小寺信良のシティ・カントリー・シティ
第22回
台風10号襲来 自然の厳しさを知った9月
2020年9月24日 08:30
台風10号襲来
今年9月に発生し、史上最強クラスと言われた台風10号は、日本接近時に若干勢力は落ちたとはいえ、九州地方には大きな被害をもたらした。
九州最接近は9月7日と予測されていたが、早めの準備が呼び掛けられていたため、宮崎市の筆者宅では3日から必要物資の買い出しに出かけていった。立ち寄ったホームセンターは、これまでにみた事もないような混雑ぶりである。大きなベニヤ板や長い木材を買い求める人が多かったのは、窓に打ち付けるためだろう。
ドラッグストアでも、普段は潤沢にある飲料水が品切れ寸前であった。筆者宅は宅配型のウォーターサーバーを契約しており、まだタンクが2つぐらい残っていたので、こうした際に備蓄する必要がないのは幸いだった。
養生テープを窓に貼り付けると飛散防止になるという情報がテレビで流れた途端、各所で売り切れの張り紙が見られた。うちでは早くから2ロール購入していたので、争奪戦に巻き込まれずに済んだのだが、地方になるほどテレビの影響は大きくなる。また、地方には急な需要に対応できるほどの流通網がないため、一度バランスが壊れると1日2日では元に戻らない。
九州地方に最接近したのは、予報より多少早まって6日の夜だった。風は筆者が住むマンションの横から吹きつけてくるので、ベランダ側の窓に風が直撃するのは避けられた。しかし風圧によって、雨水がサッシの隙間をこじ開けるように侵入してくる。入居前に不動産屋さんから、台風の時はサッシの下のところを新聞紙などで詰め物をするようアドバイスされていたので、その通りにしておいてよかった。
夜が更けるにつれ、風雨だけでなく雷もひどくなってきたため、夜10時頃には就寝したのだが、11時頃から瞬電が始まった。数分おきに数回瞬電があった後、本格的な停電となった。窓の外を見てみると、あたり一帯一斉に停電しているようだが、遠くでスパークとみられる灯が瞬いているのが見えた。
現在住んでいるマンションは3月から入居したため、まだ台風や停電の経験がない。停電になると、水も出なくなるとは知らなかった。埼玉時代は戸建てに住んでいたので、停電しても水圧で水道は出るが、マンションでは汲み上げポンプが止まると水道も止まるのである。
幸いにして15分程度で復旧したので困ることはなかったが、あとで聞くところによれば、同じ宮崎市でも中心部は停電しなかったようだ。それというのも、中心部は電線などは全て地下に埋設しているため、空中に電線を張ってないのである。もともとは景観のために埋設したのだが、台風被害にも強いというわけだ。
自慢の畑も大被害
宮崎県は9月16日速報値として、公共土木施設及び農林水産業の被害総額は38億5,871万円だったと発表した。台風10号は鹿児島、熊本を掠めるように北上したので、この両県に比べれば宮崎はだいぶ遠いのだが、それでもこれだけの被害である。
以前に少しだけご紹介したことがあるが、筆者は近所に4.5坪の畑を借りて、家庭菜園のようなことをやっている。長い梅雨の後で、ようやく色々なものが収穫できるようになっていた。
台風一過の7日に様子を見にいったところ、予想外に被害が大きかった。一番激しかったのは、トマトである。枝が折れないよう紐で柵に固定しておいたのだが、柵ごと倒れてしまった。幸い隣にあったきゅうりの柵にぶつかって、他所へ吹き飛んでしまうことは免れたが、トマトの根を柵ごと引き抜いてしまう風量に驚くばかりだ。
他の作物で倒れたものはなかったが、葉っぱがことごとく枯れてしまった。あまりの風量に葉っぱが痛んでしまったのかと思ったが、長く畑をやっている人に聞くと、そうではないようだ。台風が運んでくる潮風による、塩害でこうなるんだそうである。
畑の場所は海岸線から2kmぐらいはなれており、途中に防風林や有料道路の高架などもあるので、普段潮の香りなど感じることはない。だが大型台風ともなれば、その風量ゆえに潮風も遠くまで運ばれていくということである。
この塩害によるダメージは深刻だ。育てた作物のほとんどが茎だけになってしまい、ほぼ全滅状態である。枯れた葉っぱを取り除いたら、ナスやピーマンは茎だけになってしまった。
諦めて全て処分して、最初からやり直すか。数日様子を見てダメなら仕方がないと半ば諦めていたのだが、3~4日後に行ってみると、ナスやピーマン、バジルの茎から新しい葉っぱがどんどん生えてきている。オクラやきゅうりは完全に死んでしまったが、他の植物は復活の兆しが見えてきた。
野菜は油断するとすぐ虫に喰われたり病気になったり、水や肥料が足りないとすぐ元気がなくなったりするが、簡単には死なないしぶとさもある。自分の人生も、こうありたいと思う次第である。