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開成高校がPayPay導入 生徒主導で食堂のモバイルオーダーアプリ開発

開成高校の生徒が開発した食堂のモバイル注文Webアプリ「学食ネット」の利用イメージ

PayPayは、開成学園の食堂で利用できるモバイル注文Webアプリ「学食ネット」の決済方法として「PayPay」が採用されたと発表した。同校の食堂で9月以降に本格導入される。

食堂の食券機に並ばずに注文・決済できるモバイル注文Webアプリ「学食ネット」は、開成高等学校の2名の生徒が、食券機に並ぶ列や混雑を課題と捉え企画・開発したもの。PayPayが開発者向けに公開している「Open Payment API」を活用して開発され、PayPayアプリと連携し決済が可能。食堂の運営事業者と連携しながら開発を進めたほか、PayPayも開発をサポートした。今回は食堂事業者がPayPayの加盟店になるという形をとり、決済手数料も支援されている。

企画・開発した開成高校(東京都荒川区)の生徒によれば、中高一貫の同校の食堂は主に高校生が利用。高校の生徒数は約1,200人で、このうち400~500人が食堂を利用。食券機は2台で、利用が集中する昼休みには30~40人が並ぶ状況になるという。このため、昼休みに済ませる用事がある生徒は食堂の利用を諦めたり、急いで食べたりするといったことが起こっていたという。

開発にあたっては事前にアンケートも実施。「PayPay」アプリは7割の生徒がインストール済みで、使っていない生徒もこれを機にインストールする意向を示した。

お金に相当するものを取り扱うとあって、開発中は、ユーザーが想定外の操作をしたときに問題ないように処理する例外処理に苦労したとのこと。

食堂事業者とも連携し、食堂のスタッフの操作で売り切れ商品をリアルタイムに反映する仕組みも実装したほか、1週間分のメニューを事前登録できるようにした。また、購入された食券が利用されなかった場合、アプリ上で自動返金し、従来のようにスタッフが現金で返金する手間を省けるようになっている。

利用の流れ。Webアプリを開きメニューを選択
決済方法でPayPayを選択すると「PayPay」アプリに遷移
画面をスタッフに見せて料理を受け取る
厨房スタッフ側は売り切れなどを操作可能。リアルタイムに反映される
厨房側で1週間分のメニューを登録できる

テストで利用した生徒からは、「PayPayでお小遣いをもらっているので便利」という声や、食券機の前で焦ることなくじっくり選べることなどが好評だったという。

今後はアレルギー表示への対応や、現在の食堂の混雑状況を表示するような仕組みも検討中とのことだった。また他校でも導入できるよう、今回開発されたアプリの情報が公開されている。

今後の展望

若年層の利用に伸びしろ

PayPay 執行役員 営業統括本部 エンタープライズ営業第一本部本部長の高木寛人氏

PayPay 執行役員 営業統括本部 エンタープライズ営業第一本部本部長の高木寛人氏は、キャッシュレス決済の市場シェアだけでなく、個人間送金でも「PayPay」はシェアの大半を占めており、決済よりも伸びが大きく「非常に戦略的に取り組んできた」という。

中でも、4割は現金のみという若年層のマーケットについては「非常にポテンシャルが大きい。PayPayの利用・浸透には伸びしろがある。中期的なPayPayの戦略にとって重要」と注視している。

すでにPayPayは、お小遣いやお年玉といった家族での個人間送金に注力しているほか、先日発表したデジタル給与払いの取り組みなども含めて、若年層が成長していくどの段階でもPayPayが使える環境を整備していく方針。テストを実施して順調というお小遣いの定期送金機能も今後全国展開を検討している。

現金を利用する機会が多いという学校向けの取り組みでは、学園祭にキャッシュレス決済の導入を支援する「キャッシュレス学園祭」を実施、2023年は20校で開催され、今年はさらに増加する見込み。必修化される金融教育にもPayPay証券が出張授業などでサポートを行なっていく。

一方で、今回の開成高等学校での取り組みは生徒の自発的な企画・開発によるもので、支援プログラムなどが事前に用意されていたわけではなかったという。

「(学校に対し)外部からの働きかけは難しいと感じていたが、生徒からの起案で、食堂事業者も巻き込んだものになった。頼もしい事例で、全面的にバックアップさせてもらった」(高木氏)と、同社の若年層向けの取り組みに合致したことが語られている。

左から、PayPayの高木氏、開成高校3年生の秋山 弘幸さん、2年生の周 詩喬さん