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貝印、13年ぶりの新ブランド「AUGER」。カミソリ・爪切りへのこだわり

貝印が、グルーミングツールを取り揃えた新ブランド「AUGER(オーガー)」を立ち上げ、3月1日にシステムカミソリ、ツメキリなど9製品(替刃含む)を発売しました。同社にとっては13年ぶりとなる新ブランドの狙いやこだわりを、担当者にお伺いしました。

AUGERは、男の身だしなみを整えるためのツールのブランドで、システムカミソリ、ツメキリ2種、ネイルファイル、オシャレハサミ、セーフティハサミ、毛抜きをラインアップします。こういったツールを新ブランドとして展開する狙いはどの辺にあるのか、AUGERのブランドディレクターを務める鈴木曜さんが教えてくれました。

「男性の肌や美容に対するニーズは増え、市場も伸びてきています。その中で貝印の強みを活かしたブランドとしてAUGERを展開します。カミソリ、ツメキリ、ハサミなど、これらすべてを作れるメーカーというのは他にはないんじゃないかと思います」

貝印 マーケティング本部 広報宣伝部 部長 兼 ブランド企画部 部長 兼 デザイン部 部長 鈴木曜さん

価格は、「AUGER システムカミソリ」コンボパック ホルダー+替刃6個付が2,860円、ツメキリ2種「M Revolver」「M Standard」がそれぞれ3,300円、1,650円で、フラッグシップの位置づけです。そのほか、爪用ヤスリ「ネイルファイル」が1,100円、眉毛などを整える「オシャレハサミ」と鼻毛カット用の「セーフティハサミ」が各1,045円、「毛抜き」が1,210円です。

「カミソリは貝印のルーツともいえるアイテムで、その中でもAUGERのシステムカミソリは最高の切れ味を実現しています。またツメキリは、誰もが日常的に、長く使い続けるアイテムであるはずなのに、皆さんこだわりがない。例えば実家から出るときに持ってきたものをそのまま使い続けるとか。高品質なツメキリを提供することで認識を変え、良いものを使うと爪を切っている時間が豊かになるということを知ってもらいたいと思っています」

業界No.1首振り可動域と逆剃りしやすい機構搭載のカミソリ

システムカミソリの最大の特長は、業界No.1をうたう首振り可動域です。

「カミソリの首振り機構は、一般的に2D×2Dのような動きが多いんですが、AUGERのシステムカミソリはシームレスに360度回るところが特徴です。また、一つ一つの刃が別に動く独立サスペンションを採用しています。これにより、刃が滑らかに動き、肌の面に自然にフィットするんです」

AUGER システムカミソリ

首振り機構について、私が普段使っているカミソリのヘッドを動かしてみたところ、人間の首でいえば、上を向く、かしげるというイメージの動きです。これに対してAUGER システムカミソリは、首をぐるぐる回すような動きをします。もちろん、首ほどに可動域は広くはありませんが、そこまで動いてしまうと圧が掛からずヒゲを剃れなくなってしまうでしょう。

「首振り機構が、ヘッドだけで実現していることも特徴です。通常は、ヘッドとホルダー(ハンドル)の両方に首振りのための機構が搭載されています」

剃っている時に、ヘッドとホルダーのどの部分が動いているのか気にしたことがありません。どういったメリットがあるのでしょうか。

「複雑なホルダー形状にならないというメリットがあります。開発では、ヘッドのみによる首振り機構の採用が決まった後に、ホルダーをどのようなものにするか、検討・開発を進めました」

このホルダーにも特徴があり、その1つが世界初の、逆剃りのしやすさを実現するヘッド角度可変機構です。貝印では様々な特許を取得しており、この機構も特許取得済み。複雑なホルダー形状ではないからこそ実現できたとも言えるそうです。

「まず1つに、通常は肌への悪影響から逆剃りを必ずしも推奨してこなかったのですが、実際には逆剃りをしている人が多いことから、独立サスペンションや首振りにより肌への負荷が小さくなるようにして、逆剃りも推奨できる製品にしています。その上で、ヘッド角度可変機構により逆剃りのしやすさを実現しています」

ホルダーは貝印で所有する3Dプリンターを使って試作を行ない、握りやすさなども含めて様々な角度から検討。デザインについては、カミソリは派手な色を使ったものも多い中、黒とガンメタリックによるシックなデザインが採用されています。これはAUGERブランド製品すべて共通で、洗面所などに置いたときに落ち着いた印象になることを狙いとしています。

3Dプリンターによる試作を重ね、様々な検討が進められた
AUGER システムカミソリ(左)が、他のモデルに比べていかにシックなデザインかがわかる

「5枚刃構造の刃体の上下にスムーザーを配している点も特徴なのですが、このスムーザーも黒にしています。通常は青や緑を使われることが多いです」

ヘッドの刃の上下にあるスムーザーも黒

もう1つ、保管時に刃部が下を向いた状態で本体を平置きしても、床面に刃が直接触れないという点も特徴です。ホルダー部分に三角形の台座を備えることで、カード厚ほどのすき間ができるようになっています。

平置きした際に床との間にわずかなすき間ができる

「これに関しては実は、私はヘッド角度可変機構があるから必要ないんじゃないかという考えでした。でも最終的にこのようになった。つまり、平置きでも床に触れないほうが良いという意見の方が強く、私は負けました(笑)」

ヘッド角度を“逆剃り仕様”にすれば床には着かない

手と足で使い分けもできる2種類のツメキリ

ツメキリは、M RevolverとM Standardの2種類。共通して、ツメを切る際に親指をかける部分が大きめで、またブランドロゴをイメージした彫り込みがあり、男性の指でも指のかかりが良い設計になっています。手に持った感覚としては、一般的なツメキリよりもズッシリ感があります。

AUGER M Revolver(左)とAUGER M Standard(右)

「この2つは切り心地に差があり、M Revolverは硬い爪でも力をかけずに切れること、M Standardは同じように硬い爪も切りやすいのですが軽い切れ味を特徴としています。どちらの方が切れるかというよりも、好きな方を使ってほしいですね。手の爪を切るときと足の爪を切るときで使い分けているユーザーもいます」

見た目、構造上、より特徴的なのはM Revolver。貝印が特許を取得している、旋回式レバーを採用しています。

M Revolver 収納時
レバーをグルっと旋回させることでツメを切る態勢になる

「従来のツメキリよりも刃の近くに作用点があるため、力がダイレクトに伝わりやすく、硬い爪でも力をかけずに切れやすい構造です。切りやすさだけではなく、見た目や旋回させる構造のガジェット感を気に入ってくれているユーザーもいます」

左がM Revolverの機構

M Standardの構造は一般的なツメキリと同様で、レバーを本体の上でクルリと回して使用します。とはいえ、素材にはAUGERならではのこだわりがあります。

「レバー(テコ)は、家庭で一般的に使われているツメキリではプラスチック素材が多いです。AUGERではメタルテコを使用することで、重さにより力が伝達しやすくなり、軽い切れ味を実現できるわけです。私個人は、使い心地はM Standardのほうが好みです」

M Standard
左がM Revolver、右がM Standard。カバーを外して真横から見ると構造の違いがよくわかる

ネイルケアツールとしては、爪用ヤスリのネイルファイルも用意しています。

「男性でも詰めのケアをされる方が増えていて、ネイルサロンに通う男性もいらっしゃいます。こういったツールも、これから需要が伸びてくると思っています」

AUGER ネイルファイル

鈴木さんが一番売れてほしいと思っているのは毛抜き

AUGERでは、眉毛や鼻毛、ヒゲをお手入れするためのツールとして、オシャレハサミ、セーフティハサミ、毛抜きも展開しています。中でも毛抜きは、カミソリやツメキリも含めた全体で、一番売れてほしいと鈴木さんは思っているそうです。

「会社として一番力が入っているのはシステムカミソリです。でも個人的には、毛抜きが売れてほしいなと思っています」

AUGER 毛抜き

毛抜きは女性で使う方は多いと思いますが、男性にも使ってほしいと思うのはなぜなのでしょう。

「AUGERは身だしなみのためのグルーミングツールとして展開していますが、例えばヒゲをカミソリで剃り落とすだけではなく、最後に毛抜きで整えるといったところまで意識してくれたらうれしいですね。これを持っていると、ちょっとかっこいいなと思うんですが、どうですか(笑)」

その毛抜きにも貝印が特許を取得している機構が採用されています。先端の横ズレを防止するストッパーです。毛をつかまえた瞬間に手に力が入っても、毛抜き自体には必要以上の力が加わらないという効果があります。ストッパーがない場合、持っている部分に必要以上に力が加わると、その部分がたわんで先端側は反る形になり開いて、せっかくつかまえた毛を放してしまうことになるそうです。

中央部分のストッパーにより、力が入りすぎてもたわまないようになっている

鼻毛を切るためのセーフティハサミは先丸刃先、眉毛などを切るためのオシャレハサミは薄刃形状を採用しています。

セーフティハサミ(左)とオシャレハサミ(右)

「2つのハサミは、刃にこだわっているのはもちろんですが、男性でも持ちやすく、角度も調整しやすいよう設計されたハンドルも特徴です」

AUGERでは男性用グルーミングツールのすべてを揃えた

「AUGER」という名称には、どういった想いが込められているんでしょうか。

「AUGERという言葉には、“らせん状の刃先”という意味があります。ドリルの先端などのイメージです。AUGERにより、カミソリを始めとしてすべてが揃っている男性用グルーミングツールという、今までなかったところに穴を開けていこうという想いが込められています。さらにAUGERに、貝を意味するSHELLをつけると“AUGER SHELL”という貝の種類を意味する言葉になります。つまり、刃物と貝の両方の意味を持たせているのです」

ロゴデザインは、切れ味をイメージさせる鋭い形となっていますが、こういったロゴにできる文字で構成されたフレーズというところまで考えて決めたそうです。

今後もAUGERブランドのアイテムを増やしていく計画とのこと。とはいえ現ラインアップだけでも、ネイルファイルやオシャレハサミなどは使ったことがないという人も多いでしょうし、ツメキリも鈴木さんが話す通り「実家にいた頃から使っていたやつ」で済ませている人は少なくないでしょう。新しいツールを取り入れ、また更新することで、“たかがカミソリ”“たかがツメキリ”という考えも更新され、身だしなみを整えること自体が楽しくなってきそうです。