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KDDI社長交代、ローソン×povoや“スマホのスターリンク”に進捗

KDDI髙橋誠社長(左)と4月に新社長に就任する松田浩路常務(右)(写真提供:KDDI)

KDDIは、2024年度第3四半期決算を発表した。また同時に、4月1日付けで社長が交代することも発表された。

KDDIの連結売上高は、前年同期比2.3%増の4兆3,642億円。連結営業利益は前年同期比2.0%増の8,646億円で、通期予想に対する進捗は77.9%。当期利益は5,365億円だった。営業利益は、主要事業の成長とローソンの好調な業績が貢献した。

通信事業ではARPU(1契約あたりの月間収入)が対前年比で増収を見込むほか、各モメンタムの回復を報告、総合ARPUも増加トレンドを維持する。

ローソン×povo、eSIM販売も

ローソン関連は、店舗を訪れるとpovoの100MBのデータトッピングがもらえる「データオアシス」について、ローソン全店の9割で延べ10万人が利用し、来店者数の増加や日販拡大にも奏功しているとした。ポスターなどが張り出されることで、povoのプロモーション効果や認知度向上に役立っている側面も大きいとしている。

また、すでに明らかにされているように、今後ローソンの店頭でpovoのeSIMを販売するパッケージを取り扱う予定で、両者の連携を強めていく。

スマホ×スターリンクは200万台規模で春に

ネットワーク関連では、スターリンクのスマートフォン向け衛星ネットワークを既存のauスマートフォンから利用できるようにする通信サービスについて、今春に200万台規模でサービスを開始すると案内された。

当初2024年末にサービス開始とアナウンスされたものの、「2025年春に開始」と延期されていた。商用免許の認可の取得をはじめサービス開始の準備は2024年末で整っていたというが、当初の構想より対応機種を拡大、200万台規模でスタートできるよう試験を行なっている最中としている。対象端末はAndroidで、iPhoneも対応を予定している。

サービス開始時点ではRCSを使うメッセージングサービスになる予定で、端末上ではGoogleのAIサービスであるGeminiとの連携も図っていくという。

新オフィスやAIデータセンター

KDDIの本社は高輪ゲートウェイ駅直結の街「TAKANAWA GATEWAY CITY」に移転する予定。DXを推進し他社にソリューションも提供する企業として、自社をモデルケースとし、街全体にデジタル化を広めていくとしている。

このほかシャープの堺工場跡地に建設するAIデータセンターについて、NVIDIAの最新GPUを導入すると表明。通信サービスの発展がAIの活用と深く結びついていくという方針のもと、基盤技術やインフラとしてのAIデータセンターにも投資していく。

業績サマリー

常務の松田浩路氏が新社長に

KDDI 取締役執行役員常務CDOの松田浩路氏が昇格し、4月1日付けでKDDIの代表取締役社長CEOに就任する。現社長の髙橋誠氏は代表取締役会長に、田中孝司氏は取締役相談役に就任する。

KDDI 取締役執行役員常務CDOの松田浩路氏。4月1日付けでKDDI 代表取締役社長CEOに就任する(写真提供:KDDI)

松田氏は1996年にエンジニアとして入社し、3Gから5Gまで各通信世代のローンチに関わったほか、商品開発やマーケティングも担当。また、アップル、グーグル、クアルコムなどグローバル企業との交渉に携わり、最近ではスターリンク(SpaceX)とのサービスをまとめ上げた実績をもつ。就任時点で53歳で、高橋氏は若返りも意図したとしている。

「5Gが本格化する中、AIをフル活用していく。KDDIは希有なデジタルデータの資産を持っており、AIで新しい価値を創造する原動力になる。“つなぐチカラ”を新次元にアップグレードして、事業に昇華していく。急速に変化する時代だからこそ、KDDIのフィロソフィーを大切にしていく」(松田氏)

松田氏の好きな言葉は「準備万端」。しっかりと準備しておくことでチャンスを呼び込める、とした

高橋氏「頑張ったかなと思う」

社長を退く髙橋氏は、約7年間の在任期間について、長時間の通信障害が起きたこと、そこから奮起して通信サービス品質の改善に取り組み、外部の調査で高い評価を得るに至ったことが一番印象に残っていると振り返った。

髙橋氏(写真提供:KDDI)

また、「ライフデザインの融合といって始めたが、いろんな産業に出ていく、そのベースが作れたのではないか」と、通信を核にさまざまな分野と連携していく取り組みの成果を語っている。

基盤となる通信インフラも、5Gに積極的に投資してきた。「5Gは当初ユースケースが無いと言われたが、最近はYouTubeを中心にトラフィックがものすごく増えている。5Gのユースケースは明らか。これからはAIが絡み、レイテンシー(5Gの特徴である低遅延)も重要になってくる。そのベースとして5Gはよく構築できたのではないか」(高橋氏)

多数の自然災害やコロナ禍、自社の通信障害といった逆境も多い中、高橋氏は5Gの構築に尽力し、金融事業との連携を深め、法人向けでは「通信があらゆる分野に溶け込んでいく」というビジョンの基礎を形作った。氏は「そんな時代を過ごせたのは、頑張ったかなと思う」と和やかに締めくくっている。

KDDI髙橋社長(左)と松田浩路常務(右)。(写真提供:KDDI)