ニュース

楽天・西友・パナがつくばでロボット配送。最短30分110円でお届け

楽天グループ、西友、パナソニック ホールディングスの3社は、自動配送ロボット(Unmanned Ground Vehicle:UGV)の公道走行による配送サービスを、つくば市内で5月28日から7月30日まで提供する。26日にはつくば駅近くの「つくばセンタービル」でデモンストレーションが行なわれた。

7月30日までの毎週土曜日に、「西友つくば竹園」店から注文された商品をロボットを使って最短30分以内、または指定時間に自動配送する。対象ユーザーはつくば駅周辺の約1,000世帯。対象商品は「西友つくば竹園」が扱う商品のうち、生鮮食品、冷蔵・冷凍食品、お弁当・お惣菜を含む飲食料品や日用品など2,000点以上。配送手数料は110円。

対象エリアはつくば駅周辺地域
サービスの概要。冷凍食品や生鮮食料品も可。配送手数料は110円

ユーザーはスマホを使って注文サイトから商品を選び、配送先住所と時間帯(11時から18時までの1時間ごとの8枠)を指定して注文する。支払いには楽天IDを用いる。商品を積載した自動配送ロボットは指定の住所に到着すると、自動音声で電話やSMS通知で到着を知らせる。注文したユーザーは暗証番号を入力して扉を開錠して商品を受け取る。配送中は専用サイトでロボットの位置情報や到着予定時刻を確認できる。

サービスの一連の流れ
ロボットに注文された商品を積載するところ
最大積載重量は30kg
ロボットは時速4km程度で自動走行して商品を配送する

配送ロボットはパナソニック製、東京から遠隔監視

パナソニック「X-Area Robo」

使用される自動配送ロボットはパナソニック製の「X-Area Robo(クロスエリア・ロボ)」。最高速度は時速4km。本体サイズは115×65×115cm(長さ×横幅×高さ)。最大積載重量は約30kg。基本的に3Dマップをもとに自動走行するが、本体に4つのカメラを搭載しており遠隔で監視を行ない、何かあった場合は人が遠隔から介入する。なお、ロボットには保安要員が一人随行する。

ロボット配送用のロッカー、保冷ボックスも開発した
今回は保安要員が一人随行する。無線で接続された非常停止ボタンを持っている

遠隔監視センターは60km離れた東京・汐留の「Panasonic Laboratory Tokyo」に設置されている。パナソニックの遠隔管制システム「X-Area Remote」が用いられている。

実用化を目指した最終形態に近いかたち

楽天グループ コマースカンパニー ロジスティクス事業 ドローン・UGV事業部 ジェネラルマネージャー 向井秀明氏

これまでに楽天と西友は横須賀市他で、パナソニックは藤沢SST他で自動配送の実験を重ねてきた。2月には楽天とパナソニックも参加する一般社団法人 ロボットデリバリー協会が発足し、安全基準制定や認証の仕組みづくりに取り組んでいる。またつくば市は「つくばスマートシティ協議会」を作り、2022年4月には「スーパーシティシティ型国家戦略特別区域」に指定されている。

楽天グループ コマースカンパニー ロジスティクス事業 ドローン・UGV事業部 ジェネラルマネージャーの向井秀明氏は、「注文から最短30分で配送するロボットによるオンデマンド配送を国内で初めて実現した」とアピールした。従来の実験に比べて、対象世帯数が80世帯程度から1,000世帯と大規模になり、常温に加え生鮮や冷凍・冷蔵商品を扱え、手数料を取るなど実用に近づいた。配送時間についても「分単位で正確に把握できる」という。店舗向けの受発注システムも開発した。向井氏は「今回は実用化を目指した最終形態に近いかたちになっている」と語った。

注文はスマホから。ロボットの位置情報もわかる
店舗用の受発注システムも新規に開発した

同UGV事業課 シニアマネージャー 牛嶋裕之氏によれば、以前は園芸用の土などを運んでもらうことを選んだ人が多かったが、今回は冷蔵・冷凍商品も運べることから、食品類が増えるのではないかと考えているという。なお今回のデモでは実際の住民が注文したものを運搬したが、内訳は猫の餌、ビール、お惣菜などの食品だった。住民は、「子育てなどで時間に追われるなか、ある程度時間帯を絞って注文できる点はありがたい」とコメント。今後については「冷凍食品などを頼みたい。あとは食事(テイクアウト)が来るといい」とのことだった。

注文した住民のマンションに到着
暗証番号を使って解錠、商品を取り出す
今回注文した商品は猫の餌やビールなどとのこと
配送が終了するとロボットは自動で拠点に帰還する

パナソニックは「サービスに溶け込むロボット」を実現

パナソニックホールディングス テクノロジー本部 モビリティソリューション部 部長 東島勝義氏

ロボットプラットフォームと運用ソリューションについては、パナソニックホールディングス テクノロジー本部 モビリティソリューション部 部長の東島勝義氏が解説した。東島氏は「事業者の多様なニーズに対応できるフレキシブルなロボット。安全を担保して、サービスに適したユニットに対応できる」とアピールした。システムが安定して動くようになったことから、現地運用も楽天側で行なえるようになったという。また現時点では法律の問題で操作員もシステムも個別となっているが拠点を一つとして運用効率化を図った。技術的には複数エリアの運用を一カ所の拠点から行なえる。

事業者の多様なニーズに応えられるロボットシステムを開発
システムは既に外部が運用できるくらい安定稼働

実用化のためにはロボットコストを下げる必要

本当の実用化にはコストを下げる必要がある

今後はデータを蓄積し、より広い地域や複数地域での配送サービス、1店舗だけではなく多店舗からの配送を可能にして実用化を目指していく。2023年には改正道路交通法が施行されるので、ロボット1台につき1人の監視者も必要なくなる。当初はコストは合わないと考えられるが、ロボット1台あたりのコストが下がっていくと、やがては一定の人口密度があるところであれば採算が合うようになると見ているという。楽天・向井氏は「コストダウンをいかに早く進めるか。その仕掛けが重要だ」と語った。