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楽天グループ、5年ぶりの通期営業黒字 モバイルは1000万回線目指す
2025年2月14日 19:10
楽天グループは14日、2024年度通期および第4四半期の決算を発表した。通期の連結売上収益は2兆2,792億円(前年同期比10%増)となり、創業以来28期連続の増収を達成。セグメント別では、「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」のすべてで売上が伸びた。
Non-GAAP営業利益は70億円、IFRS営業利益は530億円を記録し、2019年以来5期ぶりの通期連結黒字化となった。通期EBITDAは3,260億円(前年同期比120%増)と大幅に成長した。
モバイル事業の改善 契約数は830万回線に
モバイル部門の売上収益は4,407億円(前年同期比20.9%増)。Non-GAAP営業損失は前年同期比1,056億円改善の2,089億円となった。
楽天モバイル単体では、売上収益が2,839億円(前年同期比26.2%増)と増収。EBITDAは通期で538億円の赤字だったが、前年同期比987億円改善し、24年12月には単月黒字(23億円)を達成した。特に、12月に開催した「楽天モバイル最強感謝祭」による広告収入増加が収益改善に貢献した。
契約回線数は24年末時点で830万回線となり、1年間で177万回線増加。解約率は1.38%に低下し、ARPU(1回線当たりの平均収益)は55円増の2,856円となった。データ通信量の多いユーザーが増えたことや、広告増収や一部オプションサービスの有料化がARPU伸長に寄与した。
三木谷会長は「楽天モバイルは単なる通信事業ではなく、楽天エコシステム全体を支える重要な要素」とし、「1,000万回線を目指し、地方や高齢層ユーザーの獲得を強化していく」と展望を語った。
インターネットサービス EC流通額は堅調に推移
インターネットサービス部門の売上収益は1兆2,821億円(前年同期比5.8%増)、Non-GAAP営業利益は851億円(同29.8%増)で増収増益を達成。
国内EC流通総額は前年同期比1.5%減の5兆9,550億円となったが、楽天トラベルの全国旅行支援終了や楽天ペイメントのフィンテック移管を除けば、前年同期比4.6%増と堅調な成長を維持した。
フィンテック事業 楽天カード・楽天証券が好調
フィンテック部門の売上収益は8,204億円(前年同期比13.1%増)、Non-GAAP営業利益は1,534億円(同37.9%増)で増収増益となった。
楽天カードのショッピング取扱高は24兆円(前年同期比13.7%増)と過去最高を記録。マーケティング費用の最適化や貸倒関連費用の抑制により、利益率が向上した。
「楽天銀行」の口座数は1,648万口座を突破し、預金残高は12兆円(前年同期比16.9%増)に拡大。また、「楽天証券」の口座数も1,200万口座を超え、NISAの市場シェア拡大を背景に順調に成長した。
楽天グループは25年度、「連結Non-GAAP営業利益のさらなる黒字拡大」「楽天モバイルの通期EBITDA黒字化」を目標に掲げる。楽天モバイルの1,000万回線達成に向け、地方・高齢層ユーザーの獲得を強化し、広告収入のさらなる伸長を図る。
また、三木谷会長はみずほFGとの戦略的資本業務提携の進捗については、双方にメリットのある形で様々な提携が進行中であると語った。
AI活用の「トリプル20」プロジェクトを加速
楽天グループは、AIを活用した業務効率化を推進する「トリプル20」プロジェクトを進めており、24年度には約105億円の営業利益を創出。25年度はその倍額となる200億円超の利益創出を目指す。具体的には、AIを活用したカスタマーサービスの自動化、広告のターゲティング精度向上、セマンティック検索の導入などが成果を上げている。
さらに、楽天市場ではAIによる商品レビューの自動要約や、ユーザーの購買履歴に基づいたパーソナライズ検索を導入。例えば、普段革製品を購入するユーザーには「ブラシ」と検索するとシューズブラシを、ヘアケア商品を多く買うユーザーにはヘアブラシを優先的に表示するなど、個別最適化を実現した。また、法人向けには、「楽天AI for Business」を月額1,100円(1ライセンスあたり)で提供を開始した。
また、三木谷会長は、「GoogleやAmazonなどのハイパースケーラーと競争するのではなく、エコシステムを活かした消費者向けAIサービスや、楽天シンフォニーを通じたネットワーク技術の外販に注力する」と述べた。