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イオンのネットスーパー「グリーンビーンズ」一周年 横浜や柏・流山に拡大

イオンネクストは3日、ネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」の開始1年とともに今後の戦略について発表した。2024年度には東京都 板橋区や足立区、中野区、杉並区などにエリア拡大。さらに横浜エリアや柏・流山エリアについても対応を進める。

1年で会員数21万人 エリア拡大に積極投資

「グリーンビーンズ」は、2019年11月にイオンと提携した英国Ocadoとの協力により実現。店舗型でなく、大型の自動倉庫からの商品を出荷し、徹底したコールドチェーンによる高い鮮度管理が特徴。新鮮な食料品から日用品まで、玄関先まで配達してくれる。配送網も含めてイオングループで管理する点が特徴となる。最低利用料金は商品合計4,000円(税別)以上。

'23年には、新宿区や千代田区など東京都区部や川崎や千葉の一部地域からスタート。その後世田谷区や文京区・墨田区、川崎市の多摩区や麻生区、千葉市の広いエリアなどに拡大。会員数は21万人を超えた。

利用者は6割が東京、3割が千葉、1割が神奈川。エリアとしては、イオンが“少ない”世田谷区や港区のほか、大規模マンションが多い湾岸エリアなどで人気とする。世代別では、共働き子育て世代の30~40代を中心だが、50代もかなり多く、「イオングループにとって新しいお客様が利用されている」(イオンネクスト 野澤 知広副社長)とする。

イオンネクスト野澤社長によれば、特に共働き世帯から支持されている理由は、最短当日、朝7時から夜23時まで1時間単位で配達できること。仕事前の朝7時から9時の時間帯が人気のため、一部地域では朝6時からの配達も試験的に開始したという。

また、こうした細かな時間指定により、結果として不在率が減っており、再配達の削減にも寄与しているとする。

グリーンビーンズの強みは「生鮮食品」。特に、生鮮食品を収穫直後から配達まで温度を一定のまま実施する「コールドチェーン」を実現していること。この点と時間指定は自社配達網を構築したことで実現されたという。作業の標準化やデジタル化を進め、また、配達員も同社が雇用するため「接客の責任者」としての役割を配達員が担うとする。配達員の女性比率は13%で、「(他社と比較して)非常に高い水準」としている。

配送のための「フルフィルメントセンター」は、千葉市の「誉田CFC」。大田区や荒川区、川崎市高津区などに「スポーク」と呼ぶ分配拠点を設けている。今後板橋区や市川市、江戸川区などにもスポークを設置。板橋区への設置により、8月からは豊島区・練馬区もグリーンビーンズのエリアになるほか、秋には豊洲・葛西・市川の3拠点を開設し、配送効率を向上しながらエリア拡大する。今後は、横浜エリアや柏・流山エリアへの拡大を予定している。

現在、商品供給は誉田CFCのみだが、2026年度には「八王子CFC」を稼働。東京や神奈川向けの物流拠点となる。さらに2027年度を目処に「埼玉県久喜宮代CFC」を稼働。面積で誉田CFCの1.5倍と広大な拠点となる予定で、生鮮食品の産地にも近いことから今後のグリーンビーンズの核となるCFCとなる。また、Ocadoとの協業によるロボティクス導入においても倉庫の自動化を進めていく。

生鮮食品は肉・果物強化。ネットならではの強み

グリーンビーンズの人気食品は、生鮮食品やミールキットなどで、一般的なスーパーに近いものが中心で半分近くを占める。加えて、イオンのPB「トップバリュ」が買えることや冷凍グルメ、「ストック品」と呼ぶ大容量の食料や飲料についても運ぶ手間を削減できることから、多く購入されている。

食品が中心だが、オーガニック食品やワインなど、ヘルス&ウェルネス分野の商品も強化しているほか、薬や日用品、ベビー用品、ペット用品などにも拡大。非食品カテゴリーは売上構成比で2割を超えているという。

今後の商品強化については、商品だけでなく「サービス」も提供していく。まずは、救急医療の「ファストドクター」と連携し、グリーンビーンズからオンライン診療や往診の申し込みが可能になるほか、ファストドクターからグリーンビーンズの商品購入などの仕組みも構築する。

コールドチェーンが特徴のグリーンビーンズだが、新鮮な生鮮食品を保証する「鮮度+」は累計販売数が25万点となり、人気ブランドになった。一週間の鮮度保証を行なうことで、「ネットで野菜を買うのは不安」という声に対して、安心感を提供していることが好評の理由という。

今回、「鮮度+」を肉・畜産に広げることも発表した。2024年中に野菜だけでなく、肉においても鮮度+を開始し、30品目を対象商品とする。

さらに果物の“食べごろ”を期間保証する「食べごろ+」を開始する。果物の産地から一貫した温度管理と熟度管理を行ない「届いたその日から食べごろ」を実現する。品目はキウイ(5品目)やアボガド(1品目)、メロン(2品目)など8品目で、価格は298円~1,280円。

イオンネクストの太田正道 副社長は、「ネット専用スーパーとして、ネット専業だからできることを強化していく。鮮度+はその一例。『ネットなのに新鮮』ではなく、『ネットだから新鮮』が実現できる」と説明した。

今後の事業拡大については、今後1年で「会員数倍増を目指す」と説明。現在のグリーンビーンズは先行投資フェーズだが、「日本の共働き世帯の比率は上がり続けており、子育て世代の共働き世帯は70%を超えた。買い物の面倒を減らすサービスのニーズが減ることはない。食料品の粗利率は低いが、様々な品揃えにより、店を超えた便利なサービスを実現していく」とした。