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オニツカタイガー、サボテンで作った「メキシコ 66」
2022年10月27日 14:50
オニツカタイガーは、メキシコのサボテンから作ったシューズ「MEXICO 66 CACTFUL」(メキシコ 66 カクトフル)を2023年1月に発売する。価格は16,500円。1万足を製造し世界15カ国で発売、主力商品として継続販売していく。
ブランドの代名詞的存在である「メキシコ 66」のデザインはそのままに、アッパー素材にサボテン由来の素材を初めて20%以上採用した。天然皮革(アニマルレザー)と同等の性能を有するほか、軽量で独特の風合いがあり、明るい色や薄い色など採用カラーの発色を良くできるという特徴も備える。アッパー素材以外も環境に配慮した素材が用いられる。
カラーはホワイト、イエロー、ブルー、パープル、グリーンの5色を展開する。サイズは22.5~30cm、31cm。重量は228g(27cm、片足)。
オニツカタイガーは、メキシコのAdrian and Marte(エイドリアン アンド マルテ)の「DESSERTO」(デザート)との共同開発で、今回のアッパー素材を実用化している。
DESSERTOがサボテンで作る素材は、フタル酸エステルやPVC(ポリ塩化ビニル)などの化学物質を使用しないシンセティックレザー(人工皮革)として製造。製造過程での水の消費量も少なく、環境に配慮した素材として注目されている。耐久性が高く、紫外線への耐性があり、しなやかな風合いも特徴。
オニツカタイガーがアッパーに使用した今回の素材は、従来のアニマルレザーと比較して製造過程での二酸化炭素排出量は84.8%削減できるとし、さらに製造時に残る部分は、食用に活用される。またインナーソール、シューレースなどにもリサイクル素材を使用、環境負荷の低減に努めた商品となる。
オニツカタイガーとDESSERTOの共同開発にあたっては、1年以上の試行錯誤が続けられ、靴の革として使用した際の屈曲性や履き心地といった柔軟性の確保に成功。紫外線への耐性があり変色しづらいほか、耐久性は通常のレザーと同等で、アシックスの基準を満たしている。
重量も軽くなり、メキシコ 66の通常レザーモデルは250gのところ、メキシコ 66 カクトフルでは228gになる(どちらも27cm、片足)。両足合計で40~50g程度の軽量化になるという。
また試行錯誤の過程で、DESSERTOのイタリア工場の高い染色技術を採用。一般的なアニマルレザーでは表現できない鮮やかな発色を実現している。これは、サボテンの繊維などを用いる素材には、アニマルレザーのような素材由来の色が付いていないためで、その特徴を端的に表せるよう、製品には鮮やかな色や薄い色が採用されている。
なおオニツカタイガーでは、今回開発されたサボテン由来のシンセティックレザー(人工皮革)は、メキシコのDESSERTOや駐日メキシコ大使館などさまざまな関係者の協力で実現した商品とし、今回開発した素材の知見を、ほかの企業やブランドも使用できるようにするという方針を明らかにしている。
主力商品として継続販売
オニツカタイガー カンパニー長の庄田良二氏は、「幅広い層の方に、お求めやすい価格帯で提供する。世界で1万足を販売し、主力商品として継続販売していく」と説明し、プレミアムな限定モデルではなく、継続した取り組みであることを明らかにした。同様のサボテン由来の素材を使う商品はほかにも展開していく予定で、その素材に関する知見は他社ブランドに提供できるとし、取り組みのスケールを拡大していきたい考え。加えて、麻素材やプラントベースの素材など、ほかの自然由来の素材も検討していく。
素材になるウチワサボテンはメキシコに数多く生息。メキシコにおいてサボテンは観賞用やヘアケア用品に使われるほか、栄養機能性が高く国連が消費を推奨するなど、優れた食品としても活用されており、メキシコの基幹産業になっている。
今回の新作シューズの発売にあたっては、駐日メキシコ大使館もシューズのデザインやコンセプトの監修を行なっている。駐日メキシコ大使のメルバ・プリ―ア氏は、1970年代ごろにバレーボール選手だったとのことで、「オニツカタイガーのシューズを履くのは夢のようなことだった」と思い出を語ったほか、「サステナビリティの観点でサボテンを採用してもらうのはありがたいこと」と感謝のコメントを寄せている。