。
給付の方法については、自治体の窓口ではなく、郵送やオンラインを活用する方向。スピードを重視するほか、申請者の殺到を避けるのが目的。
加えて、初診を含めた電話・オンライン診療を解禁し、感染リスクを抑えて診察できるようになったことを紹介。「積極的にご活用いただきたい(安倍総理)」。また医師会の協力を得て「検査センター」を立ち上げ。かかりつけ医の判断で直接センターに行き、検査を行なうことで保健所などの負担を軽減する。
また、医療支援を重症者に集中し、医療現場の負担を軽減。診療報酬の倍増など、医療従事者の処遇改善に取り組む。さらに外出を控えることが、医療現場の負担軽減につながることを強調。国民の協力を呼びかけた。
安倍総理冒頭発言
緊急事態宣言を発出してから10日がたちました。この間、毎朝、店を開き、食料品など生活必需品を棚に並べてくださっている皆さんがいます。レジの対応をしてくださっている皆さん、そして、物の流れを絶やすことのないよう、昼夜分かたず配送に携わっている皆さんがおられます。緊急事態の中にあっても、私たちの生活を守るために事業を、営業を継続してくださっている皆様に心より感謝申し上げたいと思います。
高齢者の介護施設や、保育所などでは、多くの職員の皆さんが感染予防に細心の注意を払いながら、必要とする方々のため、事業を続けてくださっています。電力やガス、水道の供給、ごみの収集・焼却、鉄道の運行、こうした社会インフラがしっかりと維持されなければ、私たちの生活は成り立ちません。そのために日夜、頑張ってくださっている皆さん、こうした皆さんの存在なくして、私たちは長期にわたるこのウイルスとの闘いに打ち勝つことはできません。目に見えない恐ろしい敵との闘いを支えてくださっている、こうした全ての皆様に心より御礼を申し上げます。
そして、人と人との接触を最低7割、極力8割削減するとの目標の実現に向けて、外出自粛の要請に応えてくださっている国民の皆様に改めて感謝申し上げます。
事業者の皆さんにも在宅勤務を原則とするなど、多大な御協力を頂いています。
しかし、1日当たりの新規の感染者数は、まだ減少には至っていません。東京都では、本日、過去最高の200人を超える感染者の報告がありました。大変厳しい状況です。
都市部の平日の人出は、感染拡大前と比べて、東京の渋谷周辺では6割程度、大阪の梅田周辺では7割程度減少していますが、いまだ目標のレベルには達していません。最低7割、極力8割の接触削減を実現できない限り、1日当たりの新規の感染者数を大きく減少に転じさせることは困難です。
累積の感染者数は、東京都では既に3,000人に迫っています。大阪府でも1,000人を超えました。各地で軽症者の皆さんにホテルなどで療養していただく取組も進んでいますが、医療現場からは悲鳴が上がっています。守れる命も守れなくなる。感染リスクと背中合わせの中で、現場の医師や看護師の皆さんの肉体的な、精神的な負担は限界に達しています。
皆さんに改めてお願いいたします。どうか、外出を控えてください。できる限り、人との接触を避けてください。そのことが医療現場を守り、多くの命を守ることになります。ひいては、皆さんや皆さんの愛する人たちを守ることにつながります。全ては私たち一人一人の行動にかかっています。
昨日、緊急事態宣言の区域を7都府県にとどまることなく、日本全国へと拡大することといたしました。尾身会長を始め、諮問委員会の専門家の皆さんから賛同を頂き、政府対策本部において決定したものです。
足元では、全国各地でクラスターと呼ばれる集団感染が確認されるようになっています。これについては、3月の三連休における緩み、都市部から地方への人の移動が全国に感染を拡大させた可能性があるというのが専門家の皆様の分析です。
また、東京都や大阪府など7都府県では、既に知事による休業要請などが進む中で、一部にコロナ疎開と呼ばれるような、外の地域への人の動きが見られるとの指摘があります。間もなくゴールデンウィークを迎えますが、感染者が多い都市部から地方へ人の流れが生まれるようなことは絶対に避けなければならない。それは最も恐れるべき事態である、全国的かつ急速なまん延を確実に引き起こすことになります。
先週の記者会見でも申し上げましたが、地方には重症化リスクが高いといわれる高齢者の方々がたくさんいらっしゃいます。その感染リスクが高まれば地域医療に大きな負担となり、ひいては、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあります。
こうした事態を避けるため、大型連休に先立ち、それぞれの地域で観光施設への休業要請も必要となるでしょう。人の流れを、人の流入を防ぐため、各地域が所要の緊急事態措置を講じることができるよう、今般、緊急事態宣言の対象を全国に拡大することとしました。
そのため、期間についてはこれまで同様、ゴールデンウィークが終わる5月6日までといたします。あと20日間、日本全体が一丸となってこのウイルスとの闘いを闘い抜いていく。全国の都道府県と手を携えて、皆さんの健康と命を守るため、あらゆる手段を尽くしていきたいと考えています。
今回、緊急事態宣言を全国に広げ、全ての国民の皆様に御協力をお願いします。感染症の影響が長引き、全ての国民の皆様が厳しい状況に置かれています。長期戦も予想される中で、ウイルスとの闘いを乗り切るためには、何よりも、国民の皆様との一体感が大切です。
国民の皆様と共に乗り越えていく。その思いで、全国全ての国民の皆様を対象に、一律に1人当たり10万円の給付を行うことを決断いたしました。収入が著しく減少し厳しい状況にある御家庭に限って、1世帯当たり30万円を給付する措置を予定しておりましたが、国民の皆様から寄せられた様々な声、与野党の皆様の声も踏まえまして、更に給付対象を拡大することといたしました。
これに伴って、現金給付の総額も、これまでの6兆円から14兆円を上回る規模へと大幅に拡大することとなります。補正予算の編成をやり直すこととなるため、更に1週間程度の時間を要することとなりますが、速やかな国会成立に向けて御協力をお願いしたいと思います。
ここに至ったプロセスにおいて混乱を招いてしまったことについては、私自身の責任であり、国民の皆様に心からおわびを申し上げたいと思います。
日々、事態が大きく推移する中で、国民の皆さんの健康と暮らしを何よりも最優先に、そして、国民の皆さんの声にしっかりと耳を傾けながら、常にベストな判断をするよう、最善を尽くしていく。その責任をこれからも果たしていく決意であります。一日も早く、現金を皆さんのお手元に届けられるように、実施に当たる自治体や関係機関の方々と協力し、政府を挙げて全力で取り組んでまいります。
リーマンショックのとき、全国民一律に配付した定額給付金の際には、皆さんに案内をお送りする作業だけで3か月もの時間を要しました。そのため、今回はスピードを重視するとともに、申請する人が殺到して感染リスクが高まることを避ける観点から、手続については市町村の窓口ではなく、郵送やオンラインによることにしたいと考えています。
緊急事態宣言が拡大することにより、全国の観光業・飲食業の皆さん、イベントに携わる方々には大変な御苦労をおかけしています。事業者の皆さんへの現金給付も速やかに実施していきます。休業要請を行っている自治体では、個別に協力金をお配りする動きもありますが、国として休業要請した、そして、休業要請に応じた方々のみならず、今回の感染症で売上が減少した事業者の皆さんを全国的に幅広く支援してまいります。
中小法人は200万円、フリーランスを含む個人事業者の皆さんには100万円を上限に、国として現金給付を行ってまいります。
また、納税時期が迫っている皆さんも多いと思いますが、納税や社会保険料の納付を猶予することで、手元資金を事業継続に活用していただけるようにします。
この困難な中にあって、本当に歯を食いしばって頑張っておられる皆様、必死に前を向いて取り組んでおられる皆さんを、政府はあらゆる手を尽くして支援してまいります。皆さんの努力は決して無駄にしません。共にこの緊急事態を乗り越えてまいりましょう。
このところ相次いで病院内でのクラスター発生、院内感染が報告され、事態を大変憂慮しております。全ての医師、看護師、看護助手、そして病院スタッフの皆さん、臨床検査技師の皆さん、さらには保健所の皆さん、こうした皆さんこそが、今、最前線にあって、感染リスクと背中合わせの苛酷な環境でウイルスとの闘いに臨んでくださっています。
この現実に立ち向かうため、国として自治体と連携し、感染予防に必要な医療防護具を1つでも多く現場にお届けします。医療用ガウンや高機能マスクなどを、産業界の全面的な協力を得て、調達いたします。今週から初診も含めたオンライン診療を先行的に解禁しました。院内感染のリスクを減らすためにも、全ての皆さんや、正に全ての皆さんに電話やオンラインでの診療を積極的に御活用いただきたいと思います。各地の医師会の協力も得て検査センターを設置します。かかりつけ医の皆さんが必要と判断した場合には、直接このセンターで検体を採取し、民間検査機関に送ることで保健所などの負担を軽減してまいります。
厳しい現実に立ち向かうため、国としてこれまでに延べ13,000人を超える自衛隊員を動員し、自治体による軽症者の宿泊施設への移送などを支援してまいりました。医療資源を重症者に集中することで医療現場の負担軽減に取り組みます。
今、この瞬間も重症者の命を救うため、命を守るため、懸命に治療に当たってくださっている医師、看護師の皆さん、医療従事者の皆さんのため、診療報酬を倍増するなど処遇の改善にもしっかりと取り組んでまいります。
そして、現実に必死で立ち向かっている現場の皆さんに、私たちは心からの敬意と感謝の気持ちを表すことができます。現在の厳しい状況に全力で立ち向かっている医療従事者の皆さんに、全国各地で拍手を送り、また、ライトアップを行って、感謝の気持ちを示す取組が行われています。本当にありがとうございます。
でも、私たちにはもっとできることがあります。それは目の前の現実に立ち向かうだけでなく、未来を変えることです。私たち全員が、今、不要不急の外出を避けることで、2週間後の新規の感染者数を劇的に減らすことができます。それは間違いなく、医療現場の負担を減らすことにつながります。2週間後の医療現場の状況を決めるのは正に今なのです。未来は私たちの今の行動にかかっています。医療現場を支えるため、その負担を減らしてください。皆さんの力で未来を変えてください。緊急事態に皆さんの御協力をお願いいたします。