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国内外の最新オフィス家具が一堂に「オルガテック東京2022」
2022年4月26日 20:22
東京ビッグサイトにてオフィス家具の展示会「オルガテック東京2022」が開催されている。期間は4月26日~28日の3日間。オカムラやイトーキ、内田洋行、コクヨをはじめ、国内と欧州から80以上のブランドが参加した、オフィス家具に特化した展示会となっている。
「オルガテック」は、ケルンメッセが主催する、ドイツ・ケルンで定期的に開催されているオフィス家具の見本市で、同イベント初の海外進出として日本で開催されている。また日本国内でも、オフィス家具に特化した大規模な展示会はこれまで開催されておらず、ケルンメッセが日本オフィス家具協会と共同で主催する形で、同協会の加盟各社が参加している。
コロナ禍を経て、従前のフリーアドレスの加速や、在宅勤務の増加や定着、サテライトオフィスの活用など、働く環境は大きく変化しており、オフィス家具の市場も突然降って湧いたようなさまざまなニーズに対応する製品が各社から登場している。
大手メーカーの傾向は、固定席という概念を取り払った“フリーアドレス”化の流れを鑑みて、気軽に利用しやすいデザインやコミュニケーションを促進させるようなレイアウトのものから、ビデオ会議や機密の多い仕事に対応する個室ブース・集中ブースといった製品まで、コンセプトが大きく異なる製品が同居しているのが特徴。
自由なレイアウトを可能にする製品群「オカムラ」
オカムラは、高さの異なる机を組み合わせて自由なレイアウトが可能な「ワークキャリアー」をブース内で大きく紹介している。電源問題を解決する大型のポータブルバッテリーや最新チェア「スフィア」も展示。また、集中ブース、個室ブースもあり、最新のニーズに応えられる様子を紹介している。
テレワークカーやオフィス向け吸音パネル「イトーキ」
オカムラ同様に大きなブースを構えたイトーキは、目玉として日産自動車と共同開発した、後部がテレワークブースになっている自動車「MOOW」(ムーウ)を展示している。2022年度内に日産が販売する予定で、車両価格は500~600万円程度の予定。
しっかりとした机が備わり、仕事のしやすさに配慮。やや後傾デザインの座席を備え、可動式のノートPC用テーブル、収納、電源などを用意。エンジンで走る車だが、エンジンかけなくても仕事ができるよう、テレワーク用にリチウムイオンバッテリーを搭載。テレワーク用として小型エアコンも後部タイヤハウス近くに搭載しており、テレワーク用バッテリーで動作させる。内装の生地は複数種類から選ぶかカスタマイズに対応する見込み。
イトーキのブースではまた、ガラスにも貼れる吸音パネル「iwasemi HX-α」をブース内の各所に設置して紹介している。
“人”中心のフリーアドレス向けシステム「内田洋行」
内田洋行はほかのオフィス家具メーカーとは少し異なり、フリーアドレス化やテレワーク・サテライトオフィスなどのハイブリッド化が進むオフィスに向けたシステム「SmartOfficeNavigator」を紹介している。システム自体は2019年から提供、イベント初日には三菱自動車に先行導入したことも公表されているが、本格展開を開始するとして、オルガテック東京で大々的に紹介している。
システムのポイントは、人を中心要素として組み立てた点で、Wi-Fi接続の情報をキーにして、誰がオフィスに出勤しているのか、同じ部署のスタッフが近くにいるのか、会議室が混んでいるのかといったことを視覚的にも把握しやすくした。また専用アプリではなくWebベースとしたことで、Office 365やTeamsなど既存のサービスと連携しやすく、連絡をとるためのチャットなどもこうした各社のツールを使用する。社員はWebブラウザがあれば自宅のPCでもスマートフォンでもアクセスでき、出社してフリーアドレスの席に着く際や会議室を利用する場合は、QRコードや社員証のICカードでチェックインできる。
ケン・オクヤマ デザインのチェアや個室ブース「イナバ」
イナバ物置で知られる稲葉製作所の子会社、イナバインターナショナルは、奥山清行氏のデザイン事務所「KEN OKUYAMA DESIGN」(ケン・オクヤマ デザイン)がデザインしたオフィスチェアや個室ブースを展示している。奥山氏はフェラーリ(エンツォ・フェラーリ)をデザインした日本人としても知られ、オフィスチェアもスポーツカーのようなカラーや流麗なデザイン、ステッチ処理が特徴。
頑丈な物置で知られるように、同社はスチール素材の加工に強みがあり、チェアなどに用いるスチールパーツのOEM供給も行なっているとのこと。自社ブランドで展開するオフィスチェアや個室ブースもそうしたスチールパーツの加工ノウハウや頑丈さをベースに、高いレベルのデザインを組み合わせた。オフィスチェアの価格はトップモデルで20万円前後となり、オカムラなど国内有名メーカーのトップモデルと比較するとやや価格を抑えられているのも特徴。
ブースが遊園地!? 異彩を放つコクヨ
オフィス家具の展示会ということで、各社とも真面目なブースが多い中、異彩を放っているのがコクヨ。展示内容はオフィス向けのチェアやデスクなどに絞っているものの、遊園地のようなレイアウトとポップなパステルカラーで完全に周囲から浮いているのが印象的だ。
雰囲気だけでなく展示も物理的に浮いている。ジェットコースターのようにイスが並び、バルーンやメリーゴーランドのようにイスが吊られるなどやりたい放題。テーマも「Anyland」と遊園地をイメージさせるものだが、これは同社のチェア「Any」シリーズに由来している。
このシリーズは、短時間の会議に使うような簡素なミーティングチェアの分野でヒットしたシリーズ。シンプルな構成と全部材のカラーを揃えたデザインも特徴で、ブースでは当日、パステル系のピンクが新色として加わることも明らかにされている。
コクヨでは、オカムラなどと同様に、今後のオフィスに求められるのはコミュニケーションやコラボレーションの空間とし、気軽に使え、軽やかに動かせるというコンセプトのデスクやチェアなどを「Any way」ブランドで展開していく。
ビンテージスタイル「関家具」
関家具も少し雰囲気の異なる展示で、スチールを用いた無骨なビンテージ風のチェアや、籐を用いたチェアなど、「クラッシュクラッシュプロジェクト」の製品が目を引く展示になっている。これらは伝統的なオフィス空間というよりカフェなどの雰囲気に近く、今後求められるオフィス家具やオフィス空間にもさまざまな方向性があることを印象付けている。
同社ブースにはほかにも、メッシュ生地で高機能チェアとして根強い人気のエルゴヒューマンが展示されている。
欧州ハイブランドも登場
欧州ブランドで大きなブースを構えたのは「Knoll」を展開するノルジャパン。2009年発表の、エラストマー素材が特徴のチェア「ジェネレーション」はターコイズやピンク、鮮やかなイエローなどオフィス向けでは比較的珍しいカラーバリエーションを展示している。また多数の生地サンプルを展示して、ソファなどを個性的な見た目にできることも紹介されている。
海外ブランドの中でもハイブランドに位置付けられるカッシーナ・イクスシーも大きなブースを構えている。入り口には「エクソード ラウンジチェア」(649,000円~)がシンプルに堂々と置かれ、吸い込まれるような通路を進むと品の良いフレグランスでお出迎え。大きな壁で空間を巧みに切り替えて、ハイグレードなオフィスの雰囲気を複数作り出しているのも見どころになっている。
座り方が分からない? ユニークな海外製品
やはり大きなブースとなったプラスも、取り扱っている海外ブランドを積極的に展示している。チェアでユニークな形状なのはホーグの「カピスコ」。乗馬サドルからヒントを得たという形状は、前後どちらの向きでも使えるのが特徴で、横向きや、背もたれを胸の前にして座ることも可能。足を乗せるグリップが脚に設けられているのもユニーク。
座り方が一瞬分からないという意味では、「MAGIS」(マジス ジャパン)のブースに展示されている「360°チェア」が独創的。平均台のように細い座面で、くるくると回転させて好きな向きで座れるというデザイン。移動作業の多いデザイナーや美容師用スツールに向いているという。もっとも、最近の製品というわけではなく、ドイツのデザイナーにより2010年に発表された製品で、MoMAの永久収蔵品に選ばれるなどユニークなデザインが多方面で評価されている。
マジスのブースは小さいものの、ほかにも、三角形の組み合わせを基本に、ほとんどフレームだけのデザインになっているスタッキングチェア「チェア ワン」、座面を大きなネジのように回して高さを調整できるスツール「トム アンド ジェリー ザ・ワイルド バンチ」など、欧州のデザイン賞をいくつも獲得しているユニークなアイテムが揃っている。
欧州ブランドを含め、個別に見たり座って体験したりしようとすると難しいような“レア”なオフィス家具が一堂に会するのも、展示会の見どころ。主催者に近い筋によれば、一般の入場(有料)は業界関係者に限定しているような雰囲気が出てしまっているものの(実際に大半は業界関係者であるものの)、業界に関係なく入場可能とのことだった。またオープン時には入場待機列が大きくできるなど、ひとまず初日は盛況のようだった。