ニュース

Apple Siliconと大刷新のmacOS Big Sur、iOS/iPadOS 14。WWDC20

アップルは23日、開発者向けイベント「WWDC 2020」を開催し、MacのCPUを「Apple Silicon」に移行することや、新しいMac OS「macOS Big Sur」、iOS 14、iPad OS 14、watchOS 7、tvOSなどを発表した。

iPhoneやMacなどのハードウェアは発表されていないが、今秋以降のApple製品の基盤となるソフトウェアやサービスについて多くの情報が公開されている。

Apple Silicon

基調講演の最後に発表されたのが、MacにおいてIntel CPUから「Apple Silicon」に切り替えること。Apple Siliconを搭載した、最初のMacは2020年末に発売予定で、約2年の移行期間で切り替えを進めていく。その間は、Intel CPU搭載のMacも継続し、macOSの新バージョンでのサポートも続けていく。

この移行により、iPhone、iPadなど、Apple製品で共通のアーキテクチャが確立され、開発者がエコシステム全体でのアプリを最適化が行ないやすくするのが狙い。

既存のiPhone/iPad向けのアプリもそのまま動作するほか、新たに提供する「Rosetta 2」により、IntelベースMac向けのアプリも動作する。デモでは、3D CGソフト「maya」などが動作することを紹介した。また、Microsoft OfficeやAdobeのPhotoshop/Lightroomなどは、すでにApple Silicon向けの開発がスタートしており、ネイティブで動作しているという。

アップル、MacのCPUを「Apple Silicon」に。年内に最初の製品、2年で切替

新Mac CPUは独自の「Apple Silicon」に

IntelからArmへのシームレスな移行を実現する「macOS Big Sur」

macOS Big Surは、10年で最大のデザインアップデート

新mac OSの名称は「新macOS Big Sur(ビッグサー)」。「過去10年以上で最大のデザイン上のアップデート」としており、開発者向けには23日から、パブリックベータは7月から提供し、正式版は今秋提供予定。

macOS Big Surは、広がりのある新デザインを採用し、アイコンなどもiPad/iPhoneに近づけている。ボタンやコントロールは必要な時に表示され、必要のない時には非表示になる。メニューバーには新しいコントロールセンターが搭載され、デスクトップから各コントロールにすばやくアクセスできる。

通知センターは、よりインタラクティブに通知が表示され、デザイン刷新されたウィジェットによって、重要な情報を一目でわかるように提供する。

WebブラウザのSafariも高速化。「よく訪れるウェブサイトの読み込みがChromeよりも平均50%高速」としている。タブも刷新し、開いているタブをわかりやすくする。新しいスタートページでは、背景画像を追加したり、リーディングリストやiCloudタブなどのセクションを追加するなどのカスタマイズが可能。また、翻訳機能を組み込み、ワンクリックするだけで、7種類の言語を検知してウェブページ全体を翻訳できる。拡張機能のサポートも改善している。

Macのメッセージアプリは、重要な会話を簡単に管理し、表現豊かなメッセージを共有できるツールを搭載。お気に入りの会話をメッセージリストの上部にピンで固定して、すばやくアクセスできるようになるほか、検索機能も刷新した。また、メッセージエフェクトを使って、風船や紙ふぶきなどでメッセージを彩れる。

新しいグループメッセージ機能により、家族や友人、同僚とのやり取りの整理も可能。

マップも、macOS Big Sur向けに刷新。お気に入りのレストラン、公園、観光スポットなどのカスタムガイドを作成し、友人や家族と共有できる。Look Around機能では、行き先の景色を360度見渡したり、主要な空港やショッピングセンターの詳しい屋内マップをブラウズできる。自転車やEVで移動する際は、Mac上で経路を確認し、その経路をiPhoneに直接送信して、移動しながら見られる。

新macOS Big Sur発表。Mac OS X以降で最大のデザイン変更

iOS 14は新しいウィジェットなど

iOS 14は、デザイン刷新したウィジェットや、Appライブラリによりホーム画面に大きなアップデートを行なったほか、App Storeを利用する新しい方法「App Clip」、メッセージアプリケーションの強化などが行なわれた。iOS 14のパブリックベータ版は来月公開。正式な提供は今秋で、iPhone 6s以降で利用できる。

新しいウィジェットは、時宜にかなった情報を一目でわかるように表示し、ホーム画面のどのページにも、ピンを使って固定できる。ユーザーは、ウィジェットのスマートスタックを作成し、時間、場所、アクティビティに適したウィジェットを表示できる。

ホーム画面には、仕事、旅行、スポーツ、エンターテインメントなど、用途に合わせてカスタマイズされたウィジェットを表示できるようになった。新たに追加されたAppライブラリは、すべてのアプリを1つのシンプルな画面に自動的にまとめ、その時々に役立つアプリを表示する。

FaceTimeと電話の着信やSiriとの連携もコンパクトなデザインになり、その時々に作業しているままの状態で対応できるようになった。また、ピクチャ·イン·ピクチャへの対応により、iPhoneユーザーは別のアプリを使いながらビデオを見たり、FaceTime通話を受けたりすることができる。

Apple Clipは、画面下部に表示される新たなアプリ操作画面。スクーターのレンタル、コーヒーの購入、パーキングメーターの支払いなどの作業を瞬時に完了できる。

マップも強化。また、11カ国語による音声やテキストによる会話の翻訳機能やSiriの強化なども行なわれている。

iOS 14今秋公開。iPhoneで動画を小画面表示、ウィジェット強化

アップル、今秋登場予定の「iOS 14」などを発表

またBMWと連携し、2021年型BMW 5シリーズで、iPhoneをデジタルキーとする仕組みを導入。iPhoneのNFCにより、自動車の鍵として利用可能にする。

2021年型BMW 5シリーズでiPhoneが自動車のデジタルキーに

BMW、NFC採用の「iPhone用BMWデジタルキー」に順次対応

iPad OS 14

iPadOS 14では、ウィジェットやアプリのデザインが進化。写真のアプリでは、写真を表示したまま、様々な機能が利用でき、サイドバーに表示したアルバムに、写真をドラッグ・アンド・ドロップして追加するといった操作も可能。

また、FaceTimeと電話の着信は小さなバナーとして表示されるようになり、画面全体を占めずに、すばやくタップして応答したり、フリックで拒否して仕事を続けるといった操作が可能になる。検索機能も再設計されている。

Apple Musicの音楽再生画面もデザインを刷新。ファイル、メモ、カレンダーなども、サイドバーを再設計し、操作が簡単になる。

Apple Pencilで書き込んだメモも進化。Apple Pencilのスクリブルで、iPadのどのテキストフィールドにも手書き入力ができるようになる(英語、繁体字中国語、簡体字中国語、中国語と英語の混合に対応)。また、手書き文字はテキストに自動変換され、iMessageへの返信やSafariでの検索などが素早く行なえる。

Apple Watchで睡眠サポート「watchOS 7」

Apple Watchの「watchOS 7」は、新たに睡眠トラッキングや自動手洗い検出、ダンスを含むワークアウトの種類、新しい聴覚健康のための機能を追加する。23日から開発者向けにベータ版を提供し、正式版は今秋リリース予定。Apple Watch Series 3/4/5に対して、無料のソフトウェアアップデートが提供される。

最適な睡眠のためのサポートが受けられるほか、センサーを活用して20秒間の手洗いをサポートするなどの新機能を搭載。「ヘッドフォンの音が大きすぎないか」を認識できる機能なども提供する。

Appl Watchが睡眠や手洗い、ヘッドフォン音大きすぎをサポート

AirPods Proに空間オーディオ

iOSと連動し、AirPods/AirPods Proの機能も進化。iPhone/iPad/Macと、デバイスを変えてもシームレスに接続できる機能を追加するほか、AirPods Proでは「Spatial audio」と呼ぶ空間オーディオ再現技術を追加。サラウンドコンテンツを映画館のような臨場感で楽しめるようになる。

AirPods Proではサラウンド再生に対応。5.1ch、7.1ch、Dolby Atmosコンテンツの再生時に使用できるもので、音が前からだけでなく、左や右、後ろ、上からも聴こえるように再生が可能。映画館での体験を再現するという。

AirPods Proで“空間オーディオ”。頭を動かしてもサラウンド空間

tvOS 14

Apple TV向けの「tvOS 14」の新機能も発表。ピクチャ・イン・ピクチャ(小画面)で動画が表示できるようになるほか、マルチユーザー機能が強化される。

ピクチャ・イン・ピクチャでは、例えばフィットネスアプリを起動しながら、その画面上に小画面でニュース番組を表示。ニュースを見ながら、フィットネスアプリの指示に沿って運動するといった使い方が可能になる。

また、ゲームコントローラーの「Xbox Elite 2」や「Xbox Adaptive Controller」をApple TVで使用可能になる。

映像配信サービス「Apple TV+」は、夏以降に、ソニーとVIZIOのテレビに対応。また、オリジナルの新作映像作品として、SF作家のアイザック・アシモフが70年前に発表したファウンデーションシリーズを原作とした、「Foundation」を制作。2021年に配信する。

Apple TVで小画面表示、tvOS 14。アシモフの名作がApple TV+に