ニュース

JINS、バイオレットライトで近視進行抑制するメガネ。医療機器承認目指す

ジンズホールディングス(JINS)は、近視進行に抑制効果があると考えられる「バイオレットライト」を活用した、近視進行抑制メガネ型医療機器開発を始める。

バイオレットライトを使った近視進行抑制メガネ型医療機器 コンセプトビジュアル

慶應義塾大学の坪田一男教授が代表をつとめる坪田ラボとの共同プロジェクトとして取り組む。2019年中は準備期間、2020年から治験を行ない、2023年頃には世界初のバイオレットライトを使ったメガネ型医療機器の製造・販売承認取得を目指す。ジンズホールディングスとしては、管理医療機器事業への参入となる。

ジンズホールディングス 田中仁CEO(左)と慶應義塾大学 坪田一男教授(右)

ジンズホールディングスの代表取締役 CEO・田中仁氏は、「(新事業によって)SPA(製造小売業)から、アイウェア・プラットフォーム企業となることを目指す」と新領域へのビジネスを拡大に意欲を見せる。

JINSが開発予定の近視進行抑制アイウェアは、フレームの上部に380nm(ナノマイクロ)付近のバイオレットライトが発光する仕組み。ライトは、アイウェアをかけている人の視界には入らないが、自然の太陽光の照度を再現することで、屋外に出かけることなく室内にいる状態でも、近視進行抑制効果があるバイオレットライトを浴びることができる。

現在の計画では、最も近視が進行するといわれる6歳から12歳の子供達を最初のターゲットとする。子供にも自然でかけやすいデザイン設計で、Airframeと同じ軽量性、弾力性に優れた素材を採用。自動電源オン・オフ機能で、一日の照射時間をコントロールし、状態を表示するLEDなども搭載する。

現段階では価格は未定だが、「たくさんの子供達がかけられるような価格帯を目指したい」(田中氏)という意向だ。

2023年頃の製造販売承認取得を目指す

屋外で浴びる“バイオレットライト”の効果を再現

今回の発表のポイントである、「バイオレットライト」は、紫外線の手前にあたる、波長360nmから400nmの紫色の光。室内にいると浴びることはほとんどなく、屋外にいる際に浴びる光だ。

慶應義塾大学医学部眼科学教室では、2016年12月に、ヒヨコを用いた動物実験と、人の臨床研究を通じて、バイオレットライトが近視の進行を抑制するという発表を行なっている。

この発表を行ったのが坪田一男教授。坪田氏は、「たかが近視と思われるかもしれないが、実は日本の失明の主原因の1位の緑内障、2位の糖尿病網膜症、3位の網膜色色素変性に次いで4位が強度近視。しかも、近視になる人の数は増大傾向にあり、2050年には世界人口の半数が近視になるのではないかという調査結果も出ている」と近視の危険性を指摘する。

では、何故、最近になって近視が増加しているのか。子供達の調査を行なったところ、親が近視の子供でも毎日2時間以上屋外活動をしている子供の方が近視を発生する子供が少ないという調査結果があるのだという。

「シンガポールとシドニーの6歳、7歳の子供の近視を調査したところ、一日あたり25分、週に3時間程度しか外遊びをしないシンガポールの子供は、近視の割合が29.1%。一日あたり2時間、週に14時間以上外遊びをするシドニーの子供は、近視率が3.3%と大幅に低くなっていることが明らかになった」(坪田氏)

この結果を受けて、慶大眼科ではヒヨコ、マウスを使った動物実験を行なった。その結果、太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びたマウスは、近視になるようにしても眼軸長が伸びないという結果が出た。

そこから立てられた仮説が、バイレットライトを浴びたOPN5光受容体が、近視抑制遺伝子であるEGR1の発現増大させることで、眼軸長伸張展抑制を行なうというもの。

「OPN5光受容体が重要で、これを抑制すると、いくらバイオレットライトを与えても効果が出ないことが明らかになった」(坪田氏)

バイオレットライトによる近視進行抑制は、現在、治験が行なわれ安全性、効果を証明する活動が続いている。この証明を受けて、JINSでは商品化を進めることになる。

JINSと坪田氏が協力したのはブルーライト対策メガネを発売した時に遡る。「その時に始まったディスカッションが今回の新たな製品の開発につながった」という。

これまで太陽光による紫外線は、目や肌に悪影響があるとされてきた。しかし、太陽光の全てが悪影響ばかりではないことが明らかになり、すでにJINSでは「バイオレットプラス」として不要な光線をカットしながら、バイオレットライトを透過させるグラスも提供している。

また、バイオレットライトは、子供だけでなく大人にも効果があるという結果が出ていることから、「最初に子供向け近視進行抑制メガネ型医療機器を開発・販売できたあとで、大人向け製品についても検討したい」とした。