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通信とAIが“溶け込む”時代 KDDIが目指すAIビジネス変革

KDDI SUMMITのイメージビデオ。生成AIで制作

KDDIグループ最大のビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2024」が9月3日に開幕した。通信とAIを使った様々なサービス展開について、パートナー事例とともに紹介・共有するイベントとなっており、初日の3日には高橋誠社長によるオープニング基調講演を開催。KDDIが力をいれるAIと通信が“溶け込む”事業展開について説明した。また、OpenAI Japanの長崎社長との対談も行なわれた。

通信とAIが“溶け込む”時代のKDDI

冒頭、KDDIのソリューションなどのイメージビデオを再生した。登壇したKDDI高橋社長は、この動画が生成AIとプロンプトで作られたものであるとし、生成AIが広がり、手軽になったこと、産業を変える大きな可能性があると言及。AIを使ったKDDIの取り組みを語った。

KDDI高橋誠社長

高橋社長は、「2050年の世界」(ヘイミシュ・マクレイ著)の言葉を紹介しながら、高齢化が進む日本が課題先進国であること、その中で穏やかで秩序ある社会を作り、安心で誰もが憧れる生活様式を国民が送れるようにするために、「日本が教えられることはたくさんある」とする。その事例として、KDDIがグローバルスタンダードが好きで、付加価値をつけて成功してきた会社である(例:cdma、スターリンク)と説明。グローバルスタンダードに付加価値をもたらし、社会にインパクトを与える、「そのチャンスの時」と語る。

2050年の世界と日本の価値

日本の社会課題である、人口減に対しては、AIを先行的に入れていくことが課題解決につながるため、なるべく早く取り組むことが重要とする。また地域にとってのモビリティ活用などでも先行していくと強調した。

カーボンニュートラルに向けた電力効率化については、日本で様々な取り組みが行なわれており、単純にデータセンターの消費電力増が課題となるのではなく、エッジやオンデバイスの活用により分散していくと説明。消費電力の問題も日本の知恵を活かしていく余地は大きいとする。

人口減に対して、IoTは爆発的に成長し、すべてのモノにAIが入り、すべてのモノに通信が入る。そうした基盤づくりが日本にとって重要とし、こうした未来をパートナーと作っていくと訴えた。

KDDIの事業展開としては、高速5GのSub 6の基地局数増のほか、スターリンクを使ったスマートフォンとの直接接続を2024年中に実現。「空が見えれば、どこでもつながる」を目指し、基本的な通信ネットワークの強化を図っていく。

こうした通信基盤の上に、生成AIの業界特化型モデル「WAKONX(ワコンクロス)」を6業界向けに展開。「日本らしいバリュー」を作り出していくとし、モビリティ、小売(リテール)、ロジスティクス、放送、スマートシティ、BPOの各領域を特化領域として強化する。

WAKONX

KDDIが出資するELYZAとの連携により、特化型LLMなどを開発。データセンターは、シャープ堺工場跡地にAIデータセンターを構築するほか、多摩データセンターにはハイパースケーラーを、小山データセンターにはコンテナ型DCを構築する。

AIの応用例としては、世界各地で「一丁目一番地」と言われているのが「コンタクトセンター」。LLMの活用により、ユーザーの課題解決を実現するため、ELYZAやコンタクトセンター運営のアルティウスリンクと特化型LLMアプリを開発した。また高セキュリティの法人向けソリューションなどもELYZAと共同で進めている。

もう一つ強調したのがローソンだ。高橋社長は「フィーチャーフォンの時代は強い顧客接点を持っていた。しかし、iPhone/Androidになり、接点がグローバルに持っていかれた。我々はもっとお客様に身近な会社になりたい」とし、ローソンへの出資・共同運営を決めた。ローソンとの取り組みでは、「ローソンタウン」を構築。リテールテックの省人化や次世代モビリティによる買い物難民救済、スターリンクによる災害支援、再生可能エネルギー活用などに取り組む。

なおローソンへの出資は、投資家から、利益率の低い小売への投資に否定的な声が多く、「抗弁するのが大変だった」とのこと。ただし、米国ではリテールテックが盛り上がっており、またソーシャルインパクト(社会的意義)が高いとされており、高橋氏も「そこが大事。高齢者社会で何ができるか、ローソンタウンでなにができるか。例えばローソン店舗1,000カ所ドローンを置いて、10分以内に駆けつける、といったことも可能になる。米ニューヨーク市警では同様の事例があり、通報からすぐにドローンが駆けつける体制を作っている」とのこと。こうしたことは日本でもできるとする。

スタートアップ投資については、「スケールすることが重要」と説明。KDDIは縦を伸ばすスケールアップを重視し、ユニコーン企業を増やすという。

高橋社長は、「あらゆるシーンに通信×AIが溶け込み新たな価値が生まれる時代」に向けてKDDIは取り組むと強調。パートナーへの強力を呼びかけた。

AIの進化を早期に取り込む

また、OpenAI Japanの長﨑 忠雄社長も登壇。ChatGPTのユーザー数は、2億を超え、歴史上最速で成長しているとする。

OpenAI Japan長﨑 忠雄社長

一方、AI活用については、経営層は最優先事項とし、社員/スタッフもAIの学習意欲が非常に高いものの、AIについて骨太の戦略を持っている企業は「30%に過ぎない」と説明。組織がAIを導入するほか、AIによる自動化、自社製品/サービスへのAI組み込みなど、各段階を進めていく必要があるとする。

特にAIモデルの更新速度は早く、バージョンアップで大きく進化する。OpenAIの次世代モデルも、これまでのバージョンアップと同じく「100倍近く進化するだろう。指数関数的な成長は、従来のソフトウェアとは全く違う進化の形」と言及。そのため早期にAIを組みながら、進化に並走し、AIの力を取り込んでいくことが重要だとする。

長崎社長は、KDDI高橋社長と対談しながら、「ぜひ我々のフロンティアモデルを実際に使い、こういうふうに動くんだ。というのを肌で体験してほしい。“問いに答える”ソフトウェアは、我々がこれまで対峙してきたソフトウェアと全く違うもの。トライアンドエラーで使うたびに自分の能力も上がる」と強調した。

KDDI高橋社長(左)とOpenAI Japan長崎社長(右)