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Uberが目指すタクシーの変動運賃。メリットが大きい“Real”DPへ

Uber Japanは、タクシーのダイナミックプライシングに関するメディア説明会を実施。海外の事例や国内での実証実験のデータを参照しながら、ユーザーおよび事業者にとってどのようなメリットがあるかなどを紹介した。

タクシーのダイナミックプライシング(変動運賃制)とは、その場その時の需要と供給にかかるデータをもとに、リアルタイムで自動的に料金が変動する仕組み。需要が多ければ高く、需要が少なければ安くなる。日本国内でもこの仕組みを取り入れる検討が進められており、2021年度内の実証実験が計画されている。

Uberではダイナミックプライシングが導入されている国において、事業者に対しては需要が急騰して割増運賃となっているエリアを、ユーザーに対しては現在地が割増となっていることを通知できる機能をアプリに搭載。ドライバーは需要が高いエリアへ移動ができ、ユーザーは急ぎの移動でなければ需要が高いエリアの割増率(サージ)が落ち着くまで待つという選択もできることから、需給バランスの改善が図れるという。

Uber Japan モビリティ事業 ゼネラルマネージャー 山中志郎氏は、料金はリアルタイムな需給バランスに基づいて決まるため、同一エリアでも日によって大きく異なることを、シドニー・ボンディビーチの例で説明。グラフを見ると、曜日によって異なるほか、同じ曜日であっても変化が生じることが分かる。

山中志郎氏

さらに、ニューヨークでシステムがダウンしてしまった際の例で、ダイナミックプライシングが機能しないとユーザー利便性が低下することを説明。サージが上がっていることをユーザーに伝えられなかったことにより需要が増え、依頼数や到着所要時間が大幅に上昇し、結果成約率が20%ほどに落ち込んだ。

需要が多い時には割増となる一方、需要が少ない時には料金が下がるのもダイナミックプライシングの特徴。これにより、ユーザーにとっては利用しやすくなり、事業者にとっては乗車人数が増え実車率が上がる(空車率が下がる)と山中氏は話す。

運賃引き下げの効果については、広島や京都などで実施した実証実験結果を例に説明。広島では被験者と比較者を50:50で割り振り、被験者側には割引適用を通知したうえで20%運賃を引き下げた。結果、運賃を引き下げることで1人当たりの乗車回数と乗車距離が増え、1人当たりの利用額は15.7%増加したという。

また京都では、40%の引き下げも実験。単価が低くなるほどに利用総額が増加するものと説明した。

さらに、国内でのタクシー事業売上は50歳以上の人によるものが64%を占めるのに対し、アプリ配車は50歳未満の年代で75%に及ぶというデータを示し、アプリを使ったダイナミックプライシングでオフピークの新規需要開拓を期待できると述べた。

Uberが求める、実効性が高い“Real”DP

Uber Japan 政府渉外・公共政策部長 西村健吾氏は、効果最大化を見込めるダイナミックプライシングを導入すべきであると訴える。これは、割増および割引のレンジをより限定的なものとして実証実験に臨もうという国側の考え方に異を唱えるもので、西村氏は実効性を高める制度設計を「“Real”DP」、実効性が乏しい制度設計を「“Fake”DP」と位置づける。

西村健吾氏

具体的には、現行運賃の20%割増と10%割引のレンジで変動させるところから始めたいという話が出ていることを話した上で、西村氏はプラスマイナスの幅が大きいほど需給調整がよく働くという考えを示した。

また現在の検討では、2021年度内に実証実験に入り、2022年度に本格実証というスケジュールが挙がっていることを話し、西村氏は、より早い段階でのユーザーの慣れやレンジを拡大が必要であるとし、右肩下がりにあるタクシー産業を盛り上げていくためにも前倒しでやっていく必要があると強調した。