タブーをも恐れない斬新な映像表現で、常に恋愛と性の関係を純粋な視線で描き続けてきたカトリーヌ・ブレイヤ監督。各国でセンセーションを巻き起こした女性と聞けば挑戦的で強い人物を想像してしまうが、ブレイヤ監督にそんな様子は一切見受けられない。印象はいたってソフト。優しく柔らかい笑顔の中に、いったいどんなエネルギーが隠されているのだろうか。17歳で処女小説を発表して以来、常に一貫した姿勢を保ち、ありのままの性、肉欲を描いてきた監督に性表現へのこだわりについて聞いた。
33年にわたってタブーを恐れず突き進んできた理由について、処女作発売時を振り返りながら監督自身はこう語る。「正直言って私が性的なタブーにこだわってきたというよりも、社会が性を束縛し、抑圧してきたのではないかと思います。私が17歳の時に書いた本のテーマは性的なものでしたが、たまたま社会から18歳未満への販売禁止と見なされてしまったのです。以来いつも不思議に思うのは、なぜ性的なものばかりを特別なものとして扱わなくてはならないのかということ。社会の基礎は男女の出会いに基づいていてそれが全て。そして男女の関係は性的なものに基づいているのに」。
社会の基盤である性(セックス)を否定し蔑むなんて妙な世の中だ、と監督は笑う。確かに性を必要以上にタブー視するのは、自然界でも人間だけだろう。当然の営みとして性をとらえることを我々はいつから止めてしまったのだろうか。その言葉は性へのタブーを生み出してしまった社会への警告のように聞こえる。「エクスタシーの表情は確かに淫らなものとして捉えられているかもしれませんが、そこを通り越すと実は神聖で天使のような顔があると思います。女優は監督である私に全幅の信頼を置いてくれていると同時に、非常にプライベートな内面をさらけ出すことになります。猥褻だ、淫らだとされていることを、勇気を持って克服できればそこにはピュアなものがあるのだと私は信じているんです」。
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