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第4回 LEDは速い!! 何がッ!? 応答速度が!!!

Lチカくん4号 vs 電球クン

LEDはチョー速い

 電球や蛍光管と比べると、LEDには「ならでは」「だからこそ」の突出した特性がある。それは、LEDの応答速度だ。  ここで言う応答速度とは、電球や蛍光管やLEDに電気を流してから光が出るまで(あるいは電気を遮断してから光が消えるまで)の時間ですな。この応答速度、LEDにおいてはチョッ速なのである。

 たとえば電球(白熱電球)の場合、スイッチオンの瞬間から通常の明るさになるまで、0.2秒ほどかかると言われている。わりとスグに明るくなるものの、点灯の瞬間から眩しく光るまでの一瞬を目で追える程度、光るまでに時間がかかっていることがわかる。蛍光管の場合はさらに遅い。実際の蛍光灯を見れば、スイッチオンから明るく光るまで、ちょっと時間かかっていることがハッキリとわかる。

 一方、LEDの場合、電流を流した途端に明るく光る。また、電流を止めれば一瞬で暗くなる。LED素子単体での応答速度は50~100ns(ナノ秒)と言われており、これはナント!! 1億分の5秒~1千万分の1秒という速度!! LEDは、電球や蛍光管と比べると文字通り桁違いの応答速度を持つ発光素子なのだ。

 ちなみに、LEDがここまで高速で反応(発光)するのは、電子の動きがそのまま発光に結びつく現象だから。

 白熱球の場合は電流が流れてフィラメントが加熱されて光を放つ。フィラメントが十分熱くなるまでちょっと時間がかっているのだ。蛍光管の場合は管内に放電して紫外線を発生させ、この紫外線が管面の蛍光物質に当たって光を放つ。蛍光物質が十分に光を放つまでに、やはり時間がかる(インバーターなどの周辺回路の動作速度も“応答速度の多さ”に関係している)。

 白熱球や蛍光管は、光が放たれるまでにいくつかの段階を経ているため、応答速度が遅いってわけですな。これに対しLEDは1千万分の1秒とかで点灯/消灯できる猛スピードのあかりなのだ。

LEDの高速応答性、ナニがイイの?

 てか、電球も蛍光灯もLEDも、照明として使うなら応答速度なんて関係なくね? とか思ったりする。確かにそうだ。普通一般の照明用となら、そういった応答速度はあまり重要でない。照らしてくれりゃぁイイんだし。

 だが、応答速度が速いからこそ可能な応用ってのもある。たとえばLEDを使ったデジタル時計や表示器、マトリックスLEDを使った電光掲示板なんかがそうだ。これらには全て、光源(表示器)としてLEDが組み込まれている。LEDを採用している理由はいくつかあるが、大きな理由のひとつとしてLEDの高速応答性がある。

 どういうコトか、を、まずは写真と映像で見てみよう。

7セグメントLEDディスプレイを表示器として使ったデジタル時計。時計以外にも、いろいろな場面で活躍する“おなじみの表示器”ですな。

いろいろな7セグメントLEDディスプレイ。各セグメント内にそれぞれLEDが埋め込まれている。光らせるLEDを変えることで数字などを表示できる部品だ。

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デジタル時計が実際に動作している様子を、ハイスピードカメラで撮影。4つの7セグメントLEDディスプレイが順番に点灯していることがわかる。

 写真は7セグメントLEDディスプレイ(通称7セグ)を使ったごく普通のデジタル時計だ。写真のとおり、肉眼では「4桁の数字が同時に表示されている」ように見える。だが、実際は、非常に速く各桁を順番に点灯/消灯させている(ダイナミック点灯と呼ばれる)。

 こうする理由はいくつかあるが、基本的には電力消費を抑えるためと回路の簡素化のためだ。4個の7セグを同時に点灯させるのと、1個ずつ順番に点灯させたのとでは、ぶっちゃけ消費電力1/4ですな。また回路の複雑さをマイコンチップなどに吸収させることができる。

 身の回りにある7セグLEDやマトリックスLEDを使った表示器のほとんどは、このデジタル時計のように超高速で順繰りの点灯/消灯を繰り返して表示を行っている。フツーに光っているようで、実はチカチカしてるんですな。Lチカ(←LEDをチカチカと点滅させること)ですよマジで。

 それから、LEDは調光も容易に行える。たとえばPWM(Pulse Width Modulation)での調光。LEDに細かなパルスで電流を流す方法だが、1秒間に数千~数万回といった頻度でLEDを点灯/消灯させることで、LEDの明るさを変えられる。点灯/消灯時間の比率を変えれば明るさを自由に制御できる。

 PWMによるLED調光は、超高速でLEDを点灯/消灯させている。超高速のLチカですな。その点灯/消灯は肉眼では追えないため、見かけ上はLEDが点灯しつつ明るさが変わっているように見えるというわけだ。

超高速Lチカがもたらす未来

 凄い速さで点いたり消えたりするLED。この非常に高い応答速度は意外なところで役立ったりしている。

よく見かけます、リモコンの赤外線LED

 具体的には、赤外線リモコン。テレビとかエアコンとかのリモコンですな。赤外線リモコンは、その名のとおり赤外線を発してテレビやエアコンに指令を与えている。赤外線でどうやって? 実は赤外線の発射を高速でオンオフし、そのオンオフパターンによって「テレビをつけなはれ」とか「暖房運転をしニャさい」といったコマンドを送っているのだ。

 そしてこの赤外線を発しているのが赤外線LED。赤外線だけ出すLEDだが、応答速度はほかのLEDと同様に超高速。一般的な赤外線リモコンは38kHz(1秒間に3万8,000回の速度)で点滅している。このようなLEDの応答性の速さゆえ、便利ってよりも生活には欠かせない赤外線リモコンが使えている我々人類御一行様である。

 ケータイやPDA、モバイルPCの無線通信手段としておなじみの赤外線通信(IrDA;Infrared Data Association)もそう。基本、超高速Lチカなわけですよ。でも高速で正確に点灯/消灯できるから、いわゆるデータ通信にも使えちゃうってわけですな。

 それから、LEDは可視光通信分野でも鋭意研究されている。可視光通信とは、電波とか赤外線とかじゃなくて、目に見える光にデータを乗せて送受信する技術だ。

 たとえば、LED照明器具を超高速Lチカで光らせてデータを送ったら!? 人にとっては部屋のあかりとなり、そのデータを受け取れる端末にとっては情報源となる、みたいな。可視光通信対応のLED照明を設置したショップに入れば、ケータイやモバイル端末にそのショップの特売情報などが自動的に表示される!! みたいな時代が来るかもしれない……というかソコまでキていたりする。

 可視光じゃなくて電波とかで通信すれば? という考えもあるが、電波だと使える場所や帯域や出力が限られたり、人体への影響も懸念されるところ。一方、可視光なら、つまりは単なる“あかり”なら、そういう問題もないというわけだ。また、照明器具なんかに通信のための機能、つまり、Lチカ装置みたいなモノを付加する程度で実現できるなどのメリットもある。

 てな感じで、LEDには照明器具としての良さに加え、我々の生活を便利する力もあるのだ。そして近未来を一変させる可能性も!! この世知辛い世の中において、ずいぶんと夢と希望に満ちたデバイスですな!! 今後も大期待ですな!! 注目していきたいですな!!

バックナンバー

■ 第4回 LEDは速い!! 何がッ!? 応答速度が!!!
http://www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2010/led/stapa4.html
■ 第3回LEDのいったいどこがいいのさッ!? その2
http://www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2010/led/stapa3.html
■ 第2回 LEDのいったいどこがいいのさッ!?
http://www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2010/led/stapa2.html
■ 第1回 そもそもLEDってナンジャラホイッッ!!??
http://www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2010/led/stapa1.html