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富士ゼネの「身につけるエアコン」を試す 冷却/加熱切り替えが秀逸
2025年1月23日 08:20
富士通ゼネラルが、“身につけるエアコン”として展開している「ウェアラブルエアコン」の新モデルを3月に発売する。現在は予約を受け付けており、発売に先駆けてメディア向けの体験会が開催されたので使用感をレポートする。
ウェアラブルエアコンは社長直属の新規事業として、2018年にプロトタイプを発表して大きな話題を呼び、2021年に製品化。改良を重ねて第3世代まで展開しており、今回発売するのが第4世代にあたる。
作業現場などの暑熱環境を主な利用シーンとしており、原則法人向けと位置づけているが、予約ページでは個人事業主の受付も対応している。価格は60,000円で、3月31日までの予約で55,000円で購入可能。
ウェアラブルエアコンの大きな特長は、水冷式のペルチェ素子を採用している点。首元にプレートを備え、操作部で「冷却/加熱」を切り替えて使用する。いずれも温度は「LOW/MEDIUM/HIGH」の3段階。
水冷式で40℃の暑熱環境にも対応
ペルチェ素子は冷却する際に熱も発生するという特性があり、冷却時に発生する熱をどうするかという課題があった。ウェアラブルエアコンでは水冷式を採用し、本体内の水を利用して放熱する。水は約6カ月に1回、本体に注水して充填する。
ペルチェ素子の冷却は水冷式のほか、ファンなどを利用した空冷式もあるが、水冷式は冷却力に優れており、外気温40℃など過酷な環境でも圧倒的な冷却力を発揮できることを特長としている。
同社ウェアラブルエアコンは、特に鉄鋼現場で高く評価され、導入実績は累計800社以上にのぼる。「作業現場での暑熱対策製品はファン付きウェアなどもありますが、空気を送るものは体温と近い環境だと熱風を送ることになります。ウェアラブルエアコンは水冷式なため、猛暑現場でも冷たさを維持できます」(富士通ゼネラル Life Conditioner開発部 佐藤龍之介氏)
多くの現場で利用されているが、これまでのモデルはバッテリーや水冷式熱交換部となるラジエーターを腰に巻き、首元の冷却部とはチューブでつなぐ必要があった。
「冷却性能は十分満足、と言ってもらえているのですが、その反面もっと手軽に使いたい、チューブと腰部分をなくしてほしいという声もありました。そうした不満を解消するため、新モデルの開発は全部品を見直して新たに設計しました」(佐藤氏)
新モデルでは冷却部と水冷式熱交換部を一体化し、チューブレス仕様に変更。これまで腰に巻いていた熱交換部の装着が不要になり、装着時間はこれまでの約30秒から約10秒に短縮された。
装着重量は、前モデルが890gだったのに対し、新モデルは650gと30%低減。使い心地が大幅に改善され、これまでは動きの少ない鉄鋼現場などが主な利用先だったが、今後は建設業や物流関係、イベント関係など動き回る現場でも利用しやすくなるという。
バッテリーはリチウムイオン電池で、充電時間は約2~3時間。連続使用時間は約2~7時間。
しっかり冷却、温熱も心地よい
実際にウェアラブルエアコンを装着してみた。首の裏に冷却プレートが当たるようにし、面テープで固定。電源を入れると首元からギュルギュルと音がして、水が流れているのがわかって面白い。
まずは「冷却」をMEDIUMで使ってみたが、20~30秒ほどでプレートがひんやり冷たくなるのを感じ、しっかり冷たくなっていた。HIGHにするとさらに冷たく、LOWでも十分ひんやりしていた。
今度は「加熱」をMEDIUMで使用。温めるほうが時間は掛からず、切り替えたらすぐにプレートが温かくなり、首にホットタオルを当てた時のような心地よさがあった。試しに屋外に出てみるとその温かさはさらに感じられ、冬の冷え込む時期の利用にかなり良さそうだった。
なお、チューブレスにはなったがバッテリーはつながっているので、ポケットなどに入れる必要はある。バッテリーは軽量・小型なので、ポケットに入れても違和感はない。
試しに第1世代のバッテリー兼ラジエーターを持ってみたらかなり重くチューブも太いので、新モデルはかなり改良されているのがよくわかる。
同社は、2024年10月に、今後の方向性として「Creating a Life Conditioner」を掲げ、同社の製品やサービスを通じて快適さを創造することを宣言。空調事業を中心にさまざまなソリューションを提案しており、ウェアラブルエアコンでは、気候変動により夏の暑さが厳しくなっている現代の暑熱環境で働く人に快適を届けることで、社会課題の解決を図っていくという。
また、1月6日にはパロマ・リームホールディングスによる買収が発表され、完全子会社となることが予定されているが、現状は予定という段階で、開発などにすぐに影響することはないという。
富士通ゼネラルとしての今後のビジョンは、2026年までは既存の事業との親和性が高い事業を拡大し、2027年以降は新たな付加価値ビジネスの創出を図っていく。